幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

看病って、こんな大変だっけ?(参)

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 というわけで、山南さんに頼まれて(強制疑惑あり)夏風邪中の沖田さんの看病をすることになった御影 雫みかげ しずくです。

(マジかー)
『マジじゃ。つべこべ言わずに働けい』
(働いてるじゃんか、こうして井戸から水汲んできたし)

 私、文句タラタラですね。

 沖田さんはどうやら朝に薬を飲んだから薬の心配はしなくていいらしい。だから私は身の回りの世話と食事だけ心配してりゃあいい。




 と言うのは簡単なんだけど。

(こんなところでも五感のない不便さを痛感するっていうね)

 ええ、痛感しております。主に皮膚の感覚がない不便さを。

 手ぬぐいの絞り具合がわからなくておかしなことになったり、水こぼしてもわからなかったり、距離感つかむのに失敗して桶の水をぶちまけそうになったり。

 看病って、こんな大変な行為だっけなぁ?

(十年分の寿命を使った気分なんだけど)
『五感を取り戻すまで我慢しろ、としか言えぬな』

 幹部の人たちはこのことを知らないから、耳聞こえなくても看病ぐらいできるだろう、と思ったのでしょう。

 まあ、他はどうあれ触覚がないことをバラすつもりはないから頑張るけど。

『雫、日がもう高いぞ。そろそろ昼飯を作ってやったらどうじゃ?』
(ええ………私が作るのぉ?味見とかどうしよう)
『妾がする。だから頑張れ』

 他人事だと思って……。まあ、実際他人事でしょうけど。

 勝手場に行くと、大衆の食事は作り終えていたようで、作業している人はいない。さっきほむろが大広間の方がやかましいと言っていたから、今は食事中なのかもしれない。

 とりあえず病人にはおかゆだろう。量は一人分で大丈夫だよね。幸い一人暮らしをしてたおかげで料理はお手の物だ。

 まあ、味付けの塩加減はほむろに丸投げするしかないだろうけど。だって私、味覚ないし。

 え?私の分?私は"永遠に喉が乾かないお腹が空かない"って能力がまだあるから必要ないのですよ。断食ダイエットにはいいよね、この能力。

(そういえば、どこぞの乙女ゲーでは沖田さん嫌いだったけど入れるべきかな?)
『ネギは風邪に効果があるぞ?』
(いや、知ってるって)

 これが近藤さんの入れたネギなら、どこぞの乙女ゲーの沖田さんもおとなしく食べるけど、この世界の沖田さんはどうだろう?

 もしものことを考えるとなんか怖いので、とりあえずネギは抜いて作ることにした。

(しかしキッチンじゃないから不便だな)
『き………ちん?』
(ああ、平気平気。意訳してものすごくやりにくいってことだから)

 おまけに触覚がないから米をとぐにも野菜を切るにも鍋をかき混ぜるのにも怖い!

 特に野菜切ってる時!手を切りやしないかヒヤヒヤする。

『お主、再生能力があるのじゃから、傷口を合わせれば指が落ちてもくっつくぞ?』
(いや、落ちてもくっつくから平気とかそーいう問題じゃないの)
『それに、雫は痛覚がないのじゃから痛くないぞ?』
(だからそーいうことじゃないって)

 嫌ですよ?見たくないですよ?指を落としちゃうところも、その指が手にくっつくところも。

 なんで食事を作ってるのにこんな聞いたら食欲失せそうな話をしてるんだか。
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