幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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文久3年

勤務先、ゲットだぜ!(弐)

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(………ってそんなわけいくかーーー!!!!)

 だから、お前はなに冷静に原因なんて分析してるんだよ!

『お主、朝から騒々しいぞ。まだ日の出を迎えたばかりだというのに』
(うるさい!ぐっすり寝てた人は黙る!あ、人じゃない、狐だ!違う、狐じゃない、猫だ!)
『いちいち言い直さんでいいわい!』

 やっぱ性格がちょっとひねくれてるかもしれない。

(だって………私の癒しが全て取り上げられちゃったのよ?寝ることもできないし、食事しても味がしないし、多分お風呂に入っても暖かさなんて感じないだろうし……)

 日本人の楽しみを、今は味わうことができないなんて………。

 泣いていい?

『そうか……お主には辛いのう』
(早くお金稼いで、京の都に行かないと。真人間に戻りたいよ………)

 殺されるために京の都に行くってのも相当変な話だけど。

『む?おい、雫。あの康順とかいう医者が呼びにきておるぞ。朝食ができたんだとさ』
(あ、本当?ほむろ、ふすま開けてきて)
『うむ』

 この時代のお医者さんって朝は早いのかな?

 ふすまが開かれたのを、風読みの術で察知した。

 康順先生の位置を探し当て、その方角に向かって頷く。目が見えないからちゃんと面と向かって頷けたのかはわからない。

『康順が出て行ったぞ』
(そうなの?じゃあ今のうちに着替えよう)

 補佐の術を発動して、着替えを手伝うように念じる。

 この妖術、楽なんですよね。私はその場に立って両腕を肩の高さまであげているだけでいいんだもん。

 あとは魔力が全自動アームみたいに、腕を服の袖に通してくれたり、帯を結んでくれたり。とにかく超絶に便利なんです。

(よし!終わったみたい)
『ふむむ。雫は相も変わらず美しいのう』
(はいはい、ほら吹かないの。そんなわけないでしょ)
『本当なんじゃがのう。実際昨日にも街の人間はお主に見惚れておったぞ』
(またまた。そんなこと言っても騙されないよ)

 2017年でめちゃくちゃ普通だった女子大生捕まえて、綺麗とかなにデタラメを言ってるんだか。

 風読みの術を発動したまま、私は障子の場所を探り当て、妖術で開ける。

 部屋の外に出て、空気の流れが下り坂になっている場所(一階への階段)を探し出し、転がり落ちないようにものすごーく慎重に降りる。

 だって足の裏の感覚がない状態で降りる段差は怖いんだもん。

 昨日通された部屋への道を模索する。この診療所はそこそこ広いが、私は九尾の能力で天才頭脳があるので、昨日通った道は覚えている。

 いやぁ、便利ですね。完全記憶能力もどきは。

 そうこうしている間に目的地に到着。この部屋は階段からそんなに遠くない。

『康順が"おはよう"と言っておるぞ』

 ほむろに言われたので、私は風読みの術で康順先生も位置を特定して、そっちに一礼する。

(めっちゃ変な感じ。行動してもなんの返事も受け取れないとか)
『お主の五感は失われておるからのう。こればかりは妾にもどうにもできん』
(せめて視覚だけでも戻って欲しいよ)
『数ヶ月の辛抱じゃ。視覚か聴覚が戻るまでは妾が責任を持って支えてやる』
(はい、頼りにしてます)
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