7 / 35
6
昼食タイム。
俺はこの鮮魚店のバイトがある日はいつも、昨日の残りのご飯を弁当として持ってきて、魚の切れ端を貰って海鮮丼をまかないとしてタダで喰わしてもらってる。
「いただきます。」
マイ箸と共に食べ始めると、ジャンが物欲しそうな顔でこちらを見ている。
──あぁ、今晩のオカズもごっつぁんです!
まぁ、ジャンとしてはそういうつもりはないのだろう。
大体予想はつくが、この顔を近くで晒されてるとキスの1つもサービスしたくなるので、話しかけることにした。
「なぁ、ジャン。お前、ランチの予定は……」
「うん。ご相伴に与ろうと思って。」
「ハァ、やっぱりだな!!」
この後の重労働に向けて体力をつけておきたいところだが、仕方ない。
「ホラ、あーん。」
俺は大きな心で、1口分けてやることにした。
「あーん?」
「知らないのか? 口開けて。1口恵んでやるから。」
「? あ~…」
俺はそこへ、1口入れてやった。
まぁ、直前に別の妄想したことは、敢えて言わないぞ。
ジャンは目を見開くと咀嚼して、飲み込んだ。
喉の動きが別の妄想を…
──コラ俺!いくらジャンがかわいいからってクドいぞ。
「凄く美味しいよ、ティル。」
ジャンはめっちゃ笑顔だ。
「良かったな。」
俺が昼メシを続けると、ジャンは指を咥え始める。
──あぁもう!! オカズはいらねぇ!!!
俺は、激しく頭を振ると、ジャンへの餌付けに専念することにした。
ジャンは2回目以降は躊躇することなく、
「あ~んっ」
と言っている。
──違うアクセントで言ったら…
妄想が過ぎる!!
ちょっと体の一部に熱が集まって来てしまったので、俺はジャンが「あ~ん」の《あ》さえ言わないうちに、次々口に入れることにした。
ジャンの口がメシでいっぱいになって、咀嚼が追いつかなくなったらしい。
ジャンは頬袋を膨らませても小リスのようで可愛かった。
俺は、こうなりゃもう介護だ!と、家から持参した緑茶もどきの入った湯呑みをジャンの口元へあててやる。
ジャンはそれで飲み込むことに成功したらしい。
もう1杯緑茶もどきを注いでジャンに持たせ、俺は背中を擦ってやった。
「んっ ティルの大きな手、あったかい。」
ジャンは縁側で日向ぼっこしているように、目を閉じて気持ちよさそうな表情をしている。
「俺の手……」
「うん、ジャンの大きな手で撫でられるの、僕好きだ。」
俺は、ジャンの背中をゆっくりゆっくり、上へ下へと撫でる。
「でも、気持ち悪くないのか? 俺は、その……お前の親父と……」
「うん。同じ匂いだもの。まだ疑いは完全に晴れない。
でも…」
ジャンは瞼を上げて、俺を真正面から見た。
「僕は、ジャンを信じたいと思ってる。」
その言葉も、視線も、とても力強かった。
「ふふっ。俺を信じてくれたのか。ありがとな。」
俺は、思わずキスしてしまいそうになり、慌ててジャンの頭髪をガシガシ混ぜてやるのだった。
あなたにおすすめの小説
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
来世はこの人と関りたくないと思ったのに。
ありま氷炎
BL
前世の記憶を持つ、いずる。
彼は前世で主人だった三日月と、来世で関わらない事を願った。
しかし願いは叶わず、幼馴染として生まれ変わってしまった。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
王子様から逃げられない!
一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。