癒しのあやかしBAR~あなたのお悩み解決します~

じゅん

文字の大きさ
12 / 44
一章 猫又とおばあちゃん

一章 7

しおりを挟む
 それから二週間ほど経った夜。まだ毬瑠子とマルセルしかいないBAR SANGに小さな客がやってきた。
 人型のクロだ。
 耳としっぽをたらし、その目は真っ赤に腫れていた。
「おばあちゃん、死んじゃったにゃ」
「看取ったのですか?」
 クロはうなずいた。
「ずっと手を握ってたにゃ。ボクのこと、大好きだって言ってくれたにゃ。ボクも何度も大好きだって伝えたにゃ」
「喜んでいたでしょうね」
「笑顔だったにゃ。眠るように……」
 嗚咽で言葉は途切れ、クロはあふれる涙を手の甲で拭った。
「もっとおばあちゃんと一緒にいたかったにゃ。死んでほしくなかったにゃ。でもボク、あれからはそう言うのをやめたにゃ。おばあちゃんを困らせるだけにゃ」
「頑張りましたね」
 マルセルはカウンターから出て、クロの前でかがんで小さな頭に手をのせた。クロが泣き止むまでそのまま頭をなでている。
「おばあちゃんの匂いのするあの部屋にずっといようと思ったけど、おばあちゃんがここに行くようにって言ってたにゃ」
「そうですか」
 マルセルはクロを抱いて立ち上がった。
「クロ、ここでわたしと共に暮らしましょうか」
「ここでにゃ?」
「このバーの二階がわたしの住居です。ここにはあやかしが集まりますから、淋しくありませんよ」
 クロはすぐ近くにあるマルセルを見つめた。瞬きをすると、瞳に溜まっていた涙が頬に流れた。
「ボク、ここにいていいにゃ?」
「歓迎します」
 クロはマルセルに抱きついた。
「ありがとにゃ」
 マルセルはあやすようにクロを揺すって、小さな背中をなでた。
 店に猫又が加わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?

処理中です...