幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

文字の大きさ
104 / 119
元治2年/慶応元年

あんた、誰?(参)

しおりを挟む
(嘘………なんで、生きてるの……?)

 声の主を見るまでもなく、私には彼の正体がわかった。

 この狐だって、私は一瞬だけだったが見たことがあった。

 この狐は、あの晩池田屋から逃げ出した青年浪士を追いかけた時に、裏路地で見た。一瞬だけだったが、この妙に不気味な水色の瞳は見間違うはずない。

 そして、この声の主だって………。




「ようやく見つけた……。やっぱりお前だったのか」




 庭の暗がりから、彼が音もなく姿を表した。紺に近い黒の瞳が、怪しい光をはらみながらこちらに向けられていて、見ていると一人でに足がすくんでくる。

 なぜ、私は彼を見てこれほどまでに怯えているのだろうか?私が一度、彼の手によって殺されたから?それとも何か別の………?

『あやつら………やはりそうであったか』

 ほむろがポツリとつぶやく。ほむろは、彼らを知っているの………?

 池田屋にいた時も、ほむろは彼を見て何か思案していた。ほむろは、私の知らない何かを知っているような気がした。

『だから言っただろう?俺の目に狂いはないって』
「ああ、そうだな。やっぱりお前はすげえよ」

 狐がしゃべった。青年と仲良さそうに会話している。そういえばあの時も、狐は青年にねぎらいの言葉をかけていた。

 妖狐と思われる狐と話しながらも、青年の瞳は私を捉えて離さない。

 この目には、覚えがある。あいつらの目と、一緒だ。私を手に入れようと襲撃してきた、入山の追っ手たちと、同じ目だ。

「俺が生きていることがそんなに意外か?」
「………っ」
「別に怯える必要はないぜ。とって食ったりしないからな。俺たちはただ、お前の力を借りたいだけだ」

 入山の追っ手と、同じことを言っている。

「こっちへ来い。こんなところさっさと出て、俺たちと来た方がお前も幸せだぜ?」

 青年が一歩こちらに踏み込み、私は無意識に一歩後ずさった。

「お前の協力がなければ、俺は俺の望みを叶えられない。さあ………」

 青年がさらに手を延ばしてくる。私はさらに後ずさる。この手に捕まってはいけない。そう直感した。

 妖術を使いたいのはやまやまだが、ここは屯所の中だ。どこに人の目があるかわからない。

「俺に協力してくれれば、お前の望みも叶うんだぞ?何を迷う必要がある」

 私の、望み………?それはいったい………。

「元の世界に、帰りたくはないのか?」




 ドクン。




 今、なんて?




(それ、どういう………)
「言葉通りの意味だよ」
(あなた……!私の声が………)
「ああ、聞こえてるよ。さあ、どうする?言っておくけど、無理やり連れてくことも、やろうと思えばできるんだからな?」

 どーしよう………。

 今すぐ逃げたいけど、私は走るのが遅いんだよね。絶対に逃げきれない。どうしたら…………。

「お前、こんなところで何してるのさ」

 ふと、廊下の先から別の声が聞こえてきた。

 その声の低さに、私は青年と対峙したときとは別の恐怖を感じた。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

処理中です...