幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

看病って、こんな大変だっけ?(壱)

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 元治元年5月中旬。

 京の都も、いよいよ夏に突入した。

 はい、あの盆地特有の暑っ苦しい季節です。修学旅行の時に金閣寺で熱中症になって倒れたのを未だに覚えているよ。

 こんな男所帯だからある意味当然だが、屯所の中でも徐々に裸族が増えているようだ。私は部屋からあまり出ないからほむろからの情報だけど。

 裸族といっても、多分みんな幹部の目を盗んでやってると思う。だって堂々とやってたら局中法度きょくちゅうはっとに引っかかるでしょ。局中法度、引っかかったら即切腹だもんね。

 まあ、皮膚の感覚(触覚)が失われている私としては、暑さは全然肌に感じないんだが。こういうときには便利な力だよね、これ。心頭滅却するまでもなく日もまた涼し、だよ。

 もちろん汗は思いっきりかいているけど。暑さを肌では感じないけど、体そのものでは感じているはずだから。

 しかしたとえ屯所内で裸族が増えていても、外がうだるように暑くても、私の日常はなんの変化もない。

『あーーーー、暑いのじゃーーーーー』

 畳の上で腹を上にして張り付きながら、ほむろがだらしない声(心の声)を出す。

(はいはい、わかったからそれ以上文句言うなって。そこの薬草取って)
『目は見えておるのだから自分で取れよ。妾は今、動きたくないのじゃ』
(体を動かした方が涼しくなれるよ。自ら風邪を起こすんだ)
『おい、お主。字が違うぞ』
(おっといけない)

 文句を言いつつも、ほむろはよいしょと器用に起き上がり、薬草をとってくれた。ほむろも大概猫生活に慣れてきたような気がする。

『焼き魚が食べたいのじゃ』

 こんな具合に、食事の必要がないのに魚にハマっている。猫の本能に目覚めつつあるのかもしれない。

(注:ほむろはもともと狐です)

 なんだかんだグダグダしつつも薬作りは進行されている。

 この2ヶ月、部屋に引きこもって薬ばっかり作っていたせいで薬の備蓄が割と大変なことになっている。

 康順先生の診療所で働いていた時と比べて、さすがに作っている量はだいぶ少ないけど、診療所にいた時と違ってそれを使う人もいないので貯まりまくりなのだ。

 もちろん溢れかえっているほどの量でもないが。

 それと薬の原材料ですが、手元の在庫がきれそうになると、どこからともなく補充されるという、なかなか不思議な現象が起きている。

 私は何もしていないからほむろの仕業だとわかっているので聞いてみたところ。

『この京の一帯をほっつき歩いている七尾に頼んであるのだ。どうせ暇なら定期的に薬草を集めて届けて欲しい、とな』

 というお返事をいただいた。

(いつか七尾に会えるかな?)
『会える。七尾は定期的にお主のところに薬草を届けにくる。そのうち顔を合わせるじゃろう』

 ちょうどほむろが言い終わったその時、目の前のふすまが開き、山南さんが部屋に入ってきた。相変わらず山南さんは丸メガネが似合っている。

 いつもの、どこか黒みを帯びた笑みではなく、珍しく今日は真剣な表情を浮かべていた。何かあったのかな?

『山南が、一緒に来てほしいそうじゃ。どうしても頼みたいことがあるらしい』

 おや?いつも面倒事を問答無用で持ってくる山南が、私に改まった頼みごと?




 明日は雪でも降るのかな?
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