Nova | 大人気アイドル×男前マネージャー

むぎしま

文字の大きさ
14 / 24
本編

12 プライベートと仕事

しおりを挟む

 Star NovaとL-Nova、今日は同じミュージック番組の撮影だ。その移動車に、マネージャーである本郷も乗り込む。視線は資料に落としたまま、櫻井とは一切目を合わせない。ほんの一瞬でも視線が重なれば、昨夜の温度が脳裏に蘇ってしまうからだ。
 そんな本郷の隣へ、櫻井はわざと距離を詰めて腰を下ろす。本郷は反射的に、ほんの少し身体を引いた。
 その様子を、Novaのメンバーがニヤニヤと眺めていた。

 Nova一行が収録に向かったあと、本郷は楽屋でパソコンを開き、次の現場のスケジュール調整やメールの返信に追われていた。同時に、壁際のモニターに映るスタジオの様子からも、目を離さない。
 晃弥が余計なことを言っていないか。
 春陽が、変なところで滑っていないか。
 そして──恋人の姿も。
 カメラ越しでも分かる、オーラを纏った佇まい。長い亜麻色の髪から覗く視線。指先のしなやかな動き。ステージに立った時の、余裕ながらも妖艶な笑み。
 あのマイクを持つ手で、昨晩も自分に触れて……。そうおもうと、胸の奥がじんわりと熱を帯びた。
「今日も、かっこいいな……」
 誰もいない楽屋で、ぽつりと零す。仕事中には決して口にできない独占欲を、胸の内に押し込めるようにして。
 早く二人きりになりたい。恋人になってから、毎日が満たされている。
「……仕事、頑張らないと」

 収録が終わると、真っ先に楽屋へ戻ってきたのは櫻井だった。後ろ手で扉を閉め、そのまま鍵をかける。
「おい、鍵閉めたら怪しまれるだろ」
「みんなが戻ってくる前に、早くご褒美ください」
 悪戯っぽく笑う櫻井に、仕方ないと小さく息を吐きながらも、本郷の胸は弾んでいた。
 一歩近づき、唇に触れる。ほんの数秒の口づけ。それでも足りなくて、離れがたくて。櫻井は本郷を引き寄せ、強く抱きしめる。互いを確かめるような、熱のこもった抱擁だった。
 見つめ合う視線。緩やかに上がる、口角──。
 そのとき、不意に扉を開けようとする音が響いた。
「櫻井くーん? そこに居るのは分かってまーす。開けてくださーい」
 水島の声と、それに重なるNovaメンバーの笑い声。本郷の頬が、一気に熱を持つ。慌ててパソコンの前に戻ると、櫻井は名残惜しそうに息をついてから、ようやく鍵を開けた。

 その後、雑誌のインタビューが続き、一部のメンバーは別の撮影へと向かった。残ったメンバーと本郷は、帰りの車に乗り込む。
 寮に到着すると、櫻井は「おつかれさま」とだけ言い残して、先に自分の部屋へ戻っていった。本郷はその背中を見送ってから、事務スペースへ向かい、書類に目を通す。
 ようやく全てを片付け、椅子から立ち上がった。そして、仕事の顔を脱ぎ捨てるように深く息を吐く。
 周囲に誰もいないことを確かめてから、本郷は静かに櫻井の部屋の扉を開けた。
「本郷さん」
 両手を広げて待っていた櫻井に、本郷は思わず飛びついた。さっきまで必死に抑えていた分、勢いがついてしまう。
 ぎゅっと抱きしめると、胸の奥から幸福が溢れ出した。
「本郷さん、今日の俺、どうでした?」
「……よくやってた。誇らしかった」
 頭を撫でると、櫻井が嬉しそうに目を細める。
 そのまま唇が触れ、壁に背中を預ける形で、二人は熱のこもった口づけを交わした。

 シャワーを浴び終え、スウェット姿で並んで座る二人。
 部屋には、穏やかな空気が満ちている。
「コンサートツアーの映像、少し見せてもらったけど、かっこよかった」
「誰が一番かっこよかったですか?」
「……そりゃあ……お前が、特別輝いて見えた」
 仕事中だったら、きっと「みんな」と答えるんだろう。しかし今は、櫻井の恋人だ。
「これからも、本郷さんに好きで居てもらえるように……世界で一番、かっこいい男になります」
「期待してる」
  ソファで肩を寄せ合い、櫻井の手が自然と本郷の背に回る。本郷は一瞬、期待が先走って、身体を強ばらせた。
 打ち上げのあの日、身体を重ねるところまでは叶わなかった。それから今まで、進展はない。ハグとキスはあるが、それ以上はない。
(でも、今日は……)
 時間はまだ早い。恋人になったのだから、勿論、抱かれる覚悟はできている。今日こそは、きっと──。

 そんな本郷の期待をよそに、ベッドに入っても何も起こらなかった。背中に感じる櫻井の熱が、心臓をうるさくさせる。胸元にある手に、自らの指を絡めた。櫻井もそれに答えてくれる。
 だが、櫻井はそれ以上、踏み込んでこなかった。

 それでも、本郷の胸は満たされた。
 そのまま安心したように目を閉じ、いつの間にか眠りに落ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸Twitterもぜひ遊びに来てください🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

隣に住む先輩の愛が重いです。

陽七 葵
BL
 主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。  しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。  途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!  まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。  しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。  そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。  隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...