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元治元年
池田屋事件(捌)
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池田屋で一回死んで、次に目を覚ました時、私は見慣れた自分の部屋にいた。もちろん壬生村の屯所の。
誰が運んでくれたのかはわからないが、ご丁寧に布団の中に寝かされていた。
外はすでに明るくなっている。戦闘はどうなったのだろうか。ちゃんとみんな、無事に帰ってきているのだろうか。
そしてまたまたほむろの姿が見えないが、いったいどこをほっつき歩いているのか。
外で蝉が鳴いている。そっか、今は夏だもんね。向こうにいた頃は近くに小さい林があったから、夏は蝉の鳴き声のうるささに悩まされてたっけ…………。
て………ん?蝉の鳴き声?
ガバッと布団をはねのけた。
耳が聞こえるだと!?
思わず大きくガッツポーズをとってしまった私は悪くないと思う。
『おい、雫。朝っぱらから何拳を天に突き上げておるのだ?』
そこへふすまを開けて、ほむろが入ってきた。ふすまの開け閉めまでできるようになるとは、器用になったね。
(ほむろ聞いて!耳が聞こえる耳が聞こえる!)
『ほう!また一つ、真人間に近づけたのう』
(うむ!)
沖田さんをかばったのはほとんど反射的だったけど、これぞ結果オーライ。一石二鳥って、こういうのを言うんだね。
あ、そうだ。昨日のことをいろいろ聞かないと。
(ほむろ、池田屋での戦闘はどうなったの?)
『それなら心配する必要はないぞ。幹部連中がちゃんと片付けた。沖田も、本調子ではないみたいだが、元気じゃった』
そう………。それならよかったわ。一安心だよ。
(じゃあ、怪我人は?亡くなった人、とかは………)
答えはわかっていたが、それでも、聞かずにはいられなかった。
『…………』
ほむろは答えてくれた。
あの日、池田屋で会合を行っていた尊王攘夷派の志士20数名のうち、新選組は9名を討ち取り、4名に手傷を負わせた。
史実通りではあったが、それでも新選組は、確かに大きな戦果をあげた。
しかしその新選組の被害も小さくはなかった。
戦乱の最中で、奥沢という隊士が戦死した。安藤と新田という隊士たちも、命に関わるような怪我を負った。
三人とも、池田屋事件にて命を落とした隊士であった。
他にも軽傷を負った隊士が何人もいる。平助君は額を斬られ、沖田さんは胸部に一撃を受けて倒れた。
新選組は闇討ちを警戒して早朝まで池田屋で待機し、日の出とともに壬生村の屯所へ帰還した。
街道は野次馬で溢れていたという。
さらに5日後の明保野亭事件にて池田屋の残党と交戦、最終的には23名を捕縛している。
この池田屋事件により、新選組の名は京の街に轟いた。誰もが京の平和は守られたと思っていた。
でも、この時代の人たちは誰一人知らない。
あの夜の出来事は、これからやってくる大きな時代のうねりの、ほんの始まりにすぎないということを。
誰が運んでくれたのかはわからないが、ご丁寧に布団の中に寝かされていた。
外はすでに明るくなっている。戦闘はどうなったのだろうか。ちゃんとみんな、無事に帰ってきているのだろうか。
そしてまたまたほむろの姿が見えないが、いったいどこをほっつき歩いているのか。
外で蝉が鳴いている。そっか、今は夏だもんね。向こうにいた頃は近くに小さい林があったから、夏は蝉の鳴き声のうるささに悩まされてたっけ…………。
て………ん?蝉の鳴き声?
ガバッと布団をはねのけた。
耳が聞こえるだと!?
思わず大きくガッツポーズをとってしまった私は悪くないと思う。
『おい、雫。朝っぱらから何拳を天に突き上げておるのだ?』
そこへふすまを開けて、ほむろが入ってきた。ふすまの開け閉めまでできるようになるとは、器用になったね。
(ほむろ聞いて!耳が聞こえる耳が聞こえる!)
『ほう!また一つ、真人間に近づけたのう』
(うむ!)
沖田さんをかばったのはほとんど反射的だったけど、これぞ結果オーライ。一石二鳥って、こういうのを言うんだね。
あ、そうだ。昨日のことをいろいろ聞かないと。
(ほむろ、池田屋での戦闘はどうなったの?)
『それなら心配する必要はないぞ。幹部連中がちゃんと片付けた。沖田も、本調子ではないみたいだが、元気じゃった』
そう………。それならよかったわ。一安心だよ。
(じゃあ、怪我人は?亡くなった人、とかは………)
答えはわかっていたが、それでも、聞かずにはいられなかった。
『…………』
ほむろは答えてくれた。
あの日、池田屋で会合を行っていた尊王攘夷派の志士20数名のうち、新選組は9名を討ち取り、4名に手傷を負わせた。
史実通りではあったが、それでも新選組は、確かに大きな戦果をあげた。
しかしその新選組の被害も小さくはなかった。
戦乱の最中で、奥沢という隊士が戦死した。安藤と新田という隊士たちも、命に関わるような怪我を負った。
三人とも、池田屋事件にて命を落とした隊士であった。
他にも軽傷を負った隊士が何人もいる。平助君は額を斬られ、沖田さんは胸部に一撃を受けて倒れた。
新選組は闇討ちを警戒して早朝まで池田屋で待機し、日の出とともに壬生村の屯所へ帰還した。
街道は野次馬で溢れていたという。
さらに5日後の明保野亭事件にて池田屋の残党と交戦、最終的には23名を捕縛している。
この池田屋事件により、新選組の名は京の街に轟いた。誰もが京の平和は守られたと思っていた。
でも、この時代の人たちは誰一人知らない。
あの夜の出来事は、これからやってくる大きな時代のうねりの、ほんの始まりにすぎないということを。
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