【完結】匂いフェチと言うには不自由すぎる

325号室の住人

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夕食後、ティルが僕を送ってくれると言って、背負ってくれた。

ティルの広い背中に父の匂い…
まだ父も母も王都に住んでいた幼い頃、父に背負ってもらったことを思い出した。

そのうち、どうやら眠ってしまったようだ。

僕は眠りが浅い方で、あまり他人に起こされた経験がないので、地面に立つティルの背中から落とされた時は本当に驚いたんだ。

父にも母にも裏切られたような状態な僕は、あまり他人を信用できなかったハズなのに…

僕はまた明日も、ティルに会いたい。

ティルを浮気相手に選んだ父に文句を言うためではなく…
ティル会いたいと思ったんだ。

だから、僕に対して過保護気味な爺やがティルに向けた嫌悪感に慌てて、だいぶ辻褄の合わないことを言ってしまった。

僕は普段から父母とは住んでないし、明日からは夏休みで学園は閉鎖されるのに……


すっかり寝る準備を整えると、ティルが変な誤解していないといいなぁと思いながら、お祖父様の魔法陣を使ってティルに手紙を書いた。

『先程は爺やがすまなかった。明日は何時から仕事なんだ?迎えに行きたい。   ジャン』

お祖父様の魔法陣は、今や《一家に一枚は持っている》と言われている。

けれど、返事は来ず……

僕は、返事を待っていたハズがいつの間にか眠ってしまい、気付いたら朝だった。






俺の朝は、たぶんジャンより早い。

家の玄関扉の外側に乱雑に置かれたゴシップ新聞を、魔法で契約している家へ送るのが最初の仕事だ。

主に貴族家のメイド部屋や侍女の詰所、商人の家の執務机、それから主要な井戸端へ貼り出す。

ちなみに、毎晩貴族や王族の醜聞データを印刷所を借りて印刷しているのは俺自身で……印刷が終わったら俺の家へ集まるように魔法で設定しているのだ。

気配探知の魔法に、を条件に加えると、前後30分を録画して、俺のポケットの中の魔石に保存している。

結構売れているけれど…紙代や印刷所を借りる費用が意外と高いので、3日分の米代にしかならない。
つっても、小麦に比べりゃだいぶ安価だから、購入は1ヶ月分ドンと買って魔法の収納庫に置いてある。

利益重視じゃなくて、魔力操作能力や精密な魔法の調整をメインにしてるので、まぁ良っかと思っている。

新聞が終わったら、母ちゃんが帰ってくる前に風呂代わりのたらいの準備と、弟妹の朝ごはんの支度をし終えたら、次の仕事のため市場へ向かう。

じーさんとばーさんで細々と経営している鮮魚店では意外なことに三枚おろし程度でもとても重宝されているのだ。

手紙に気付いたのはその時だ。

ジャンへ、じーさんとばーさんの鮮魚店の場所の地図を書いたものを返事として送っておいた。

とは書いてないし、構わないだろ。


けれど、店に現れたジャンはブリブリ怒っていて…
どうして怒ってるのか聞いたら、
「どうして昨夜のうちに返事をくれないんだ!」
って。

お貴族様のお怒りポイントが平和すぎて、思わず笑ってしまったのは許して欲しい。


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