8 / 55
婚姻からもうすぐ一年 R18要素あり
しおりを挟む早いもので、もうすぐ私が書類上の妻になってから一年になります。
私は次期侯爵夫人の学びもしながらお茶会や王家主催の夜会に参加したりと忙しく毎日を送りながら、近衛隊副長として王城に勤めるバルトル様と王都の屋敷で暮らしております。
王都の屋敷を新婚夫婦に譲った当主夫妻は、第二子のサルエル様と領地にて暮らしていらっしゃいます。
「アッ……ばるぅ…もうっ……ひゃっ…あんっ! んんんぅ!!!」
二人きりということもあるのでしょうか。
バルトル様は体力馬…もにゃもにゃ…のようで、明け方まで丁寧に、何度も子種を授けてくださいます。
……が、私にはまだ、おややは来てくださいません。
月のものがくる度に後継を宿せない身が申し訳なく、婚姻から半年後にはバルトル様に出仕予定がある前日の閨をお断りするようになりました。
婚姻してからの月のものが両手で足りなくなってからは、お誘いの三回に一度は私の体調不良でお断りするようになりました。
お断りする度、私の体調をとても優しく気遣ってくださるバルトルへの罪悪感から、私はだんだんバルトルと正面から向き合うことが辛く感じるようになってしまいました。
それでも、夜は同じベッドに眠り、朝の見送りと夜の出迎えもバルトルの希望で続けています。
「行ってくる。」
「…ってらっしゃいませ…」
今日もバルトルに抱き締められながら蚊の鳴くような声で見送ると、私はとある準備を始めることにしました。
《バルトルの後継を宿せないこと》
これは、私にとってかなりの精神的苦痛です。
幸いにも義両親からは何も言われませんが、婚姻してから約一年、王妃様主催のお茶会に休まず参加しているのは私くらいです。
懐妊がわかると免除となるお茶会への参加ですが、私にはあいにく理由がありませんもの。
他の参加者の蔑むような目、逆に労るような目、それらを感じる度に自分が《不良品》に思えてきます。
昨日も、私より婚姻が遅い伯爵夫人に憐れみの目で見られ、精神力をゴリゴリと削られて帰宅しました。
頭痛と、それから食欲がなく、本当に体調不良で床につき、バルトルの出迎えもできませんでした。
だからやっぱり、離縁するしか道はないと思うのです。
私は自分の荷物を片付け、元々自分で持ってきていた服や下着を処分しました。
バルトルにプレゼントされたものや、婚姻以降に購入したものは、種類別に分けて片付けました。
──今夜、バルトルに《離縁》してもらうようにお願いしよう。
侍女の、夕食を告げる声に立ち上がった私は、そんなことを考えながら食堂へ向かいました。
食堂は一階にあります。
私が、エントランスの階段に差し掛かった時でした。
バルトルの普段の帰宅時間よりもだいぶ早いと言うのに、なぜかエントランスに使用人が集まりつつあることに気付きました。
私が最後の一段を下りた時…
玄関扉が開け放たれ、使用人一同が頭を垂れました。
姿を現したのは、バルトルでした。
珍しくドタドタと足音をたてながら走るように帰宅したバルトルは、私を見つけるなり抱き締めてきました。
「休みをもぎ取ったぞ! エリサ、領地へ行こう!」
私は驚きで、声も出せませんでした。
0
あなたにおすすめの小説
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~
若松だんご
恋愛
――すまない! 少し休ませてもらえないか!
今日は、門の前で訪れる男性を待つ日。「婿取りの儀式」
門を開け、招き入れた男性を夫とする。
そんなしきたりに従って、家の裏門で訪れる予定もない相手を待っていたのだけれど。
――すまない。連れの具合が良くないんだ。
やや強引に、ぐったりした連れの少年を抱えて入ってきた青年。
十のときに母が亡くなり、父が連れてきた義母と異母姉。
実の娘なのに、屋敷の隅に追いやられ、もっぱら縫い物ばかりさせられていた。
その上、幼い頃からの許嫁だった人からも婚約破棄され、彼は異母姉の夫となった。
「こんな男を夫にするのか!」
彼らに出会ったことで、父親から勘当されたリファ。
そんな彼女を助けてくれたのは、今日が婿取りの儀式だと知らず飛び込んできた青年。
――身の振り方が決まるまで。
妻にする気はない。自由にして構わない。
セイランと名乗った青年は、頼る先のないリファに、とりあえずの暮らすところを提供してくれた。
地方から省試を受けるため上京してきたというセイラン。彼の従者で、弟みたいな少年、ハクエイ。
彼らと暮らしながら、少しずつ自立のために縫い物仕事を引き受けたり、彼らのために家事に勤しんだり。
家族に捨てられ、婚約者からも見捨てられ。
悲しみに、絶望しかけていたリファは、彼らと暮らすことで、少しずつその心を癒やしていくけれど。
――自立。
いつかは、彼らと別れて一人で暮らしていかなくては。いつまでも厚情に甘えてばかりいられない。
そう思うのに。
ずっとここで暮らしていたい。ハクエイと、……セイランさんといっしょに。
――彼女の境遇に同情しただけ。助けたのは、ちょっとした義侠心。
自分の運命に、誰かを巻き込みたくない。誰かを愛するなんてことはしない。
そう思うのに。
ずっとここで暮らしていたい。ただの進士として、……彼女といっしょに。
リファとセイラン。
互いに知らず惹かれ合う。相手を知れば知るほど、その想いは深まって――。
門を開けたことで、門をくぐったことで始まる、二人の恋の物語。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる