33 / 43
もろもろあって、最後の1年
ピンチ回避と衝撃の事実
しおりを挟む自国の王子が一通り私の良いところを述べ、しどろもどろになった時だった。
廊下からカツカツというブーツの足音が響いてきた。
それが室内に入って絨毯の上を歩くザッザッという足音に変わり、自国の王子の左で止まる。
「お待ち下さい。彼女は、セアリアは私の婚約者です。
この、第二王子、ラウルの。こちらが書状です。」
私は、聞き覚えのありすぎる声にひょいと顔を出したわ。
「な、なんと…」
隣国の王子が絶句してる?
私の前には同じ高さに背中が2つ。
でも、左の背中の持ち主は、私の知る声ながらいつもの服装と合わないの。
だって、いつもの聖騎士の正装じゃないんだもの!
「まさか、我が国の第二王子の婚約者を隣国へお連れになると?」
先程までのしどろもどろはなくなり、王子らしい堂々と威厳のある声で話せば、
「そんなこと! 致しませんとも…」
2つの背中の向こうから焦ったような声が聞こえると、ドカドカとした足音が聞こえ、私の横を走るように通り過ぎ、あっという間に私の後ろの扉から出て行ってしまった。
「はぁ、ホッとした。間に合って良かったよ。」
振り返った自国の王子は、気の緩んだ表情で笑っている。
「それはこっちのセリフだ。もっと頑張ってくれよ、王子。」
「今は君だって王子じゃないか!」
「っぷふ…そうだった。」
後から振り返ったのは、左側に立っていた私の知っている金髪に深い青の瞳の青年。
ただし、右側に居た自国の王子とそっくりに笑っている。
「え…? 何?ウル…え?」
2人について行けないのは、どうやら私だけみたいだ。
「第二王子? それに名前…え?」
「「ぷっ…ふふははは…」」
焦る私と、ステレオ状態で同時に聞こえる笑い声。
──何なの?
すると、自国の王子の方が少し右に動いて言った。
「《歌姫聖女》が戸惑っているよ。ちゃんと話してあげた方が良いと思うよ、君の正体。」
すると、私の知るウルも少し左に動いて言った。
「そうだな…セアリア。」
「え?」
ウルは私の右手を掴むと、流れるようにエスコートの姿勢になり、私を見下ろした。
自国の王子が視界の端で動く。
「この部屋はこのまま使って良いよ。ごゆっくり。」
そのまま早足で扉へ向かうと、私の背中の向こうからパタリと扉の閉まる音が聞こえた。
それを待つようにウルが動く。
私達は窓際に置いてあるカウチへ並んで掛けた。
「何から話せば良いのか…
まず、今の俺は、この国の第二王子のラウルだ。生まれた時に双子だった俺は、余計な争いを生まないために、あの孤児院へ預けられたんだ。
あいつ…第一王子のグラントがさ、魔力量が多くてちっこい頃に体が弱くて、結構最初から自分が本当は王子なことは知ってたんだ。で、孤児院から度々連れ出されてはギリアン爺のところで神官になるための見習いをしてた。
王族の血を引いているから、ヘタに平民として早々子どもでもできたら後々面倒になる。その点、神官ならある程度監視することができるから。
まぁ、最終的に王子の教育として寄宿学校へ入れられたワケだけど。」
「あ、私が聖女になった頃ね?」
ウルは頷く。
「セアリアが聖女なのは生まれた時から知ってたから、ラウルとして王子の教育の他に、ウルとしてギリアン爺のとこで聖騎士の勉強もしてた。今度は絶対に守りたくて、でも、王子としては危ないからって本格的な騎士としての訓練はできなかった。だからギリアン爺の魔法で見た目を変えてもらって、ラウとして騎士団の遠征に参加したこともあったんだ。
セアリアの聖騎士の枠が空いたのを知って、ラウとして聖騎士に着任しながらレポートを出して学校は卒業した。
それでやっとウルの姿でセアリアの前に戻って来ることができたんだ。」
どうやら、本当にウルはラウでありラウル王子でもあったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる