【本編完】しがない男爵令嬢だった私が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について A-side

325号室の住人

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本編

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今日は、待ちに待った学園の入学式。

トイレの最後尾に並んでいた私は、人っ子一人いない中庭を抜け、会場である講堂へ向かっていた。

煉瓦造りの講堂の立派な外壁が見えてきた時だった。
目の前に、金髪碧眼ながらずんぐりむっくりした少年を先頭に、3人の取り巻きという構成の男子生徒が立ちはだかる。

「こちらにおわすは、この国の第3王子殿下であらせられる!」
右の1人が声高らかに言うと、他の2人が、
「「よっ!」」
と掛け声をかけながら片膝を付き、拍手をした。

真ん中の他称王子は、自分から名乗るでもなくドヤ!と顎を少し上げた。

ポカーン…

突然のことに、私は驚きで思考が止まった。






「あの……人違いです!」

その一言だけで精いっぱいだった。

だって私は、田舎の貧乏男爵家の3子。相手はこの国の、かなり怪しいけれど他称とは言え王子とその取り巻きだもの。
接点なんてあるワケがない。

「いや、君だ!」

それが合図かのように取り巻きに囲まれる。
他称王子は私の正面に立つ。

「君はフレリア・ブリネスカ男爵令嬢だろう? ならば『享楽のフレリア』の主人公ではないか!」

他称王子は私の正面から、握手をするみたいに私の利き手を封じた。

「現にほら…この素晴らしい…」

それから、私の背中からお尻まで手を滑らせてくる。

ゾゾゾ…
一瞬にして鳥肌が立ち、体がこわばる。

それに、スカートのプリーツを無視するようにお尻を撫でられた。

「フガッ…感じてる?」
──いいえ、全然!
私は全力でかぶりを振る。

「強がってるのか?」

少し体を離した他称王子は、私の顎のラインを撫でる。

「そんな気の強いところも好きだ。フガッ」

この男は何を言っているのか。
私はその手を振りほどいて距離を取ると、取り巻きの輪を抜けて講堂のある方向へ走った。

…ってか、ここは学園内なのですが…?

今年の新入生には双子の第2・第3王子が居る関係で、今日の入学式には国王陛下夫妻も出席されるというのに、警備はどうなってるの?

間もなく講堂の入口扉に手が掛かるという距離で、取り巻き2人に行く手を阻まれる。

向かってくるから、退くしかない。
1歩、また1歩と下がるうちに、私の背中はもうそれ以上行けない壁に追い詰められてしまった。

鼻が悪いのか、ブヒフゴ言いながら他称王子が私の前にやって来た。

「平民から貧乏ながら男爵令嬢になった主人公が、この素晴らしい肢体で次々と攻略対象者を篭絡していく、R18ゲームの最高峰!
さぁ、フレリア…私は喜んで篭絡されよう!
《いざ開かん! 快楽の扉!!》」

他称王子は、私の左手首をガシッと掴むと、入学式会場の講堂の手前にある倉庫の扉を開いた。

実家では農作業を手伝ってそれなりに重いものは持ち上げられるからって、運動が苦手そうな豚体型の男はびくともしない。

とは言え、どうやら私の貞操の危機だ。

「いや! やめてくださ…離し、てぇ!」

他称王子の従者達に視線を向けるが、彼らの目は逸らされてしまう。

「お前たち。入学式での挨拶が始まる前には呼べ! それまで見張っていろ!」
「は! かしこまりました。」

そうして、無情にも倉庫の重い扉は閉ざされてしまった。


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