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番外編 別の先輩の話

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その日は男の先輩に誘われて柔道部に行った。
どうやら先輩も元柔道部で久びりに柔道をしたかったようだ。
稽古が終わって一緒に帰っていると、
「今から(女の)生田さんに実験室を案内するんだけど、そのあとでご飯行かん?」
お誘いが来た。
「それは(男の)柴山先輩と2人ですか?それとも(女の)生田先輩と3人でですか?」
僕は尋ねる。
「生田さんも誘うか。」
という流れがあって、先輩二人とご飯に来ている。
行ったのは大学近くの町中華だ。
柴山先輩の独断と偏見でお店が決まった。
4人席に案内され、奥側と手前側で先輩が別れてしまった。
後輩としてどっちに座るか結構悩むやつだと思う。
とりあえず、じゃんけんをしてもらって勝った方の生田先輩の隣に座った。
正直、生田先輩とはあまり喋ったことがない。
肌がすごく綺麗で肌がものすごく白い。
そして、常に笑顔があふれており、近くにいるだけで明るくなれるような存在だった。
「そういえば、好きの定義考えてきましたよ!」
隣の生田先輩が嬉しそうに話しかけてきた。
好きの定義とは僕が一時期、先輩方や同級生に聞きまわっていたことだった。
先輩はその時、答えが出ず、保留にしていたのだ。
「先輩にとって好きって何ですか?」
「私にとって好きってその人のことを喜ばしたいって思うことです!私、弟がいてすごく大好きなんですけど、弟のためなら何でもしてあげたいと思います!」
そう言うと、先輩は水を一杯飲んだ。
なんとも可愛いどや顔だなー。
そんな話をしている間に頼んでいた食べ物が次々と運ばれてきた。
「そういえば、生田先輩は博士後期課程に進まないんですか?」
口に含んでいた食べ物を飲み込んで答える。
「そうなんですよ。悩んでいたけど、今は進まないです。」
「そうなんですね。。生田先輩はてっきりドクターに行くと思っていたので。。すごく寂しいです。。」
露骨に残念そうな顔をした僕。
「ほんとは進むつもりだったんですけど、いったん社会人を経験して、周りを見ておきたくて。博士課程には社会人経験をしてからでも遅くないかなって。その方が研究に生かせると思ったので。でも、絶対また戻ってきます!」
先輩は目をキラキラさせながら、今後の展望を語った。
その顔は一生忘れない。
夢を語っている先輩の姿はとても綺麗で、かっこよかった。
語りながら笑っている先輩の顔は誰よりも綺麗で可愛かった。
先輩には常に芯があった。
子供が好きで、特に障害を持つ子供に関する研究をしている。
バイトも障害児の子供の世話をしており、楽しいと言っていた。
できれば傍で支えたい、そう思った夜だった。
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