こちら冒険者支援ギルド ダンジョン課

瀧音静

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かくして

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自然豊かな静かな村に、夫婦が移り住んできた。

お互いに整った顔立ちで、女性の方はどこか高飛車に聞こえてしまうような口調で話す。

しばらく村人達は距離を置いていたが、
土にまみれ、泥だらけになりながら二人で果物や野菜を育てている様を見ていれば自然に打ち解けた。

野良モンスターが村を襲った時などは凄かった。
それまで狂暴だったモンスター達がその夫婦に近づいた途端、まるでペットにでもなったかのように大人しくなった。

その夫婦はお互いを、フォワ、ルターニュと呼び合って仲睦まじく今でも村で暮らしている。



 なるほど、幻想を実現しようと決意した今の魔王様に、ミヤさんが魔王という概念を移したと。
そして本当に作り上げてしまったんですね。そのゲームとやらの世界を。

 そこまでは分かりました。問題は、

「そもそもさっき流したけど、倒されるのが魔王さんの意思ってのはどういうことや?」
「やっとその話ですね~。この世界のシステムを作り上げ~、全ては順調、人間は無駄に死ぬことは無くなり~、モンスターはダンジョンという箱の中なので秩序もあり~、本当に素晴らしい世界を作り上げたまでは良かったんですが~。こ・こ・で、魔王様はこう考えてしまいます~」
「これ、もう自分が魔王じゃなくてもいいんじゃね? と~」

 魔王様の声真似をして、ふざけた様に言うナハトは、眼だけはしっかりと笑っていなかった。

「いつまでも魔王という存在になるのがとてもとても辛いご様子でして~、言うなれば~、つまらない事を無限に等しい時間続けなければならず~、遂には今の状況を打開しようと動きます~」
「ギルドの設立、そしてしばらくしてのダンジョン課窓口の設置。だな」
「その通りで~」

 引き受けたとばかりに今度はミヤさんが説明する。

「ダンジョン課が出来てからはマデラも知ってるから、それまでの話な。魔王を譲渡して人間に転生させられた俺はいきなり魔王に頼まれた。「暇でしょうがないから退屈しのぎを何か探してくれ」ってな」

 思わず頭上にて、こちらもナハトと話しているらしき魔王様を見上げる。

「最初は俺自身がまた挑もうと考えてたわけなんだが、どうも魔王や勇者やってた時ほど強くない。ってわけで今度はこっちから魔王に持ち掛けた。お前を倒す冒険者を育成する機関を作らないか? みたいな感じでな」
「それがあんたが長しよるギルドになるんね」
「そういう事。魔王の後ろ盾もあるし、国の王達も簡単に金を出してくれてな。あれよあれよと設立、んでギルドの利用がスタート」
「ちょっと待ってください。それ、です?」

 ギルドが出来てからずっと長って事になりますよね? 

「……20年位か? あんまり覚えてねぇや……何でそんな事を聞く?」
「いえ、その、……ミヤさんがずっとギルドの長をやれているんですか?」
「あー、……そっか。知らねぇのか。俺さ、年取らねぇぞ?」
「はい?」
「魔王から転醒つぅか転生な、それした時に女神から言われたんだよ。不老を与えるってさ。だから年取らないわけ」

 そうなるとまだまだ疑問が出てくるのですが……

「他のギルドの職員達は何も言わないのですか? 見た目が変わらない、年を取らないという事に対して」
「みんな知ってるし。職員達全員、そもそも?」
「えっ?」
「いやお前、思い出してみろって。お前の最初の自己紹介。魔王様から派遣されました。なんて自己紹介だったのに誰一人警戒しなかったろうが。事前に俺が伝えてたから」

 ……そうでした。

「それに、お前が吸ってるタバコの件。あれも人間なら絶対に無い悩み相談してるのにまるで話題にならなかったろ? お前がモンスターなのももちろん知ってたのよ」
「マデラそないな事言うとったん? ボロ出まくりやな。今じゃ考えられへんわ」
「仕方がありませんよ~。元々龍族は脳筋ですのに~、固有転醒で無理矢理知性くっつけたばっかでダンジョン課なんて任されたんですよ~? これに関しては魔王様の采配ミスです~」

 ナハトに同情されると、何でしょう、こう、言い表せられない気持ちになるんですが。

「マデラが知らん事多くてしゃーないけど、また脱線しとるで?」
「あ、悪い。どこまで話したか……あぁ、ギルドを作った辺りか。ギルドを作って冒険者達を育成する学校も作った。そして魔王という明確な人間の倒すべき相手まで居る。今の世界のシステムの出来上がり。そして、女神が期待すらしなかったこの世界の人間に倒して貰おうとしたんだよ」
「何と魔王様は~、それを成し得させる事で~、この世界の人間にも魔王討伐が可能だと女神に見せつけて~、異世界から人間が召喚、転生、転移させられないようにしようとしているんですよ~」

 何故、というのは愚問でしょうね。こちらの世界に来る人間達、その方々を危険な目に遭わせないため。という事なのでしょう。

「ほんで? 何でそれがうちらが魔王さん倒す手伝いするいう事に繋がるん? あんたに協力した所でこの世界の人間なんざ居らへんやん」
「居るんですよね~ここに。不老とはいえ不死では無くて~、元勇者で元魔王ではありますが~、転生をした事によりこの世界の人間にされた可哀想な方が~」
「俺、だよな。……そんな屁理屈で魔王と女神が納得するとでも思ってるのかね。お前は」

 思わずため息をつき、やれやれと首を振るミヤさんでしたが、

「説得はたった今終わりましたよ~。女神様も魔王様も、どちらも僕の提案を了承していただきました~」

と、頭上から魔王様と側近と増えた中の一体のナハトが降りて来て。

「ささ、どうぞミヤジ、一思いにやっちゃってあげてください~」

 怪しく笑うナハトは待ちきれない様子で魔王が倒されるのを待つ。
このままですとこいつに何一つメリットがありませんよね? 一体何を企んでいるのでしょうか。
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