【完】名前すら知らない、僕のつがい

325号室の住人

文字の大きさ
6 / 8

  5


子らに背中を押され、いつもの部屋を出た直後、なぜか僕は彼と初めて交わった部屋に居た。






その途端、彼が僕の視界から消えた。






「つがい殿! 申し訳なかった! まさか吾がこんなに本能に呑まれるとは! まことに! まことに申し訳なく…」

声の聞こえる方を見ると、彼は僕の足元の床にへばりつく勢いで頭を下げていた。……っていうか、土下座?

顔は王子様なのに行動は体育会系で全く合ってない。
これって、もしかして僕が止めないと延々続くパターン?

「吾の言葉は魔法で翻訳されている。周波数は合っているはず。つがい殿は吾に言葉を掛けてはくださらぬのか?」

伏せられた顔で表情は見えない。
代わりに彼の見事な金髪が揺れながら仰々しい言葉が紡がれる。
まぁ、仰々しいながらも聞こえているのは言い訳だけれど。

ぶわりっ

彼からまた猛烈に香り、僕は頭がクラクラしてくると共に後ろが疼いた。
とりあえずどこかへ…僕が近くにあったベッドにの縁に座ると、

「あぁ…香る。吾のつがい…」

床を這いながら、彼が僕に近付いてきた。
その姿が段々と、頭頂に犬のような耳が生え、後ろにふさふさとした尾が生え、四つ足で走る美しい狼になり、僕に突進したまま僕を押し倒した。

「吾のつがい…」

顔を上げたのは犬ではなく犬耳をつけた彼だった。
水色の瞳は僕を捕らえて放さないと語っており、僕はその瞳を通して心地よい、けれど目に見えない何かを受け取った。
もしかして、これが彼の魔力なのだろうか。 

そのまま僕は、再び彼と交わった。






「ンッ…あ……や! アンっ」

彼の唇が触れる。
僕の首筋に、鎖骨に、胸に、臍に…
キスまで行かない、ただ唇が触れるだけなのに、頭の中がほわほわとして、僕はさっきから声が止まらない。

その柔らかな唇でキスして欲しくて、僕は彼の頰を両手で包むと、体を起こしながら額と額をくっつけた。

彼の水色の宝石が、僕を正面から見据える。
彼は僕をその宝石に映しながら、更に僕の望みまで読み取ろうとしているように覗く。

僕の望みはただ1つ。

《貴方が欲しい。》
《君は念話ができるの? 感じたこと、私に伝えて。》

頭の中に響くのは、仰々しく翻訳された彼の言葉ではなかった。

《キス、して欲しい…です。》
《キス?》

【キス】は通じないのだろうか。
僕は彼の頰を両手ごと引き寄せ、彼の唇に自分の唇をくっつけた。

《これがキス? よし、今度は私が。》

チュッ チュッ

リップ音と共に、角度を変えながら何度も唇がくっついては離れる。

それだけでも気持ちよく、僕はだんだん彼に身を寄せて行き、気付けば彼の腿に跨って腰を振っていた…らしい。

耳元へ彼が吹き掛けた呼気に顔を上げると、
《とてもかわいらしいおねだりですが、もう私が限界です。》
彼の長い指先が僕の後ろに伸びる。

「ぁん!」

僕の体が反れば、彼はクツクツと嬉しそうに笑い、
ずぶずぶと自分の指を僕の後孔に埋め込めば、

「はっ、ダメぇ!」

僕は彼の腹に向かって盛大に射精した。





 
目が覚めると、夕方だった。
この世界でも同じ、茜色の空だ。
俯せになっていた僕は、胸の下に腕を敷いて上体を少し持ち上げると、右に倒れ彼と向かい合う体勢になった。

彼の髪の隙間から天使の寝顔がのぞく。
顔に掛かった髪は、毛先が彼の下にあるのでうまくはらってやれなかった。
けれど彼に触れてみたくて、僕は髪の隙間からそっと指先を差し入れた。



あれから僕は、挿入されたまま彼に跨り、何度も何度も突き上げられ、狂ったように嬌声を上げながら何度も何度もナカで彼の精液を浴びた。

正直、頭の血管がイッて命を落とすと思った。
そのくらいの…いわゆる彼は絶倫だった。



考え事をしていたせいだろうか。

僕の指先は頬に触れるつもりが唇に当たってしまった。

はむっ

その指先は彼の口の中にあっという間に入り、ペロペロと舐められる。
ただそれだけで股間が熱くなる僕も、大概淫乱だと思った。


感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

押しても押してもダメそうなので引くことにします

Riley
BL
俺(凪)には愛して止まない幼馴染(紫苑)がいる。 押しても押してもビクともしない余裕の態度に心が折れた。 引いたらダメだと思っても燃え尽きてしまった…。 ちょっと休憩…。会えないと寂しいけど、引くと言ったからには自分からいけない…

完結·氷の侯爵はおっさん騎士を溺愛したい〜枯れおじの呪いを解くには恋が必要らしいです~

BL
少年だったルイを庇って呪いを受けた騎士ディオン。 それから年月が経ち、ルイは青年に、ディオンはおっさん騎士になっていた。 魔法を使うと呪いが進むディオン。その呪いを解呪しようと試行錯誤なルイ。 そんなとき、ひょんなことから恋をすれば呪いが解けるのでは、となりルイがディオンに恋をさせようと様々な奇行を始める。 二人は呪いを解くことができるのか、そして二人の関係は―――――― ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。