幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

池田屋事件(伍)

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 飛び込んだ池田屋の中は、すごいことになっていた。

 あちこちで白刃がひらめき、刀が動くたびにどこかで血しぶきが上がる。壁や床、果てには天井にまで血が飛び散り、ここで激戦が繰り広げられたことを語っている。

 地面には斬り殺されたのか手傷を負わされたのかはわからないが、倒れたりうずくまったりしている志士が無数いた。

 突入した他の幹部は見つけられなかったが、一階奥で返り血にまみれた近藤さんの姿を見つけた。

 近藤さんは私の姿を見て大いに目を見開き、険しい顔で何か叫んでいる。来るなとか、出ていけとか言っているのだと思うが、私はほむろを探さないといけない。

 池田屋の中は暗かった。目を凝らして宿内を見回したところ、二階の廊下に一瞬だけほむろの尻尾が見えた。

 注意してくれた近藤さんに悪いと思いながらも、私は二階へ向かうために階段を駆け上っていく。

 途中、志士が一人斬りかかってこようとしたが、妖術で全身麻痺にしておいてやった。

 新選組隊士のほとんどは一階にいるようだから、二階で妖術を使ってもバレる心配はさほどない。

 二階は一階と比べて人影が少なかった。あちこちに血が飛び散っているの同じだが、怖いくらい人がいない。私は慎重に廊下を進む。

 ほむろは、二階の一番奥の部屋の前にいた。

 なんとなく声をかけられる雰囲気じゃなかったから、私は無言でほむろの後ろに立った。

 その部屋のふすまは、少しだけ開いていた。その小さな隙間から、銀色の月光が廊下に線を作っている。

 どうやらほむろは、この隙間を通じて部屋の中を見ているようだった。

 私はほむろの視線を辿り、部屋の中を覗いた。隙間が小さいせいで、部屋の全部の光景は見えない。




 そこには、私より少し年上ぐらいの浪士が一人いた。片手で、剣を構えている。




 青年浪士は傷一つなく、余裕めいた微笑を口元にたたえていた。この部屋で、何が行われているのだろう?

 というかこの状況、なんか薄○鬼で見たことがあるような気がするんだけど。

 ふいに浅葱色の羽織を着た人が、青年浪士に切りかかった。

 沖田さんだった。

 月明かりが逆光になっていて、沖田さんの姿はよく見えないが、戦況はあまり芳しくないと思われる。

 沖田さんは、新選組一の剣の使い手だ。稽古を覗いたこともあったが、平隊士たちは一撃で撃退され、永倉さんや斎藤さんのような例外がいるが、幹部たちも子供扱いされていた。

 その沖田さんの剣を片手で防ぎ、青年は平然と笑う。そして沖田さんの胸に蹴りを入れた。

 沖田さんは簡単に蹴り飛ばされてしまった。

 助けたいと思った。せめて自分の目の前では死んでほしくなかった。

 でも私が飛び込んだところでどうなる?沖田さんの邪魔にならないだろうか?

 もしあの青年が長州の一味だったら、私が術を使えば彼はそれを上に報告するかもしれない。私はさらに面倒な輩を敵に回すことになり、新選組にもさらに迷惑をかける。

 ふすまの向こうで、青年が剣の構えを変えた。刀を水平に構え、そのきっさきはまっすぐ沖田さんが吹っ飛んで行った方向に向けていた。

 あれは、突きの構えだ。




 青年が刀を突き出すのと、私が部屋に飛び込むはほぼ同時だった。
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