72 / 75
暗躍
しおりを挟む
えぇと、次は何をすれば……
こっちこっち~。この子の治療を手伝ってねぇ。
それ終わったらこっち来て。飲み薬の最後の仕上げをお願いするわ。
最後でいいから俺んとこ来い。目の保養が足りねぇ。
あいつのとこには行かなくていいよぉ。
えぇと、……はい!私、頑張ります。
▽
「冗談でも笑えへんもんは冗談とは呼ばんのやで? なんでうちらが魔王さん倒すのに手を貸さなあかんねや! 今の現状を作る為にうちらは魔王さんに手を貸したんやで!?」
いきなり大声を出した姉御の膝の上でツヅラオが身じろぎし、姉御は慌てて頭を撫でる。
「魔王様のご意思ですよ~? というか望み、ですかね~」
「いくつか質問が。それに、説明が足りない部分があります」
先ほどのナハトの話。まぁあり得そうな話ではある。少なくとも完全には否定できないですね。
が、しかし。
「何故あなたが魔王様の意思をご存知で? それに、今までの話も、あたかも見てきたように言っていますが、何故、あなたが知っているんですか?」
魔王からモンスターへ降格した彼には、知り得る術は無いはずなのだ。
「魔王様の意思はたった今本人に確かめました~。そしてそして~、見て来たのではなく~」
力を失った彼が知り得るためには、
「僕自身がその筋書きになるように動いていたからですよ~?」
でしょうね。それ以外には思いつきませんし。
「魔王の概念の移動を実際に体験し~、再度魔王へと成り上がる為に~、本っっ当に色々と準備をして来たんですよ~?」
夜色に怪しく光る瞳を輝かせ、饒舌に語る彼は、どこまでを想定して動いているのか。
「ほな、人間に魔法教えとったんは? あんなん、あんたの気まぐれじゃないとでも?」
はて、こいつにそのような過去があるとは驚きなのですが。
「決まってるじゃないですか~。人間が強くなれば魔王の首を取るかもしれないという淡い淡ーい期待があったんですよ~。淡過ぎて見えなくなっちゃいましたけどね~」
「だけど、そんな事をしていたら今の魔王が尋ねて来た。随分と行き当たりばったりだな。とても全部思い通りに動かしているとは思えないが?」
「ではお聞きしますが~、現魔王様が人間、面倒なので勇者と呼びます~。勇者として旅立つきっかけになった、モンスターの争いの噂、及び勇者の居た村の壊滅がほぼ同時に起こったのも偶然だと思います~?」
こいつは。ろくでもない事しかしていないじゃありませんか。
「そもそも~、勇者様はどうして僕の居場所が分かったんです~?」
「そんなん噂になっとった……。そういう事か」
「は~い。ご理解いただけましたか~? ぜ~んぶ想定通りだったんですよ~?」
魔王様が勇者の時にそのような事を体験なされていたとは……。
「ちょっと待ってください。魔王様は勇者としてそこまで強かったのですか? お二人を従える程に」
「「はぁ?」」
え? 何でそんな顔するんです二人とも。
「あぁ、マデラは記憶無いんやっけ」
「僕も名前と共に戻ってきましたし、普通に会話聞いていましたしで全く考えもしませんでしたが~、まだ返して貰ってないんです~?」
えぇと、お二人の口振りから察するに、
「あんた、魔王さんと一緒に旅しとったで。 龍の姿でな」
「しかも今より強かったんですよ~? 僕もこの狐も、まるで歯が立たない位でしたから~」
「そんな存在従えとった魔王さんの力も分かるやろ? なんせ、モンスター中最強と謳われとった紅宝龍が言いなりなんやから」
そうですか。……って
「記憶を返して貰ってない、というのはどういう意味ですか? あと紅宝龍って私の事ですか?」
「そのまんまの意味です~。……勇者の優しさ、という事にしておきます~」
「どちらの話ですか?」
その様な言い方をされると気になるんですが……
「まぁ、どっちもやな。と、また話の腰折れとるで」
「申し訳ありません~。どこまで話ましたっけ。……あぁそうそう、無事に勇者御一行に入った所まででしたね~。あとは想定だと~、魔王を倒した手柄を横から掠め取れれば良かったんですが~」
「俺がそうさせなかったんだな」
「その通りです~。本当にミヤジには邪魔しかされてないんですよ~」
ようやく俺の入れる話だ、と入って来たミヤジさんへ、ナハトは文句を言い始める。
「大体ですね~、僕の時は一週間とか戦い続けた癖に~、勇者の時には2分も経たずに魔王を譲渡したんです~? 理解出来ません~。そもそも何で勇者にあげちゃうんですか~。僕でよかったでしょうに~」
「あのな、どう考えても悪用する事しか考えてないやつに譲ると思うか? それに、俺は人間だ。元でも、この世界の住人じゃなくてもな。あいつはそんな人間達を救い出すなんて俺自身が馬鹿馬鹿しいと思った事を成し遂げて見せると言ってきた。そんで、そのやり方聞いて心の中で爆笑したのさ」
まるで子供の用に無邪気な顔を見せて、ミヤさんはこう、楽しそうに言った。
「この世界を、ゲームの中に変えて見せる。ってさ。聞けば聞くほど、俺が子供の頃にやって、ハマったゲームの内容にそっくりだった。だから、託したんだよ。あいつにな」
申し訳ありません、ええと、その……
「ゲームって何です?」「ゲームって何や?」「ゲームって何です~?」
三人がほぼ同時にそう聞いて、ミヤさんはがっくりと肩を落とした。
こっちこっち~。この子の治療を手伝ってねぇ。
それ終わったらこっち来て。飲み薬の最後の仕上げをお願いするわ。
最後でいいから俺んとこ来い。目の保養が足りねぇ。
あいつのとこには行かなくていいよぉ。
えぇと、……はい!私、頑張ります。
▽
「冗談でも笑えへんもんは冗談とは呼ばんのやで? なんでうちらが魔王さん倒すのに手を貸さなあかんねや! 今の現状を作る為にうちらは魔王さんに手を貸したんやで!?」
いきなり大声を出した姉御の膝の上でツヅラオが身じろぎし、姉御は慌てて頭を撫でる。
「魔王様のご意思ですよ~? というか望み、ですかね~」
「いくつか質問が。それに、説明が足りない部分があります」
先ほどのナハトの話。まぁあり得そうな話ではある。少なくとも完全には否定できないですね。
が、しかし。
「何故あなたが魔王様の意思をご存知で? それに、今までの話も、あたかも見てきたように言っていますが、何故、あなたが知っているんですか?」
魔王からモンスターへ降格した彼には、知り得る術は無いはずなのだ。
「魔王様の意思はたった今本人に確かめました~。そしてそして~、見て来たのではなく~」
力を失った彼が知り得るためには、
「僕自身がその筋書きになるように動いていたからですよ~?」
でしょうね。それ以外には思いつきませんし。
「魔王の概念の移動を実際に体験し~、再度魔王へと成り上がる為に~、本っっ当に色々と準備をして来たんですよ~?」
夜色に怪しく光る瞳を輝かせ、饒舌に語る彼は、どこまでを想定して動いているのか。
「ほな、人間に魔法教えとったんは? あんなん、あんたの気まぐれじゃないとでも?」
はて、こいつにそのような過去があるとは驚きなのですが。
「決まってるじゃないですか~。人間が強くなれば魔王の首を取るかもしれないという淡い淡ーい期待があったんですよ~。淡過ぎて見えなくなっちゃいましたけどね~」
「だけど、そんな事をしていたら今の魔王が尋ねて来た。随分と行き当たりばったりだな。とても全部思い通りに動かしているとは思えないが?」
「ではお聞きしますが~、現魔王様が人間、面倒なので勇者と呼びます~。勇者として旅立つきっかけになった、モンスターの争いの噂、及び勇者の居た村の壊滅がほぼ同時に起こったのも偶然だと思います~?」
こいつは。ろくでもない事しかしていないじゃありませんか。
「そもそも~、勇者様はどうして僕の居場所が分かったんです~?」
「そんなん噂になっとった……。そういう事か」
「は~い。ご理解いただけましたか~? ぜ~んぶ想定通りだったんですよ~?」
魔王様が勇者の時にそのような事を体験なされていたとは……。
「ちょっと待ってください。魔王様は勇者としてそこまで強かったのですか? お二人を従える程に」
「「はぁ?」」
え? 何でそんな顔するんです二人とも。
「あぁ、マデラは記憶無いんやっけ」
「僕も名前と共に戻ってきましたし、普通に会話聞いていましたしで全く考えもしませんでしたが~、まだ返して貰ってないんです~?」
えぇと、お二人の口振りから察するに、
「あんた、魔王さんと一緒に旅しとったで。 龍の姿でな」
「しかも今より強かったんですよ~? 僕もこの狐も、まるで歯が立たない位でしたから~」
「そんな存在従えとった魔王さんの力も分かるやろ? なんせ、モンスター中最強と謳われとった紅宝龍が言いなりなんやから」
そうですか。……って
「記憶を返して貰ってない、というのはどういう意味ですか? あと紅宝龍って私の事ですか?」
「そのまんまの意味です~。……勇者の優しさ、という事にしておきます~」
「どちらの話ですか?」
その様な言い方をされると気になるんですが……
「まぁ、どっちもやな。と、また話の腰折れとるで」
「申し訳ありません~。どこまで話ましたっけ。……あぁそうそう、無事に勇者御一行に入った所まででしたね~。あとは想定だと~、魔王を倒した手柄を横から掠め取れれば良かったんですが~」
「俺がそうさせなかったんだな」
「その通りです~。本当にミヤジには邪魔しかされてないんですよ~」
ようやく俺の入れる話だ、と入って来たミヤジさんへ、ナハトは文句を言い始める。
「大体ですね~、僕の時は一週間とか戦い続けた癖に~、勇者の時には2分も経たずに魔王を譲渡したんです~? 理解出来ません~。そもそも何で勇者にあげちゃうんですか~。僕でよかったでしょうに~」
「あのな、どう考えても悪用する事しか考えてないやつに譲ると思うか? それに、俺は人間だ。元でも、この世界の住人じゃなくてもな。あいつはそんな人間達を救い出すなんて俺自身が馬鹿馬鹿しいと思った事を成し遂げて見せると言ってきた。そんで、そのやり方聞いて心の中で爆笑したのさ」
まるで子供の用に無邪気な顔を見せて、ミヤさんはこう、楽しそうに言った。
「この世界を、ゲームの中に変えて見せる。ってさ。聞けば聞くほど、俺が子供の頃にやって、ハマったゲームの内容にそっくりだった。だから、託したんだよ。あいつにな」
申し訳ありません、ええと、その……
「ゲームって何です?」「ゲームって何や?」「ゲームって何です~?」
三人がほぼ同時にそう聞いて、ミヤさんはがっくりと肩を落とした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる