91 / 113
28
第27楽章 Mein Vater, der Erlkönig
しおりを挟む「んっ……今度は何日寝ていた?」
「お兄様、大丈夫…? 丸2日よ。」
王宮にある魔術師専用のある一室、魔力回復を促す特別な設計が組まれた部屋のベッドの上で、死んだように眠っていたノートヴォルトが目を覚ました。
彼の限界まで減った魔力と体力の早期回復を促すため、フリーシャは魔力増殖炉で結界を張り直す作業を他の結界術師に任せ、ずっと傍にいたのだ。
「大丈夫…いつもありがとうフリーシャ。レニーは? …待って結界が足りない?」
「ええ。もう3か所やられてしまったの。レニーお兄様は学院で魔物駆逐の指揮をとっているわ。お父様はアフィお兄様と入れ替わるように前線へ行かれたわ」
「君は増殖炉にいなくていいの?」
「良くないけど、お兄様の回復の方が重要だって。2日なんて早すぎよ…このまま1週間くらい休ませてあげたかったのが本音だけどね」
限界まで戦った後、自然回復を待たず強制的に回復をされては、また次の前線に送り込まれる。
彼はここ数か月、ずっとその繰り返しの日々を送っていた。
「お兄様、クレド公爵の姿が見えないのよ。嫌な予感がするわ」
「クレド…ポータルは? まさか学院に持ち出した?」
「私はずっと炉の傍にいたからわからないの。でもいるはずの結界術師も数人いないから、技術者として随行させられたのかもしれない」
「コールディア…」
「彼女は目を付けられて?」
「ないとは言えない…もう行く。アポカリプスは?」
アポカリプスとは、彼のためにカスタマイズされた小型魔力増殖機能のついた特別な装飾品。
両腕と両足、そしてローブに組み込まれたマギアフルイドとそれを司る魔律回路によって使用者の魔力を何倍にも増幅させる。
装着者が凄まじい魔力で終焉を導く者と化すことからこの名がある。
倒れる時には装着していたはずのそれらは今は外されている。
なぜかフリーシャは黙ってしまった。
「フリーシャ?」
「アポカリプスは…レニーお兄様が…」
それを聞いたノートヴォルトが、「止めなかったのか!?」と飛び起きた。
「レニーが壊れてしまう! なんで止めなかった!?」
「止めたわ! わかったって言ったから、まさか本当に持ち出すとは思わなかったのよ! アフィお兄様の傍にいる間に、気づけばなくなっていて…」
「…もう行くよ。レニーには負荷が大きすぎる。学院の状況はわかる?」
「宮廷魔術師のほとんどが向かったわ。学生も奮闘しているって最後の報告では聞いた…“魔王”の観測はまだされていなかったけど、数値は上がってるって。私は増殖炉に戻るわね。早く結界を戻さなきゃ」
「フリーシャ」
「なに?」
「“燃料”なんかに、間違ってもならないでよ」
「勿論よ。お兄様にあんなこと2度とさせないから…だから頑張るわね」
ノートヴォルトは彼女を軽く抱きしめると、飛び出すように部屋を後にした。
「アフィお兄様…レニーお兄様も…どうかご無事でお戻りください」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる