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終章 別れと始まり
別れと始まり 3
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……………………
………………
…………
目覚めは頭痛を伴った。
「……なぜ、私は寝ているんだ」
痛む額を押さえながら、朦朧とする頭でアレクサンドラは上半身を起こした。手触りのいい上質なベッドだ。顔をあげると、それほど広くはない個室にいることがわかる。
部屋が揺れていた。
「ここは海上か」
アレクサンドラはハッとする。
なぜ海の上にいるのか。
「起きたか、アレックス」
「エド」
振り返るとエドワードがベッドサイドの椅子に座っていた。
アレクサンドラは意識を失う前のことを思い出した。
「旅客船の中なのか」
「そうだ。ジャスタークの港を出て、数時間は経っている」
アレクサンドラは顔をゆがめてベッドを拳で叩いた。
「なぜこんなことを。卑怯だ」
「卑怯は承知の上だ。おまえをあんな荒くれの中に残しておけない」
「私はあそこで生きていくと決めたんだ」
エドワードは長い足を組み替えた。諭すような目をアレクサンドラに向ける。
「言っただろ、おまえは流行り病におかされていたようなものだ。祖国の空気を吸えば治る。そして俺に感謝するようになるだろう」
アレクサンドラは首を振る。
「違う。私は祖国を愛している。だけど私にとってあの国は窮屈な鳥かごのようなものなんだ。私は自由に生きたい」
「なぜ今までがそうだったからといって、窮屈だと決めつけるんだ」
エドワードが歩み寄り、ベッドサイドに腰かけてアレクサンドラの肩に手を置いた。
「俺にはおまえを連れ戻した責任がある。おまえが希望する部隊に配属できるよう口添えをするし、傍でサポートしてやる。海軍として航海に出ることもできる。それがおまえの望みだったはずだ。たとえロバートたちの隠れ家の場所を伝えなくても、俺たちが見てきた海賊団の戦術や技術を知るだけでも軍にとっては有益だ。俺たちの要望をむげにはできない」
アレクサンドラは再び首を振る。
確かに条件だけみれば、過去のアレクサンドラであれば飛びついたかもしれない。
しかし、今の夢は大きく変わった。
帝国海軍はアレクサンドラの思う正義ではなかった。理不尽な縦社会がなくても、団結できる仲間も知ってしまった。
――ロバートという太陽に出会ってしまった。
「帝国に戻ろうと、私はまたジャスタークに、あの海賊島に戻る」
「だめだ、それだけはさせない」
アレクサンドラの肩にのっていたエドワードの手に力がこもる。
「もう二度と帝国からは出さない。海軍卿に出国禁止の措置をとってもらう。俺を恨んでもいい、それがおまえのためなんだ」
「エド……」
これ以上は堂々巡りだろう。エドワードのエゴもあるだろうが、彼は本当にアレクサンドラのためになると信じているのだ。
アレクサンドラは顔を伏せた。涙がこみ上げそうになる。
あの場所に、ロバートの傍に戻りたい。
もう会えないのだろうか。
絶望しそうになる思考を、アレクサンドラは頭を振って払った。
いや、まだ諦めるの早い。
――欲しいものはしがみついてでも掴み取れ。無理だと決めるのは他人じゃない、自分だ。
アレクサンドラはロバートの言葉を繰り返した。
無理ではない。まだできることがあるはずだ。
帝国に戻る前に、この旅客船から抜け出すことができれば……。
アレクサンドラが頭を回転させ始めた時、不自然な波の揺れを感じた。
その揺れはさらに大きくなり、部屋の外が騒がしくなる。
………………
…………
目覚めは頭痛を伴った。
「……なぜ、私は寝ているんだ」
痛む額を押さえながら、朦朧とする頭でアレクサンドラは上半身を起こした。手触りのいい上質なベッドだ。顔をあげると、それほど広くはない個室にいることがわかる。
部屋が揺れていた。
「ここは海上か」
アレクサンドラはハッとする。
なぜ海の上にいるのか。
「起きたか、アレックス」
「エド」
振り返るとエドワードがベッドサイドの椅子に座っていた。
アレクサンドラは意識を失う前のことを思い出した。
「旅客船の中なのか」
「そうだ。ジャスタークの港を出て、数時間は経っている」
アレクサンドラは顔をゆがめてベッドを拳で叩いた。
「なぜこんなことを。卑怯だ」
「卑怯は承知の上だ。おまえをあんな荒くれの中に残しておけない」
「私はあそこで生きていくと決めたんだ」
エドワードは長い足を組み替えた。諭すような目をアレクサンドラに向ける。
「言っただろ、おまえは流行り病におかされていたようなものだ。祖国の空気を吸えば治る。そして俺に感謝するようになるだろう」
アレクサンドラは首を振る。
「違う。私は祖国を愛している。だけど私にとってあの国は窮屈な鳥かごのようなものなんだ。私は自由に生きたい」
「なぜ今までがそうだったからといって、窮屈だと決めつけるんだ」
エドワードが歩み寄り、ベッドサイドに腰かけてアレクサンドラの肩に手を置いた。
「俺にはおまえを連れ戻した責任がある。おまえが希望する部隊に配属できるよう口添えをするし、傍でサポートしてやる。海軍として航海に出ることもできる。それがおまえの望みだったはずだ。たとえロバートたちの隠れ家の場所を伝えなくても、俺たちが見てきた海賊団の戦術や技術を知るだけでも軍にとっては有益だ。俺たちの要望をむげにはできない」
アレクサンドラは再び首を振る。
確かに条件だけみれば、過去のアレクサンドラであれば飛びついたかもしれない。
しかし、今の夢は大きく変わった。
帝国海軍はアレクサンドラの思う正義ではなかった。理不尽な縦社会がなくても、団結できる仲間も知ってしまった。
――ロバートという太陽に出会ってしまった。
「帝国に戻ろうと、私はまたジャスタークに、あの海賊島に戻る」
「だめだ、それだけはさせない」
アレクサンドラの肩にのっていたエドワードの手に力がこもる。
「もう二度と帝国からは出さない。海軍卿に出国禁止の措置をとってもらう。俺を恨んでもいい、それがおまえのためなんだ」
「エド……」
これ以上は堂々巡りだろう。エドワードのエゴもあるだろうが、彼は本当にアレクサンドラのためになると信じているのだ。
アレクサンドラは顔を伏せた。涙がこみ上げそうになる。
あの場所に、ロバートの傍に戻りたい。
もう会えないのだろうか。
絶望しそうになる思考を、アレクサンドラは頭を振って払った。
いや、まだ諦めるの早い。
――欲しいものはしがみついてでも掴み取れ。無理だと決めるのは他人じゃない、自分だ。
アレクサンドラはロバートの言葉を繰り返した。
無理ではない。まだできることがあるはずだ。
帝国に戻る前に、この旅客船から抜け出すことができれば……。
アレクサンドラが頭を回転させ始めた時、不自然な波の揺れを感じた。
その揺れはさらに大きくなり、部屋の外が騒がしくなる。
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