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異世界 シャーシード国

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『いや…あん……ぁあっ……もぅ、あんっぁああああーーーー!!!』

黒髪の男が果てたようだ。

金髪の男の右肩に担がれた黒髪の男の左脚が、叫ぶような嬌声と共にピンッと伸びる。


けれど、金髪の男の腰は止まらない。

『ぁあっイッてるのに! 凄いっ激しいっ……ああっ、ぁあ~んっ、ぁっあ~んっ、もっとぉ、もっと欲しいの。ダンネス様ぁあああーーー!!』

『いい。いいっ…ぁあっ。そこそこっひゃああーんっ……ハァ……好きぃ。好きぃ。ダンっ……ダンネっ……あああーーー』

『もっとイッちゃう。きゃあああああーーーーー……』

『えっ…ふっ………ひぃんっ………………』

『いや…あん……ぁあっ……もぅ、あんっぁああああーーーー!!!』

黒髪の男は両足をピンッと張ると、今度は気を失うほど激しく果てたらしく、動かなくなった。


金髪の男─ダンネス─は、黒髪の男─シーシャ─にゆっくりと顔を近付けると、リップ音を響かせた。

『シーシャ、わしの最愛……』

金髪の男は、一糸纏わぬ姿でベッドを降り、奥の部屋へ向かった。

程なくしてシャワーの音が聞こえてきた。

すると、そこへ1人の女がやって来た。

女は足音をさせないように、黒髪の男に近付くと、手にしたナイフを振り上げ、それを振り下ろした。

黒髪の男は口と胸から鮮やかな血を流しているのだろう。
全体的にセピア色なので、よくわからない。

女は嗤った。
気が狂ったように。
いや、実際気は狂って居たのだろう。

そこへ、女の嗤う声に気付いた金髪の男が浴室から戻ってきた。

そして発見する。

「シーシャ!!!」

黒髪の男の頭を膝に乗せ、わーわーと泣く金髪の男。

そこへ臣下たちがやって来て、帯剣した男たちに女は囲まれる。


金髪の男─ダンネス─は、この国の王であった。

『男と閨を共にしても、何も生まれませぬ。王よ、目を覚まされよ!!』

女は叫びながら、連行されて行った。


そこから国王ダンネスは、宰相を呼び、騎士団長を呼び、魔術師長を呼んだ。

新しい法律を作るためだ。


「この国に女は必要ない。全女を国外追放とする。
騎士団長は、女を国外へ移送せよ。
また、夫婦や番は一緒に外へ出せ。男ならば、赤子であれこの国に居る権利がある。但し、母親が希望するなら、一緒に国外へ向かわせろ。
魔術師長は、男でも孕める魔法を構築せよ。
以上だ。」


かくして、この、男しか居ない国、シャーシードが出来上がったのだった。





──
────



映画はそこで終わった。

セピア色の画なのに、何故か2人の男、ダンネスとシーシャの髪色は金髪と黒髪に見えた。

なぜかって?

知っていたのだ。

だって僕は……シーシャだったから。




でも、自分の死後は今初めて知った。

まさか、ダンネスが自分を失った悲しみから、女人禁制の国を作っていたなんて思いもしなかった。

けれどその反面そこまで自分を思ってくれていたことに、シーシャだった時の記憶の中の自分が涙を流しながら喜んでいる。

「ダンネス様、ありがとうございました。」

シーシャとしての自分が、僕の口を使ってそう呟くと、僕の中に僅かに残ったシーシャが、成仏したように空へ旅立つのを感じた。

ここから見えるのは天蓋の刺繍だけだけれど、僕は空を見上げるように、シーシャの魂を見送った。


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