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本編
1年生 秋 番外編
しおりを挟むこれはとある日のこと
チャイムが鳴った。黒板に書かれた文字を消し、黒板の日付を明日の日付にする。それから、黒板消しを掃除して黒板に戻した。
段々とみんなが下校し始める。
僕はそれを眺めながら、先生に頼まれた授業で使っていた資料を運んでいた。
「ごめんな、日直だからってそんなに運ばせちゃって」
「いえ…」
僕は真堂秀章。
よく名前をひであきと間違えられるけど、正しくはほだかと読む。愛川にも最初は間違えられた。
僕は基本的に愛川達以外には人見知りだ。ただ、唯一同じクラスの男子の2人とはまあまあ打ち解けているけど。
僕のいる4組は1番奥の教室で、そこから窓の前に広がっている田んぼがよく見える。駅へと続くその道の中に、もう既に下校している制服を着た生徒がぱらぱらと歩いていた。
僕は運動はあまり得意ではないから、運動神経が良い愛川が羨ましい。
まあ、本人は自覚ないみたいだけど。
運動も出来て、勉強も出来て、僕には出来ないことを沢山こなしている。
「はぁ…」
「どうしたんだ?ため息なんかついて」
「あ…えっと、いや…特に」
本当に羨ましい限りだ。
せめて運動神経ぐらいは欲しかったな…
「そうか?まあ、若いうちはいっぱい悩む事が大事だよ、はは」
「…えっと」
「…じゃあ、あとで学級日記よろしくな」
教室に戻る途中で、何気なく2組の教室を見た。
窓際の席に座る彼女は、本を開いたまま窓の方を見て外を眺めているようだった。
「待っててくれてる…のかな」
てっきり先に図書室に行っているのかと思ったけど、まだ教室にいたんだ。
僕は僅かな期待を感じながらも、いや違うだろと頭の中で否定した。
教室に戻って、1人机に向かって学級日誌の続きを書き始める。
前の時間に書いておけば良かったな…
淡々と日誌を書き終え、教室の窓をひと通り閉めた後、片手に日誌を持ちカバンを肩にかけ、そして、もう流石にいないだろうと思いながらも愛川の教室へと向かった。
「あれ…」
教室の中では、本を開いたまま1人教室で机に伏せている愛川の姿があった。
「あれ、愛川…寝てる?」
寝てるのか。
僕は前の席の椅子に座って、何となく眠る彼女を眺めた。
開かれた本の表紙には、こないだ僕が勧めた小説のタイトルが書かれている。
「読んでくれてるのか」
嬉しいな。
「もう半分も読んでる…」
後半からが、面白いんだよね。
早く感想聞きたいな。
「愛川…?」
これじゃあまるで僕が独り言を言っているみたいだ。
と言うか、独り言になっているよね。
早く起きてくれないと困るな…
特に意識した訳でもなく、僕の手は自然と愛川の頭へと伸びていた。
もう少しで触れそうになったけど、僕は思い直して手を戻した。
「起きて…」
その手をもう一度伸ばして肩を軽く揺らした。
「…起きて」
「ん…?あ…ああ、おはよう」
「おはよう…ってもう放課後だよ」
「あ、図書委員会の仕事…」
「そうだね、僕は日直だったから理由があるけど……僕のこと待ってたの?」
「えっ…うん、そうだよ」
「ごめんね、遅くなっちゃって…」
「怒られるかな…」
「大丈夫でしょ、今日は作業だし…まあ、怒られたら一緒に謝ってあげるから」
「それも、そうだね…ありがとう。じゃあ、行こう」
「…ああ」
午後の日差しの中、穏やかな秋の風が、カーテンを揺らし2人の間を通り抜けていった。
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