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足りないもの
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夢の中で出会った女神様は、どこか投げやりで。
はいはい、どの能力がいいの?とたくさんの能力を見せてきて。
見せられた能力の中で、勇者のイメージとピッタリの能力を選ぶと、
はいはい、あなたは勇者。今から勇者。
と早口で言って、すぐに消えて居なくなってしまった……
▽
風呂上り、姉御の用意してくれた浴衣に着替え、私は一人ふと、夜風に当たりに外に出た。
未だ鳴りやまぬ花火の音も気にせず、花火を、というよりは打ち上っている場所をじっと見つめる。
風呂で姉御に言われた言葉が頭の中で先ほどからずっとグルグル回っているのだ。
勇者が魔王を打ち取った先の話。
言われるまで気が付かなかった……いや、気にすらしていなかった。
持ち出してきたお酒セットを岩に落ちないように置き、今度はお酒へと視線を落とす。
話の内容もだが、何故姉御はこのタイミングであんな事を、
と恐らく姉御以外には答えにたどり着けない質問を考えていた時である。
「こんばんは。お嬢さん。一人酒ですかい?よろしければお付き合いしますぜ」
「ひゃうっ!?」
いきなり背後からそう声をかけられ、思わず変な声が漏れてしまった。
振りむけば、勇者のパーティの戦士さんではありませんか。
「おっと、驚かせちゃったかな」
悪い悪い、と頭を掻きながら苦笑されてしまった。
「あなた方もここをご利用に?」
恥ずかしさで若干顔が熱くなるのが分かったが、気にせずに質問。
「本当はその予定じゃなかったんだが、ほら、娯楽の町の情報を貰ったじゃない?結局ビンゴでさ。そこを拠点に昨日までダンジョン攻略やらレベル上げやらに勤しんでたわけよ」
どうぞ、と猪口を渡し、お酌をする。
どうも、とクイッと飲み干し、
こりゃうまい酒だ。と目を丸くする。
「そんで、次はどこ行くかなんて言いながらぶらぶらしてたらここの話を……というか宣伝を耳にしてな。映像でも見たけど、この目でSランクのダンジョンマスター様を拝んどくのも悪くないって事でここに一泊だけすることになったのよ」
あとはちょっと野暮用がね。
なんて髭をいじりながら言う
やっぱり、というかこの方々もあの映像を見ていますか。
「……ぉーぃ。おーい!一人でうろつかないでよ!はぐれたらどうするのさ!」
遠くから戦士を追いかけてきたのか勇者さんのご登場。
「お前さんじゃあるまいし、心配し過ぎだろ」
「ここ、一応ダンジョンなんだけど?最高ランクの」
わしわしと勇者の頭を撫でながら
「そんな雰囲気じゃないのは見てわかるだろ。神楽さんだって望んでない事を他のモンスターがするわけないし」
「って、また飲んでるの!?あれだけ毎日飲んでたのに!」
「美人さんのお酌を断る方が悪いだろ。なぁ、マデラさん」
「え、……あ、え、あの、ま、マ、マデラさん!?」
私が丁度戦士に隠れている形だったのか私を認識し、明らかに慌てる勇者。
「えと、あの、お久しぶりです!」
そういって深々お辞儀される。
こちらも、お久しぶりです。とお辞儀を返す。
「こいつあの映像見てから凄かったんだぜ。それまで剣士だったのにいきなり拳士を目指す!とか言い出したり」
「あ、あれは、……その、マデラさんかっこよかったし……」
はて?姉御にいいようにやられていた記憶しかないんですけど……
「Sランクのダンジョンマスター相手に、臆せず肉弾戦繰り広げて、爆発とかもダメージ無効とかしてたみたいだったし」
段々と声が小さくなって俯いていく勇者。
「お、そうだ勇者。マデラさんにお前の悩みでも聞いて貰えよ」
「悩み、ですか?私に答えられるものであれば……」
「面白そうな話聞こえたなぁ」
唐突に空から声が降ってきた。
番傘片手に、まるで重力を無視してフラフラと姉御が降りてくる。
「か、神楽さん!?」
今度は戦士が慌てる番。
「チビッ子のお悩み相談ならうちも乗るで」
そう言って私の肩に腕を回してくる。
「な、仲良いんですか?モンスターと人間……なのに?」
「ダンジョン課、なんてやってますからね。認識は当然ありますし、たまに飲みに行く位の仲です」
勇者の至極当然の質問に、予め聞かれたらこう答える。と用意していた回答をする。
ダンジョン課なんてやっているとよくこの質問をされるんですよ。本当に。
「そもそもこの方達が本気を出せば私でも、ものの数秒で地面に転がっていますよ。だから私を警戒しませんし、私もやられたときはその時だと割り切ってますので」
「死ぬ覚悟であの仕事を!?」
「もちろんそうならないように色々やってはいますが……モンスターの機嫌次第なところもあるので」
「すでに僕に足りないものが分かった気がします」
シュン、と肩を落とす勇者。
「足りひんもの?それがチビッ子の悩みか?」
「この間ダンジョン帰りにさ、……影っつうか、闇?みたいなのに襲われてさ」
姉御の質問に、戦士は悩みの種を話し始めた。
ですが、闇……?いや、まさか。
「何やってもどんな事しても何一つ効いてる気がしなくてな」
「そして闇に飲まれた。って思ったら全員倒れていたらしくて……ダンジョンの後で疲れてたとか後になってみんなと話したけど、本当に何も出来なくて、強くならなくちゃ。って」
魔王様ではありませんね。魔王様なら飲まれた瞬間跡形すら無く消えています。
「でもレベルも伸び悩んできてて、どうすれば強くなれるのか、何が足りないのか分からなくなってきてて」
「で、とびきり強い人を探して強くなる秘訣を聞いてみようとここに立ち寄ったわけよ」
なるほど。それが野暮用、と。
「失礼ですが今のレベルは?」
「15、です」
「十分なのではないでしょうか。近い年の冒険者でも10を超えている方は数える程度しかいないのでは?」
「でも!今のままじゃ勝てない敵が居る事が分かっているんです!早く強くなりたいんです!」
真っ直ぐな目でこちらを見てくる。
「なんやそんな事か。簡単にすぐ強なる方法はあらへんけど、強なるヒントくらいなら出したるで」
「それ、俺でも出来ます?」
「さぁ?頑張りと実力次第やね」
何やらふふふと、怪しく笑い、姉御はどうやら指導を行うらしい。
これ、……私も巻き込まれますよね?
はいはい、どの能力がいいの?とたくさんの能力を見せてきて。
見せられた能力の中で、勇者のイメージとピッタリの能力を選ぶと、
はいはい、あなたは勇者。今から勇者。
と早口で言って、すぐに消えて居なくなってしまった……
▽
風呂上り、姉御の用意してくれた浴衣に着替え、私は一人ふと、夜風に当たりに外に出た。
未だ鳴りやまぬ花火の音も気にせず、花火を、というよりは打ち上っている場所をじっと見つめる。
風呂で姉御に言われた言葉が頭の中で先ほどからずっとグルグル回っているのだ。
勇者が魔王を打ち取った先の話。
言われるまで気が付かなかった……いや、気にすらしていなかった。
持ち出してきたお酒セットを岩に落ちないように置き、今度はお酒へと視線を落とす。
話の内容もだが、何故姉御はこのタイミングであんな事を、
と恐らく姉御以外には答えにたどり着けない質問を考えていた時である。
「こんばんは。お嬢さん。一人酒ですかい?よろしければお付き合いしますぜ」
「ひゃうっ!?」
いきなり背後からそう声をかけられ、思わず変な声が漏れてしまった。
振りむけば、勇者のパーティの戦士さんではありませんか。
「おっと、驚かせちゃったかな」
悪い悪い、と頭を掻きながら苦笑されてしまった。
「あなた方もここをご利用に?」
恥ずかしさで若干顔が熱くなるのが分かったが、気にせずに質問。
「本当はその予定じゃなかったんだが、ほら、娯楽の町の情報を貰ったじゃない?結局ビンゴでさ。そこを拠点に昨日までダンジョン攻略やらレベル上げやらに勤しんでたわけよ」
どうぞ、と猪口を渡し、お酌をする。
どうも、とクイッと飲み干し、
こりゃうまい酒だ。と目を丸くする。
「そんで、次はどこ行くかなんて言いながらぶらぶらしてたらここの話を……というか宣伝を耳にしてな。映像でも見たけど、この目でSランクのダンジョンマスター様を拝んどくのも悪くないって事でここに一泊だけすることになったのよ」
あとはちょっと野暮用がね。
なんて髭をいじりながら言う
やっぱり、というかこの方々もあの映像を見ていますか。
「……ぉーぃ。おーい!一人でうろつかないでよ!はぐれたらどうするのさ!」
遠くから戦士を追いかけてきたのか勇者さんのご登場。
「お前さんじゃあるまいし、心配し過ぎだろ」
「ここ、一応ダンジョンなんだけど?最高ランクの」
わしわしと勇者の頭を撫でながら
「そんな雰囲気じゃないのは見てわかるだろ。神楽さんだって望んでない事を他のモンスターがするわけないし」
「って、また飲んでるの!?あれだけ毎日飲んでたのに!」
「美人さんのお酌を断る方が悪いだろ。なぁ、マデラさん」
「え、……あ、え、あの、ま、マ、マデラさん!?」
私が丁度戦士に隠れている形だったのか私を認識し、明らかに慌てる勇者。
「えと、あの、お久しぶりです!」
そういって深々お辞儀される。
こちらも、お久しぶりです。とお辞儀を返す。
「こいつあの映像見てから凄かったんだぜ。それまで剣士だったのにいきなり拳士を目指す!とか言い出したり」
「あ、あれは、……その、マデラさんかっこよかったし……」
はて?姉御にいいようにやられていた記憶しかないんですけど……
「Sランクのダンジョンマスター相手に、臆せず肉弾戦繰り広げて、爆発とかもダメージ無効とかしてたみたいだったし」
段々と声が小さくなって俯いていく勇者。
「お、そうだ勇者。マデラさんにお前の悩みでも聞いて貰えよ」
「悩み、ですか?私に答えられるものであれば……」
「面白そうな話聞こえたなぁ」
唐突に空から声が降ってきた。
番傘片手に、まるで重力を無視してフラフラと姉御が降りてくる。
「か、神楽さん!?」
今度は戦士が慌てる番。
「チビッ子のお悩み相談ならうちも乗るで」
そう言って私の肩に腕を回してくる。
「な、仲良いんですか?モンスターと人間……なのに?」
「ダンジョン課、なんてやってますからね。認識は当然ありますし、たまに飲みに行く位の仲です」
勇者の至極当然の質問に、予め聞かれたらこう答える。と用意していた回答をする。
ダンジョン課なんてやっているとよくこの質問をされるんですよ。本当に。
「そもそもこの方達が本気を出せば私でも、ものの数秒で地面に転がっていますよ。だから私を警戒しませんし、私もやられたときはその時だと割り切ってますので」
「死ぬ覚悟であの仕事を!?」
「もちろんそうならないように色々やってはいますが……モンスターの機嫌次第なところもあるので」
「すでに僕に足りないものが分かった気がします」
シュン、と肩を落とす勇者。
「足りひんもの?それがチビッ子の悩みか?」
「この間ダンジョン帰りにさ、……影っつうか、闇?みたいなのに襲われてさ」
姉御の質問に、戦士は悩みの種を話し始めた。
ですが、闇……?いや、まさか。
「何やってもどんな事しても何一つ効いてる気がしなくてな」
「そして闇に飲まれた。って思ったら全員倒れていたらしくて……ダンジョンの後で疲れてたとか後になってみんなと話したけど、本当に何も出来なくて、強くならなくちゃ。って」
魔王様ではありませんね。魔王様なら飲まれた瞬間跡形すら無く消えています。
「でもレベルも伸び悩んできてて、どうすれば強くなれるのか、何が足りないのか分からなくなってきてて」
「で、とびきり強い人を探して強くなる秘訣を聞いてみようとここに立ち寄ったわけよ」
なるほど。それが野暮用、と。
「失礼ですが今のレベルは?」
「15、です」
「十分なのではないでしょうか。近い年の冒険者でも10を超えている方は数える程度しかいないのでは?」
「でも!今のままじゃ勝てない敵が居る事が分かっているんです!早く強くなりたいんです!」
真っ直ぐな目でこちらを見てくる。
「なんやそんな事か。簡単にすぐ強なる方法はあらへんけど、強なるヒントくらいなら出したるで」
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