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しおりを挟むティルは、1番年下の下っ端で、1番重いものを1人で持つことも多かった。
だから、木陰に座り込んだ時には本当に疲労困憊と言うのだろうか、すごくバテていた。
ティルは全身から汗を滴らせているのだが、匂いは少し父の匂いとは違うようだった。
もっと近くで嗅ごうと、
「ティル、お疲れさま。」
ティルの顔の汗を拭いてから肩にタオルを掛けたり、冷たい紅茶の入ったグラスをティルの額に当てたりした。
こっそり頭の匂いを嗅ぐが……
うん、やっぱり父の匂いとは違うようだった。
──それにこの匂い、僕好きだ。
僕は匂いに惹かれて、ティルの頭に頬擦りしたくなってきてしまった。
「ジャン…気持ちいいよ、ありがとっ……」
どうしてなのかはわからない。
ティルの、普段上がっている前髪が汗で張り付いてるのを見たからなのか…
ジャンの返答が、普段と違ってちょっとアンニュイな感じだったからなのか…
語尾の吐息のこもり方なのか…
僕のお腹が急にギュッとなって、手元の注意が散漫になってしまった。
僕の手元から消えたグラスは、ティルが見事にキャッチしてくれた。
暑い中でずっと動いていたティルを休ませたいのに、僕は何をしてるんだよぉ……
「ティルぅ、ごめんなさい。」
──ティルに嫌われたくない。
その思いが通じたのか、ティルは許してくれたようだ。
僕の渡したタオルをシャツの中へ入れるようにしながら汗を拭いていたティルは、自分のお茶やお菓子を僕に分けてくれて、お昼のまかないのように僕に食べさせてくれる。
僕はティルと同い年だし、幼子みたいで恥ずかしい。
けれど、僕の口元へティルが手を伸ばす時に彼の匂いが香るのがとても心地好いし、僕が彼の手から食べるところを見たティルが本当に嬉しそうな表情をするので、僕も嬉しくなる。
気付けば自分から《あ~ん》と口を開いてしまっていた。
──ティルの指も口に含んだら、どんな味がするのかなぁ…
そんなことを考えていたら、ティルがくれていた菓子は食べ終わってしまった。
残念……
そのうちティルは、地面に横になった。
僕が渡したタオルを顔に掛ければ、あっという間に寝息が聞こえる。
──疲れていたんだろうな……
僕は、仮眠であっても少しでも疲れが取れるようにと思って、ティルに以前学園で習った《癒やしの風》の魔法を試すことにしてみた。
目を閉じて…対象者を思い浮かべ、それから……
「《癒やしの風》……」
囁く程度で良かったのが、つぶやく程度に声が出てしまった。
すると、ティルと同じ仕事をして休憩中の人間が過ごすこの辺り一帯に、突風が駆け抜けてしまった。
その時、ティルのシャツが捲れ上がって、ティルの腹がチラッと見えた。
腹の筋肉で6つに割れているように見えるのは、我がクラスの乗馬や剣の授業の前の更衣室ではあまり見られない。
どちらかと言うと、剣技大会で騎士が上半身裸でやる剣型の部の参加者の《鋼の肉体》に近い。
それを見たら、また僕のお腹がギュンッとした。
ティルが起きたら家主のお婆さんにお手洗いを借りようと思った。
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本当にありがたく思います。
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