84 / 119
元治元年
池田屋事件(伍)
しおりを挟む
飛び込んだ池田屋の中は、すごいことになっていた。
あちこちで白刃がひらめき、刀が動くたびにどこかで血しぶきが上がる。壁や床、果てには天井にまで血が飛び散り、ここで激戦が繰り広げられたことを語っている。
地面には斬り殺されたのか手傷を負わされたのかはわからないが、倒れたりうずくまったりしている志士が無数いた。
突入した他の幹部は見つけられなかったが、一階奥で返り血にまみれた近藤さんの姿を見つけた。
近藤さんは私の姿を見て大いに目を見開き、険しい顔で何か叫んでいる。来るなとか、出ていけとか言っているのだと思うが、私はほむろを探さないといけない。
池田屋の中は暗かった。目を凝らして宿内を見回したところ、二階の廊下に一瞬だけほむろの尻尾が見えた。
注意してくれた近藤さんに悪いと思いながらも、私は二階へ向かうために階段を駆け上っていく。
途中、志士が一人斬りかかってこようとしたが、妖術で全身麻痺にしておいてやった。
新選組隊士のほとんどは一階にいるようだから、二階で妖術を使ってもバレる心配はさほどない。
二階は一階と比べて人影が少なかった。あちこちに血が飛び散っているの同じだが、怖いくらい人がいない。私は慎重に廊下を進む。
ほむろは、二階の一番奥の部屋の前にいた。
なんとなく声をかけられる雰囲気じゃなかったから、私は無言でほむろの後ろに立った。
その部屋のふすまは、少しだけ開いていた。その小さな隙間から、銀色の月光が廊下に線を作っている。
どうやらほむろは、この隙間を通じて部屋の中を見ているようだった。
私はほむろの視線を辿り、部屋の中を覗いた。隙間が小さいせいで、部屋の全部の光景は見えない。
そこには、私より少し年上ぐらいの浪士が一人いた。片手で、剣を構えている。
青年浪士は傷一つなく、余裕めいた微笑を口元にたたえていた。この部屋で、何が行われているのだろう?
というかこの状況、なんか薄○鬼で見たことがあるような気がするんだけど。
ふいに浅葱色の羽織を着た人が、青年浪士に切りかかった。
沖田さんだった。
月明かりが逆光になっていて、沖田さんの姿はよく見えないが、戦況はあまり芳しくないと思われる。
沖田さんは、新選組一の剣の使い手だ。稽古を覗いたこともあったが、平隊士たちは一撃で撃退され、永倉さんや斎藤さんのような例外がいるが、幹部たちも子供扱いされていた。
その沖田さんの剣を片手で防ぎ、青年は平然と笑う。そして沖田さんの胸に蹴りを入れた。
沖田さんは簡単に蹴り飛ばされてしまった。
助けたいと思った。せめて自分の目の前では死んでほしくなかった。
でも私が飛び込んだところでどうなる?沖田さんの邪魔にならないだろうか?
もしあの青年が長州の一味だったら、私が術を使えば彼はそれを上に報告するかもしれない。私はさらに面倒な輩を敵に回すことになり、新選組にもさらに迷惑をかける。
ふすまの向こうで、青年が剣の構えを変えた。刀を水平に構え、その鋒はまっすぐ沖田さんが吹っ飛んで行った方向に向けていた。
あれは、突きの構えだ。
青年が刀を突き出すのと、私が部屋に飛び込むはほぼ同時だった。
あちこちで白刃がひらめき、刀が動くたびにどこかで血しぶきが上がる。壁や床、果てには天井にまで血が飛び散り、ここで激戦が繰り広げられたことを語っている。
地面には斬り殺されたのか手傷を負わされたのかはわからないが、倒れたりうずくまったりしている志士が無数いた。
突入した他の幹部は見つけられなかったが、一階奥で返り血にまみれた近藤さんの姿を見つけた。
近藤さんは私の姿を見て大いに目を見開き、険しい顔で何か叫んでいる。来るなとか、出ていけとか言っているのだと思うが、私はほむろを探さないといけない。
池田屋の中は暗かった。目を凝らして宿内を見回したところ、二階の廊下に一瞬だけほむろの尻尾が見えた。
注意してくれた近藤さんに悪いと思いながらも、私は二階へ向かうために階段を駆け上っていく。
途中、志士が一人斬りかかってこようとしたが、妖術で全身麻痺にしておいてやった。
新選組隊士のほとんどは一階にいるようだから、二階で妖術を使ってもバレる心配はさほどない。
二階は一階と比べて人影が少なかった。あちこちに血が飛び散っているの同じだが、怖いくらい人がいない。私は慎重に廊下を進む。
ほむろは、二階の一番奥の部屋の前にいた。
なんとなく声をかけられる雰囲気じゃなかったから、私は無言でほむろの後ろに立った。
その部屋のふすまは、少しだけ開いていた。その小さな隙間から、銀色の月光が廊下に線を作っている。
どうやらほむろは、この隙間を通じて部屋の中を見ているようだった。
私はほむろの視線を辿り、部屋の中を覗いた。隙間が小さいせいで、部屋の全部の光景は見えない。
そこには、私より少し年上ぐらいの浪士が一人いた。片手で、剣を構えている。
青年浪士は傷一つなく、余裕めいた微笑を口元にたたえていた。この部屋で、何が行われているのだろう?
というかこの状況、なんか薄○鬼で見たことがあるような気がするんだけど。
ふいに浅葱色の羽織を着た人が、青年浪士に切りかかった。
沖田さんだった。
月明かりが逆光になっていて、沖田さんの姿はよく見えないが、戦況はあまり芳しくないと思われる。
沖田さんは、新選組一の剣の使い手だ。稽古を覗いたこともあったが、平隊士たちは一撃で撃退され、永倉さんや斎藤さんのような例外がいるが、幹部たちも子供扱いされていた。
その沖田さんの剣を片手で防ぎ、青年は平然と笑う。そして沖田さんの胸に蹴りを入れた。
沖田さんは簡単に蹴り飛ばされてしまった。
助けたいと思った。せめて自分の目の前では死んでほしくなかった。
でも私が飛び込んだところでどうなる?沖田さんの邪魔にならないだろうか?
もしあの青年が長州の一味だったら、私が術を使えば彼はそれを上に報告するかもしれない。私はさらに面倒な輩を敵に回すことになり、新選組にもさらに迷惑をかける。
ふすまの向こうで、青年が剣の構えを変えた。刀を水平に構え、その鋒はまっすぐ沖田さんが吹っ飛んで行った方向に向けていた。
あれは、突きの構えだ。
青年が刀を突き出すのと、私が部屋に飛び込むはほぼ同時だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します
月影 流詩亜
ファンタジー
全 60話 完結まで予約済みです。
事故で転生したのは、まさかの織田信長!?
しかも、隣にいたはずの可愛い幼馴染(双子)も、なぜか信長の側室「吉乃」と正室「濃姫」に!
史実の本能寺フラグを回避するため、うつけの仮面の下、三人は秘密の同盟を結ぶ。
現代知識と絆を武器に、戦国スローライフを目指すサバイバル開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる