1 / 49
本編
1
しおりを挟む今日は、待ちに待った学園の入学式。
トイレの最後尾に並んでいた私は、人っ子一人いない中庭を抜け、会場である講堂へ向かっていた。
煉瓦造りの講堂の立派な外壁が見えてきた時だった。
目の前に、金髪碧眼ながらずんぐりむっくりした少年を先頭に、3人の取り巻きという構成の男子生徒が立ちはだかる。
「こちらにおわすは、この国の第3王子殿下であらせられる!」
右の1人が声高らかに言うと、他の2人が、
「「よっ!」」
と掛け声をかけながら片膝を付き、拍手をした。
真ん中の他称王子は、自分から名乗るでもなくドヤ!と顎を少し上げた。
ポカーン…
突然のことに、私は驚きで思考が止まった。
「あの……人違いです!」
その一言だけで精いっぱいだった。
だって私は、田舎の貧乏男爵家の3子。相手はこの国の、かなり怪しいけれど他称とは言え王子とその取り巻きだもの。
接点なんてあるワケがない。
「いや、君だ!」
それが合図かのように取り巻きに囲まれる。
他称王子は私の正面に立つ。
「君はフレリア・ブリネスカ男爵令嬢だろう? ならば『享楽のフレリア』の主人公ではないか!」
他称王子は私の正面から、握手をするみたいに私の利き手を封じた。
「現にほら…この素晴らしい…」
それから、私の背中からお尻まで手を滑らせてくる。
ゾゾゾ…
一瞬にして鳥肌が立ち、体がこわばる。
それに、スカートのプリーツを無視するようにお尻を撫でられた。
「フガッ…感じてる?」
──いいえ、全然!
私は全力で頭を振る。
「強がってるのか?」
少し体を離した他称王子は、私の顎のラインを撫でる。
「そんな気の強いところも好きだ。フガッ」
この男は何を言っているのか。
私はその手を振りほどいて距離を取ると、取り巻きの輪を抜けて講堂のある方向へ走った。
…ってか、ここは学園内なのですが…?
今年の新入生には双子の第2・第3王子が居る関係で、今日の入学式には国王陛下夫妻も出席されるというのに、警備はどうなってるの?
間もなく講堂の入口扉に手が掛かるという距離で、取り巻き2人に行く手を阻まれる。
向かってくるから、退くしかない。
1歩、また1歩と下がるうちに、私の背中はもうそれ以上行けない壁に追い詰められてしまった。
鼻が悪いのか、ブヒフゴ言いながら他称王子が私の前にやって来た。
「平民から貧乏ながら男爵令嬢になった主人公が、この素晴らしい肢体で次々と攻略対象者を篭絡していく、R18ゲームの最高峰!
さぁ、フレリア…私は喜んで篭絡されよう!
《いざ開かん! 快楽の扉!!》」
他称王子は、私の左手首をガシッと掴むと、入学式会場の講堂の手前にある倉庫の扉を開いた。
実家では農作業を手伝ってそれなりに重いものは持ち上げられるからって、運動が苦手そうな豚体型の男はびくともしない。
とは言え、どうやら私の貞操の危機だ。
「いや! やめてくださ…離し、てぇ!」
他称王子の従者達に視線を向けるが、彼らの目は逸らされてしまう。
「お前たち。入学式での挨拶が始まる前には呼べ! それまで見張っていろ!」
「は! かしこまりました。」
そうして、無情にも倉庫の重い扉は閉ざされてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。
その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜
きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる