こちら冒険者支援ギルド ダンジョン課

瀧音静

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転属願いの対応

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「というわけなので、僕にはあのダンジョンは合わないんですよ~」
若干涙目になりながらそう訴えてくる目の前のショタっ子に、どうしたものかと思考を巡らす。

 吸血鬼 性別男 年齢500超え そして見た目は美少年のショタ
それが転属願いを出してきたダンジョンマスターのプロフィールである。

 まだ日中であり、吸血鬼の天敵である陽の光りを遮るために全身を覆うローブを3枚重ね着し、
僅かに顔だけを覗かせる格好の彼には、Sランクのダンジョンを任せていたのだが……

 そのダンジョンの立地に不満があるという事でこうして直接転属願いを言いに来たらしい。
 いわ
断崖絶壁に出来た横穴のダンジョンに夕日が水平に入り込む時間が有り、危うく煙になりかけるらしい。

「と言われましても……当初あのダンジョンの最奥は光が入り込む余地の無い立地でしたはずですよね?何故今になって?」

「知りませんよ~。どうせ僕が寝ている間にダンジョン内のモンスターと争った冒険者が魔法だの技だの撃って地形でも変えちゃったんじゃないですか~?そもそも今まで寝てて煙になりかけて起きたんですから僕も把握できてないんですよ~」

「あー、……」

Sランクダンジョン
難易度最高というより今の人間にはほとんどクリア出来るものが居ない難易度のダンジョンなのだが、
冒険者のさがなのか力試しみたいな感覚で挑戦する者達が居る。

 そこらへんを動き回っているモンスターですら並みの人間には簡単には倒せず激戦必至であり……
それを倒そうと技や魔法を撃てばそりゃ地形も変わるという話である。

「ですけど他に貴方に合うダンジョンというのも……」
頭の中に入っているダンジョンの情報を思い出しても目の前の彼に合うダンジョンは見つからない。

「もうこの際どこでもいいんです。陽の光りさえ入り込まなきゃ。贅沢言いませんから~」
「塔型のダンジョンでも?」

「あ、それは無理です~。太陽に近づくなんて絶対嫌です~☆」
キュピ☆なんて擬音が聞こえてきそうなポーズを取るが無視。

「少し待ってて下さい。探して来てみますから」
とだけ告げて自分の机の上にあるダンジョンの情報をまとめたファイルを手に取り、

 とりあえずAランク以上からなんとか彼が無事に過ごせそうな環境のダンジョンを探すことにする。
えーっと……まずは地下等の地中が絶対条件で……人の居る町から離れていないと他のモンスターが危険だし……

 あぁ……ぴったりのがヒットしましたね。
後はどう言いくるめるかを頭の中で整理し……

「お待たせしました。」
私は満面の笑みで吸血鬼に資料を渡した。

「ここなら貴方でも大丈夫だと思いますがいかがでしょう?」
「なになに……地底湖に続いているダンジョンですか~」

「はい。地下500m相当の場所に地底湖があり、そこまでの道中はかなり入り組んでいます。現在は人魚種のローレライがダンジョンマスターですが、貴方が今までいたダンジョンと交換という形でしたら向こうにも話をしておきます」

「助かります~。それで~……どれくらい時間かかっちゃいますか~?」

「書類上でランクを変更しそれを各地に配布、書類仕事は今日終わらせますが……それぞれのダンジョンに居るモンスターを総交換しなければなりませんので……」

「つまり~、モンスターの交換さえ終わっちゃえば今日からでもいいんですね~?」
最初の涙目はどこへやら、目を輝かせながらそう聞いてくる。

「それはそうですが……何分移動などの時間は…」
「夜になれば僕の魔法で一瞬ですね~。あ、……血貰ってもいいです?」

 キラリと口元に光る牙を見せながらそんなことを言う。
あぁ……そうか、たまにその姿に騙され忘れかけるが、彼はれっきとした吸血鬼で……

 下手すれば私の両親を超える年月生きているのだ。
強すぎる故にSランクのダンジョンに半ば追いやった彼の魔法に、およそ常識と呼べるものは通用しない。
栄養源さえあれば、ではあるが。

「では陽が落ちてから、貴方の魔法でダンジョン間のモンスターの移動は行って貰うとして……私は変更となったダンジョンに関する資料を作成しますが……どこかでお待ちしますか?」

「血が欲しいと言ったのはスルーですかね~。まぁ別にどこでも構いませんけど~。出来れば直射日光が当たらない部屋なんてあったりしませんかね~?」

「この建物にはありませんね。血も魔法を使用する直前で問題ないでしょう?」
「二つとも残念です~。ま、適当なものに姿を変えて待つことにしますよ~。この場所にモンスターが居ては冒険者達が困惑するかもしれませんし~?」

 私のところに来るのがモンスターばかりなのであまり話題になってはいないが、ここは冒険者支援ギルドであり、本来は冒険者達が集まるところである。

 ダンジョン課の窓口がいくら冒険者達が普段利用する窓口から離れているとはいえ、彼のような強い魔物の気配を感知する冒険者が居ないとも限らない。

というか彼が来た瞬間ミヤさんが明らかに警戒しだしましたし……。

と、音すら無く煙すら無く気配すら無く、目の前にいたショタっ子は気が付けば着ていたローブごと1本の羽ペンへと姿を変えていた。

「この姿なら内ポケットに入れられますよね~?日が暮れるまでお願いします~」
と恐らく羽ペンからの声を聴いてしまったので渋々内ポケットに入れやるべき作業に取り掛かる。

*

 書類の書き換えを終え、ダンジョンが変更になった旨をローレライに超速達で送り、一旦休憩。
少し溜まりすぎていたためタバコ2本を使用し炎を吐き出して、

 午後に届けられたモンスターの補充依頼も片付け、今日の残る仕事は先ほどの吸血鬼の案件のみ。
軽く伸びをし、ふと窓から遠くを見ていると……

 漆黒のカラスが私を目掛け一直線に突っ込んでくる。
羽ばたきは無い。そして高速で突っ込んで来たはずなのに暴風すら発生しない。

 私はそのカラスを……まぁ素手で引っ掴んで。
魔法を解除し書類に姿を変えたカラスを確認する。

「わ~、それが魔王様からの手紙ですか~?僕初めて見ました~」
内ポケットから声が聞こえてくるが、反応せずに確認を続ける。

「あの魔王様にしては対応が早くて何よりです。これならスライムちゃんのダンジョンもすぐに再開出来そうですね」
書類の内容は午前中に頼んでいた魔物の手配が完了したことを伝えるものだった。

「片付けるべき仕事も無くなりましたし、早く帰れる時に早く帰るべきですね」
などと独り言を言い、私はキッカリ定時に帰宅出来た。


 まぁ……まだまだ仕事があるんですけどねー
っと一人胸の中で呟きつつではあるが……。
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