旦那様と私の、離・婚前旅行

325号室の住人

文字の大きさ
27 / 55

女神との旅 バルトル視点

しおりを挟む

「バルぅ…もう………もう!」

旅に出てからこっち、何度も何度もエリサを抱いて、愛を伝えた。

快楽に溺れたエリサはいつでも、俺に対して《愛しい》という瞳を向けて、俺の子種を強請った。

その都度、俺は溢れる程の子種をエリサに注いだ。

けれど、寝落ちた後には必ずと言って良いほどに俺との離婚を告げた。

──寝言だから、そういう夢を見ているだけだろう。

そう考えるようにしていた。

けれど、毎度のように無意識で《離婚》が口から出てしまうということは、心の奥底にはいつでも俺との《離婚》があるということなのだろうと思った。

俺は、毎晩全身でエリサに愛を伝えながらも、だんだんと不安になって行った。

そんな時に馬車の事故があり、俺は怪我のせいでエリサを抱けなくなってしまった。

──愛を伝えなくては。

でも、体に刻むことはできない。
…となれば、もうエリサに縋ることしかできなかった。
不安で離してやれなくなり、手を繋いでいたり膝に乗せたり、とにかくどこか触れていたかった。

エリサはそんな面倒な俺に付き添い、付き合ってくれた。

怪我が治った時には、明るい内から俺を受け入れてくれた。

想いが通じ合ったと、とても嬉しかった。



けれどまさか、《王妃のお茶会》でエリサが蔑まれていたとは……



侯爵家とは領地の境を接する伯爵は、確かに出世という欲が強く、金儲けの好きな男だと思っていた。

ただ、それは夫人の教育の賜物ではなく、元来伯爵という人物が持つものであると認識していたのだ。
だから夫人は無害であると、勝手に考えていた。

昨日は昼食を摂りながら、俺が当主となった後も交流を続けましょうと話が纏まり、王都から街道を通そうと、お茶会の後に書類を作成しようということになっていたのだった。

エリサに対するものは夫人の独断のようだったが、夫人はこの1年、エリサに懐妊の知らせがないことで、俺がエリサを借金のカタとして契約結婚をしているのだと、なぜかそう確信を持ったらしい。

そこで、エリサを次期侯爵夫人の座から引き摺り下ろし、代わりに娘のうちの誰かを後釜にと計画していたとのことだった。

だから、馬車の中で俺とエリサが熱烈なキスをしているのを見て、卒倒したそうだ。



目覚めた夫人は、有無を言えないまま伯爵に離縁された。
娘たちも夫人と共に家を出された。

あの夫人の実家は、子爵家だった筈だ。
ただし、現在は叔父一家が継いでいる。

夫人は伯爵夫人として、また、王妃のお茶会では年若い夫人達の見本として数多くの夫人達へ、貴族の夫人とは何たるかを教育してきたと言う。

その一環として実家を継いだ従兄の奥方にも何度か口を出して煙たがられていたのだそうだ。

……としたら、どこへ行くのか。
まぁ、俺としてはあまり興味はないのだが。






今朝。俺はとても幸せな夢を見た。

エリサが俺を愛していると言ってくれたのだ。

俺は涙を流して喜んだ。
必ず幸せにすると誓った。






朝、エリサに起こされて目が覚めた。

侯爵家の迎えが来たのだ。
迎えに来たのは、領地で半隠居状態だった《じい》こと先々代執事長だった。

エリサを馬車に乗せたところで、侯爵領の治療師と共にヨセフのいる治療院へ向かうことになった。

「坊ちゃま、奥様なら、馬車にてお待ちですよ。」

エリサを気にする俺に、じいは何度となく告げた。

けれど、宿の前まで戻った俺の前にあったのは、見知らぬ女が乗る侯爵家の馬車だった。

「エリサ…エリサは?」

問いかける俺に対して、見知らぬ女は言った。

「わたくしがエリサでございます。」
と。

最愛の女神を失ってしまった俺は、目の前が真っ暗になった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~

若松だんご
恋愛
――すまない! 少し休ませてもらえないか! 今日は、門の前で訪れる男性を待つ日。「婿取りの儀式」 門を開け、招き入れた男性を夫とする。 そんなしきたりに従って、家の裏門で訪れる予定もない相手を待っていたのだけれど。 ――すまない。連れの具合が良くないんだ。 やや強引に、ぐったりした連れの少年を抱えて入ってきた青年。 十のときに母が亡くなり、父が連れてきた義母と異母姉。 実の娘なのに、屋敷の隅に追いやられ、もっぱら縫い物ばかりさせられていた。 その上、幼い頃からの許嫁だった人からも婚約破棄され、彼は異母姉の夫となった。 「こんな男を夫にするのか!」 彼らに出会ったことで、父親から勘当されたリファ。 そんな彼女を助けてくれたのは、今日が婿取りの儀式だと知らず飛び込んできた青年。 ――身の振り方が決まるまで。 妻にする気はない。自由にして構わない。 セイランと名乗った青年は、頼る先のないリファに、とりあえずの暮らすところを提供してくれた。 地方から省試を受けるため上京してきたというセイラン。彼の従者で、弟みたいな少年、ハクエイ。 彼らと暮らしながら、少しずつ自立のために縫い物仕事を引き受けたり、彼らのために家事に勤しんだり。 家族に捨てられ、婚約者からも見捨てられ。 悲しみに、絶望しかけていたリファは、彼らと暮らすことで、少しずつその心を癒やしていくけれど。 ――自立。 いつかは、彼らと別れて一人で暮らしていかなくては。いつまでも厚情に甘えてばかりいられない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ハクエイと、……セイランさんといっしょに。 ――彼女の境遇に同情しただけ。助けたのは、ちょっとした義侠心。 自分の運命に、誰かを巻き込みたくない。誰かを愛するなんてことはしない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ただの進士として、……彼女といっしょに。 リファとセイラン。 互いに知らず惹かれ合う。相手を知れば知るほど、その想いは深まって――。 門を開けたことで、門をくぐったことで始まる、二人の恋の物語。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...