幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

壬生狼が見たいのに見れない(壱)

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 1週間ほど歩いたのではないかと思う。日の出の数を数えられるわけじゃないから曖昧な数しか言えないが。

(ほむろー!京の都が見えたって本当?)
『うむ。あれは京の都に間違いないのじゃ。この1週間、よく頑張ったのう』
(わーい!やったー!やっと着いたよー!)

 宿場町が近くにあった夜は宿に泊まったりしたが、1週間のうち半分は昼夜問わず歩き続けた記憶があるので、ようやく目的地に到着すると聞いて、私はひゃっほー!となった。

 いや、心の中でだけど。

 え?草履の鼻緒は大丈夫だったかって?切れるたびに妖術で補強の術で直していたよ。もうね、妖術万能説。

 ん?休みもせず眠りもせず飲食もせずによく平気でいるな。生きた屍みたいになってないか、だって?

 心配ご無用。ピンピンしてますよ。あ、別に七不思議じゃないからね。

 私が九尾の狐から吸い取った9つの能力の中に、"永遠に疲れない上に眠る必要もない"っていうのと、"永遠に喉が乾かない永遠にお腹が空かない"っていうのがある。

 この二つのおかげで、私はこんなにも常人離れした旅のスタイルを貫き通すことができるのです。

 あ、良い子は真似しないでくださいね。普通の人も真似しないでください。

(京の都に入ったら、康順先生が紹介してくれたお医者さんを訪ねないと)
『そうじゃな。その医者はなんて名前だったか?』
(確か………松本 良順まつもと りょうじゅんじゃなかったかしら?)
『おお!そうそう、その者じゃ!幕府に仕える医者ではなかったかのう?』
(間違ってないよ)

 松本良順って、史実にもいた人物だよね。幕府に仕える医者で、近藤 勇こんどう いさみとも親交があって、新選組の診察もしていた人じゃなかったかな?

 戊辰戦争の時は奥羽列藩同盟で医者やって、仙台で降伏して……あとどうしたっけ?

(新選組に会いたい。ダメでも遠目で一目見たい)
『なんじゃ?どうした急に。お主、目ぇ見えてないじゃろ』
(いや、松本先生つながりで思い出したの。私、結構新選組好きなんだよね)
『………人斬り集団のことを好きと言うお主も相当物好きじゃのう。浅葱色の羽織を着た男たちなら、一度患者として藤山診療所に来ておったぞ』
(えっ!?そんな患者いた?聞いてないけど)
『言っておらぬからな。ほれ、一度だけ患者のために診察室まで傷薬を届けた時があったじゃろ?あの時の2人組の男じゃ』
(あ、あの時の!どんな人だったの?)
『ふーむ………妾もよく覚えておらぬのだが、確か眼鏡をかけた男と、長い黒髪を高く束ねた男じゃったな』
(うーん……誰だかわかるような気がしなくもない)

 新選組で眼鏡と黒髪ポニーテールのお方といったらあの人たちしか思いつかないな………。

 まあ、名前はまだわかんないし、勝手に<メガネさん>と<ポニーさん>って呼ばせてもらおう。

(まだ日の出前なんだっけ?)
『うむ。先を急ぐか?この速度でゆけば日の出直後に関所に到着できるぞ』
(行こう!朝一に行って、あとからくる旅人さんに迷惑をかけないようにさっさと関所を抜けよう!)
『上に同じじゃ!』

 私の関所での手続きは一刻(30分)ほどはかかるから、別の方々のご迷惑にならないよう、朝一の人っ子一人いないうちに行って、一般の方々がくる前に去るのが一番だ。

 この二週間で培われた旅の知識である。また役に立つのかどうかは不明だが。
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