【完結】匂いフェチと言うには不自由すぎる

325号室の住人

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昼食タイム。

俺はこの鮮魚店のバイトがある日はいつも、昨日の残りのご飯を弁当として持ってきて、魚の切れ端を貰って海鮮丼をまかないとしてタダで喰わしてもらってる。

「いただきます。」

マイ箸と共に食べ始めると、ジャンが物欲しそうな顔でこちらを見ている。

──あぁ、今晩のオカズもごっつぁんです!

まぁ、ジャンとしてはそういうつもりはないのだろう。

大体予想はつくが、この顔を近くで晒されてるとキスの1つもサービスしたくなるので、話しかけることにした。

「なぁ、ジャン。お前、ランチの予定は……」
「うん。ご相伴に与ろうと思って。」
「ハァ、やっぱりだな!!」

この後の重労働に向けて体力をつけておきたいところだが、仕方ない。

「ホラ、あーん。」

俺は大きな心で、1口分けてやることにした。

「あーん?」
「知らないのか? 口開けて。1口恵んでやるから。」
「? あ~…」

俺はそこへ、1口入れてやった。
まぁ、直前に別の妄想したことは、敢えて言わないぞ。

ジャンは目を見開くと咀嚼して、飲み込んだ。

喉の動きが別の妄想を…
──コラ俺!いくらジャンがかわいいからってクドいぞ。

「凄く美味しいよ、ティル。」

ジャンはめっちゃ笑顔だ。

「良かったな。」

俺が昼メシを続けると、ジャンは指を咥え始める。

──あぁもう!! オカズはいらねぇ!!!

俺は、激しく頭を振ると、ジャンへの餌付けに専念することにした。

ジャンは2回目以降は躊躇することなく、
「あ~んっ」
と言っている。

──違うアクセントで言ったら…

妄想が過ぎる!!

ちょっと体の一部に熱が集まって来てしまったので、俺はジャンが「あ~ん」の《あ》さえ言わないうちに、次々口に入れることにした。

ジャンの口がメシでいっぱいになって、咀嚼が追いつかなくなったらしい。

ジャンは頬袋を膨らませても小リスのようで可愛かった。

俺は、こうなりゃもう介護だ!と、家から持参した緑茶もどきの入った湯呑みをジャンの口元へあててやる。

ジャンはそれで飲み込むことに成功したらしい。

もう1杯緑茶もどきを注いでジャンに持たせ、俺は背中をさすってやった。

「んっ ティルの大きな手、あったかい。」

ジャンは縁側で日向ぼっこしているように、目を閉じて気持ちよさそうな表情をしている。

「俺の手……」
「うん、ジャンの大きな手で撫でられるの、僕好きだ。」

俺は、ジャンの背中をゆっくりゆっくり、上へ下へと撫でる。

「でも、気持ち悪くないのか? 俺は、その……お前の親父と……」
「うん。同じ匂いだもの。まだ疑いは完全に晴れない。
でも…」

ジャンは瞼を上げて、俺を真正面から見た。

「僕は、ジャンを信じたいと思ってる。」

その言葉も、視線も、とても力強かった。

「ふふっ。俺信じてくれたのか。ありがとな。」

俺は、思わずキスしてしまいそうになり、慌ててジャンの頭髪をガシガシ混ぜてやるのだった。


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