幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治2年/慶応元年

ようやく会えました(壱)

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その日の屯所は、朝から騒々しかった。

(ねえ、ほむろ。今日って何かあるっけ?)
『何かあったかのう?』

洗濯物片手に、ほむろと二人で首を傾げる。来客の予定はなかったはずだし、任務が下されたわけでもない。

なのになんでこんなに騒がしいんだ?

(その辺の奴らを捕まえて聞くしかないじゃろう)
『どうやって聞くのさ』

とりあえず洗濯物干しを始めたけど、やっぱり気になる。

(千里眼で覗いてみるか)

こういう時にこそ役に立つ千里眼と順風耳。これを使えば屯所内をくまなく探索できるだろう。

もちろん他の人にはバレないようにだが。

洗濯物の陰に移動して、千里眼を発動する。ここなら廊下から人がきても、洗濯物に隠れて私の顔は見えないでしょう。

千里眼で屯所内をサーチしたところ、全隊士のほとんどが大広間に集まっているのを見つけた。

大広間の様子を詳しく見ようとして、やめた。

だって、裸族がいっぱいいたから。

(何あれ)
『何を見たのじゃ?』
(裸族が氾濫)
『はい?もう少し詳しく』
(だから、大広間に裸族が多数出現してるんだって)

千里眼を解除して、順風耳を発動し、大広間の音を拾う。すると………。

「はい、次の人」
「よろしくお願いします!先生」
「ふーむ。君はお腹に気をつけた方がいいね。これを食後に飲むようにしなさい。では次」
「俺だな。いっちょ頼みますよ、先生」
「ふむ………よし、問題ない」
「ちょっと先生、もっとちゃんと見てくださいよ」
「いやいや、申し分ない健康体だ」

(…………)

なんか、わかった気がする。

(健康診断か)

これだ。

どっかからお医者様が来て、新選組を集団診察してるんだ。さっきの会話は多分そういうことだろう。

(ほむろ、健康診断っぽいよ)
『なるほど。それなら騒がしくてもおかしくないな』

ほむろがうんうん頷いている横で、私は一人思考する。

新選組を集団診察してくれるようなお医者さんが、そう何人もいるわけがない。となると幕府の命令を受けた医者か、新選組のお抱え医者のどちらかだ。

新選組にはお抱えの医者はいない。つまりこのお医者は幕府の命令で来た。幕府に仕える医者で、新選組を診察したことがあるのって………。

(松本 良順!!)
『む?』
(私も大広間に行ってみよう)
『お、おい!』

洗濯物干しはひとまず中断して、私は大広間に走る。違うお医者さんの可能性もあるが、確かめる必要はある。

大広間に到着した時、ちょうど大広間から見たことがない坊主頭の男性が出てきた。新選組にこんな隊士はいない。ということはつまり………。

「君は………!」

男性の方も私を見て驚いているようだが、すぐに優しそうな笑みを浮かべた。

「ここで話すのもなんだから、境内に降りようか」

そう言って、男性は階段を降りて境内に向かった。当然私も後を追いますとも。
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