Oil & Water~サークル合宿の悲劇~

じゅん

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陽菜乃 合宿一日目 夜

陽菜乃 合宿一日目 夜 その1

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 予想外のことやトラブルもあった合宿一日目が終わろうとしている。
 みんな楽しそうにしているが、あのことは気にならないのだろうか。それとも陽菜乃のように、顏に出さないようにしているだけなのか。
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」
 今日、何度目かの呟きだ。
 とにかく疲れた。身体を休めたい。
 しかし、こんな気持ちで眠れるのだろうか。
 そんな心配をしながら、寝間着代わりに持ってきたTシャツとチノパンに着替えた陽菜乃がベッドにもぐりこんで目を閉じた時、女性の悲鳴が聞こえた。
 陽菜乃は目を開いて耳を澄ませた。しかし、もう何も聞こえない。
 ふざけてあげる声ではなかった。
 恐怖にかられたような、切迫した女性の叫びだ。
 陽菜乃は布団を跳ねあげて部屋を飛び出した。
 一階の廊下に異変はない。
 声はどこから聞こえたのか分からなかったが、二階の様子を見に行くことにする。無駄に広い階段は、二階までの距離でも息が切れた。
 二階の廊下までたどり着くと、陽菜乃と同じように何人かが廊下に出ていた。
 やっぱり、声は気のせいではなかったようだ。
「今、悲鳴が聞こえたよね」
 陽菜乃はドアから恐々と半身を出している奈月に声をかけた。奈月の表情は強張っている。
「たぶん、隣り……」
 奈月は左隣りの部屋をさした。屋敷の二階西端の部屋だ。
「キャロルの部屋?」
 陽菜乃の問いに、奈月がうなずく。
「キャロル、なにかあった?」
 陽菜乃はドアを叩きながら呼びかけた。そのとき、ドアに隙間があることに気がついた。部屋には電気がついている。
 陽菜乃はもう一度ノックをした。部屋の中からはなにも反応がない。
 ただ眠っているだけならよいのだが、電気をつけたまま、しかも不用心にドアを開けて寝るだろうか。
「キャロル、入るよ」
 声をかけて、そのままそっとドアを開ける。
「……っ!」
 陽菜乃は口をおさえた。
 部屋の中央で、キャロルがうつぶせで倒れていた。
 キャロルを中心に血だまりができていて、薄紫のワンピース型のナイトウェアは血を吸いこんで身体に張り付いている。
 紅茶色の巻き髪が床に広がり、顔は見えない。しかし、そのスタイルや日焼けでは真似のできない艶のある小麦色の肌は、キャロルに間違いないだろう。
 血液特有の鉄のような匂いと生臭さとが鼻をついて、陽菜乃は気分が悪くなる。
「きゃあっ」
 陽菜乃の後ろから部屋を覗きこんだ奈月が、悲鳴を上げて後退った。
「キャロルが血を流して倒れてる! なにがあったの? どうしよう!」
 奈月がすぐ傍にいたクリスにしがみつくのが、陽菜乃の視界の端に映った。
 陽菜乃はドアの入り口から先に入れず、立ち尽くしていた。
 奈月の声に我に返った陽菜乃が振り向くと、廊下にはサークルメンバーが全員集まっていた。
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