幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

看病って、こんな大変だっけ?(弐)

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 山南さんが部屋にやってきて、何か頼みたいことがあるとほむろ経由で知った。

 現在私は、山南さんの後ろをついて屯所の廊下を歩いている。どこにいくかは伝えられていないけど、山南さんの後ろをくっついていれば問題ないだろう。

 そもそも帰り道はどうせ覚えちゃうだろうし。天才頭脳を能力でもらってるから。

(ねえ、ほむろ。山南さんの頼みって、なんだと思う?)
『なんじゃろうな?お主に頼んでくるということは、薬関連のことではないかと思うのじゃが………』
(それは間違いないと思うけど、薬関連のことなら別に部屋から出る必要はないよね?)
『そこが不思議なんじゃよな。この様子だと山南の部屋に行くわけでもないようだし』

 ほむろと一緒に首をかしげながら、私は小走りで山南さんの後を追う。

 山南さんは廊下をぐんぐん進んで行き、やがて一枚のふすまの前に立ち止まった。

 ふすまを開けて山南さんが入って行くのを見て、私もなんだかよくわからないけど入ってみることにした。

 しかし部屋に入るとキョトンと立ち止まってしまった。




 部屋の真ん中に、布団に入っている沖田さんがいた。




(え?何これ?)
『何これって、沖田じゃろう』
(いや、そうだけど。なんで沖田さんが布団に入っているの?)

 労咳の発病はまだ先のはずなんだけど。

『夏風邪らしい』

 不思議に思っていると、ほむろからそんなものすごくあっさりした答えが返ってきた。

(あ、普通の夏風邪なの?バカは風邪をひかないんじゃないっけ?)
『それ、安易に沖田がバカだと言っている?』
(え。新選組一の問題児だって聞いたけど)

 土方さんが教えてくれたから間違いないと思う。

 この2ヶ月間、土方さんが鬼の形相で沖田さんを追いかけ回しているのを、両手じゃ数えきれないぐらい見た。

 土方さんも副長の仕事とかあって暇じゃないはずなのに、沖田さん、一体何をやったのやら。

(しかし、どうしろと?)
『そんなことを聞く前に、山南が紙を差し出しているから受け取ってやれ』

 おっと、横で山南さんが紙を渡してきていることに気づかなかった。

 慌てて受け取って目を落とすと、そこには綺麗な字で文章が書いてあった。幸い言語理解の能力が残っているので、筆記体でも解読できた。

 "見ての通り、沖田君が夏風邪になってしまいました。いつもは山??君が看病していますが、本日は任務でいません。ですから代わりに沖田さんを看病してもらえますか"

(…………)
『看病のお願いか。まあ、そうだろうとは思っておったけど』
(……山南さんがやるんじゃあダメなの?)
『山南は新選組の総長なのだぞ。それなりに忙しいのだろう』
(………マジ?)
『マジじゃ。いいからさっさと返事せい』

 この状況では断る、なんて選択肢は存在しないし、私は山南さんに一礼して承諾の意を伝えた。山南さんがにっこりと笑う。

 その笑顔から黒い何かがにじみ出ていることに関しては無視することにした。断らせないようにここへ連れてきた、とか山南さんはきっと考えてないから。




 それにしても、沖田さんの看病って何をすればいいんだ?そもそもなんの薬を飲んでいるの?
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