転生ぱんつ

えんざ

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二章

二十一話 名刺

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 ユナを見かけた翌日、ウルセーナとメイは、中級者の街付近の狩場のモンスターを朝から晩まで狩り、疲れ果てた様子で冒険者の館に来ていた。

「それじゃこれが報酬の20万ピーだ。しかしお二人さん、頑張りすぎじゃねえか? こんなに稼いでどうするつもりだよ、はっは」

 受付のおじさんから報酬を受け取る二人。
 ウルセーナとメイはもう今にも倒れそうなほど疲れて見える。

「はぁ、疲れた……。長時間パンツでいると、何もしてねえのに体力削られて疲労感がはんぱねえ……」

 ウルセーナは力なくメイの肩に寄りすがる。

「さすがに張り切り過ぎたわね……私はもう部屋に戻って寝るわ。今日はアンタ一人で夕飯に行ってちょうだい……」

「大丈夫かよ食わなくて、明日もあんのによ」

「もう食べる力もないのよ。放っておいて……」

 メイは肩に乗せたウルセーナの手を払うと、とぼとぼと宿に向かって行った。

「いやぁ……何食おうかな。今日も焼肉食って元気つけるかぁ……?」

「――なかなか良かったぜ! じゃあまた来るからよ! はっはっは! ――――って、おいガキ! 邪魔だどけコラあ!」

 通りの店から勢いよく出てきた柄の悪そうな男客が、目の前でふらふらと歩くウルセーナを足蹴にする。
 ウルセーナは抵抗する元気もなく体のバランスを失って、男が出てきた店の前に転がり込むように倒れた。

「ってて……」

「ふらふら歩いてんじゃねえよ! ガキが! ペッ」

 倒れて動かなくなったウルセーナに、柄の悪い男は唾を吐いてどこかへ去っていった。

「ちょっと、大丈夫ですか――――!」

 ウルセーナは駆け寄る女性の声を耳にしながら、想像以上の身体の疲労に、そのまま意識を失ってしまった――――。


 ちゃぷちゃぷと、水の音がウルセーナの耳に入ってきた。
 ウルセーナは目を覚まし、虚ろな表情で辺りを見回す。

「……あれ、あ……気を失ってたのか俺。ここは……」

 そこは、六畳ほどの小さな個室だった。
 間接照明が部屋の木目をうっすらと照らし、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
 ウルセーナは畳で出来た寝台で横になっていた。
 そしておもむろに上体を起こし、床に足をつける。

「誰もいねえな。ドアが二つあるけど、どっちが外に出れる方だろ? 何かちゃぷちゃぷ聞こえるなあ」

 ウルセーナは立ち上がると、水の音が聞こえる正面の引き戸をカラカラと開けた。

「あれ、風呂だ。これ温泉か? お湯出っ放しだけど、このままでいいのか」

 真四角の檜で出来た風呂に竹筒からお湯が注がれ、溢れ続けていた。

「……タオルも置いてある。うーん、何かひとっ風呂浴びたくなるなぁ……汗かいたし。誰もいねえし入っちまうか!」

 ウルセーナは服を寝台に脱ぎ捨て、風呂にざぷんと浸かった。
 頭を湯船に沈め、かきむしると、顔をごしごしと擦って風呂の淵に両腕を置いた。

「うはぁ……さいっこー……。気持ち良すぎて眠っちまいそうだぁ……」

 ウルセーナはしばらく目を瞑り、ちゃぷちゃぷと水の跳ねる音を聞きながら湯に浸って身体を癒した。
 すると、カラカラと引き戸がひとりでに開いた。
 ウルセーナはゆっくりとその方を向く。――と。

「お目覚めになりましたか? お体は大丈夫そうですね、安心しました」

「…………」

 ウルセーナは目を点にしてその声の主を見た。

 それは昨日出会ったナビにそっくりな女の子、ユナだった。
 ユナは丈の短い木綿生地の浴衣のようなものを着ている。
 お腹の前で軽く括っただけの紐は、解けば裸体を露にしてしまいそうなほどに危うく見えた。

「えっ……、お前は昨日の……ユナ? だっけ?」

 ウルセーナは、浴衣の交差する裾から覗くユナの太ももに気を取られながらも、平然を装った。

「はい、私はユナと申します。覚えてくださってたんですね。その、昨日は不注意でぶつかってしまい、どうもすみませんでした」

 かしこまると、手を膝に置きお辞儀をするユナ。

「いや、そんな丁寧に謝らなくても! ……そもそも俺が悪かったんだからさ! それと、こっちこそ人違いして悪かったな……。あんまりにも似てたもんでさ……」

 顔を上げるユナの開いた胸元を見て、恥ずかしそうに湯船に顔を隠すウルセーナ。

「ナビさん、とおっしゃられたお方ですよね。この世界にはそういうことがあるみたいですね。噂でしか聞いたことがありませんでしたけど、実際にいらっしゃるんですね」

「ああ、そうだな、うん。……つうかさ、ここは何処なんだ? 宿か? お前はここで働いてんのか?」

 ウルセーナは頭に湧いた疑問をそのまま言葉にして連ねた。

「ここは湯屋です。私は遊女としてここに勤めております」

 ユナの言葉にぴんとこない様子のウルセーナ。

「湯屋? 個室の風呂屋なのか……珍しいな。遊女ってのは何だ? どんな仕事するんだ?」

「はい。遊女は、お客様に気持ち良くなっていただけるよう、全力でご奉仕するお仕事です!」

 ユナは笑顔で元気良くそう答えた。

「……ご奉仕? ……え、背中擦ったり……とか?」

「はい、そうです。他にもいっぱいしちゃいますよ」

「……ふーん」

 ウルセーナは深くは聞かず、しばし言葉を失って何度も顔に湯をかけた。

「あの、差し支えなければ、お名前を教えてもらってもよろしいですか?」

「え? ああ、俺はウルセーナってんだ。一応冒険者やってる」

「ウルセーナさん。珍しいお名前ですね、ふふふっ」

 ユナは可笑しそうにして口を手で隠す。

「……笑うなよ、好きでこんな名前になったんじゃねえんだ」

「ごめんなさい、失礼でしたね。……あの、昨日のお詫びと言ってはなんですけど、お背中でも流しましょうか? お代はもちろんいただきませんから」

 膝に置いた手を床に移し、今にも立ち上がろうかという姿勢をとるユナ。

「へえっ! いや、いいよいいよ! 気を使わなくても! うん、大丈夫だから!」

 取り乱し、顔をのぼせたように真っ赤にするウルセーナ。

「そうですか、差し出がましいことを言ってすみません。それでは、ごゆっくりされたいでしょうから、私はこの辺で失礼しておきますね」

 残念そうに手を膝の上に戻すユナ。

「え、ああ……うん」

「では、お気が済むまでゆっくりして行ってくださいね。お帰りの際は、部屋を出られて左手に出口がありますから、そのままおかえりになってくださって大丈夫です。店の者には話しを通してありますので」

 そう言うと、広がる胸元を手で隠し立ち上がる。

「ああ、そっか……悪いな……ユナ」

「それでは失礼しますね、ウルセーナさん」

 少し首を傾げ、あどけない笑みを浮かべてウルセーナの名を発するユナは、まるでナビそのものに見える。
 ウルセーナはそんなユナに見とれて言葉を無くす。

「…………あぁ」

 ユナは最後にウルセーナを見てにこりと会釈すると、カラカラと風呂の戸を閉め部屋を出て行った。
 ウルセーナは一拍間を置いて、これが現実かを確かめるように湯に頭を沈める。

「――ぷはああっ! ……夢じゃねえ!」

 ウルセーナは風呂を出ると、タオルで体を拭き寝台に腰をかけた。

「ふーっ。……あれ? これ、ユナの名刺か」

 ウルセーナは寝台に置かれた名刺を手にして、まじまじと眺める。

「ふんふん……裏は料金表か。……んん? んああん! たっ、たっけええ!」

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 湯屋 中級者の街支店  営業時間:24時間営業
【入会金】10,000ピー
【指名料】20,000ピー
【入浴料】※出張も承ります(下記料金の1.2倍)
○60分  60,000ピー ○120分  115,000ピー
○180分 165,000ピー ○延長30分 35,000ピー 
【20%OFFお泊りスペシャル】※出張に限ります
◎24時間 1,440,000ピー
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「ご奉仕ってまさか、そういう……いや考えるな俺! アイツはナビじゃねえんだから、何してるやつだろうと関係ねえ。ただ顔が似……同じなだけだ。……まあ体もか。……あと元の性格も同じなのか……。ま……まあ、そんだけだ。全然気にすることはねえ!」

 ウルセーナは自分をそう納得させると、名刺を手に持ったまま店を出た。
 そして宿に着くと、今日もナビのことを想いながら眠りに着いた。


――オークション開催まで残り14日
 目標金額2000万まであと30万(ウルセーナ1080万、メイ890万)――
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