辺境の国のダルジュロス

蜂巣花貂天

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千年の夜の覚めぬ夢

第6話「眠りにつくディアナ」

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「あなた達は、この国の人間じゃないわよね? 」

「そうだ」

「マイクロチップは埋め込んでない? 」

「もちろん、俺ら海賊はそもそもアウトローなんだ。社会のシステムに組み込まれていない」

「なるほどね」

 男が海賊だということは、月子には予想の範囲てあった。

「どうやって防衛機構を突破したの? 」

「さぁな、そのへんは船長しか解らないとこだ」

「ふむ、ディアナは死んだってこと? 」

「よくわからん」

 男は嘘をついていない。

「船長の名前は? 」

「ダルジュロスだ」

「ダルジュロス……聞いたことあるような」

「辺境伯爵とも呼ばれていたらしい」

「伯爵?海賊のくせに大層な称号ね」

「さぁ、もういいだろう。こっちは満身創痍なんだ」

 男からこれ以上有用な情報は引き出せそうになかった。

「じゃあ、私の手を縛りなおしなさい」

「は? こんだけ暴れといて。どう言い訳するってんだよ」

「女が暴れたから、脅しつけるために机を壊したって事にしましょう」

「伸びてる相棒は? 」

「それくらいは、自分で考えなさいよ。あんたは自分の首が胴体から切り離されない理由を考えるのよ」

「うちの船長はそこまで猟奇的じゃないが……最悪船から下ろされるかもしれない」

「船から下ろされたら? 」

「無人島暮らしだな」

「へぇ、人情派ね。私の上司なら四肢を切断されて吸血ヒルのいる森に捨てられるかもね」

「……恐ろしいな」

「ってことで。私は失敗する訳にはいかないの」

 月子は器用に自分の両手を縛り、胡座をかく。

「お前、アンドロイドなのか? 」

「さぁ、どうでしょう? 」

「俺には人間にしか見えない」

「じゃあ人間なんじゃない? 」

 アンドロイドが相手なら、あそこまで腕相撲は拮抗しない。

 しかし、それすらも機械によって調整されているとしたら?

 そのような疑問を抱きはじめたらきりがない。

「ふわぁ、疲れたからちょっと寝るわ」

「この状況で寝るだと! 相手が俺じゃなかったら襲われてるぞ」

「ふふ、そんな心配は全くしないわ」

「ほんとに変な女だ」

 男はすっかり毒気を抜かれてしまった。

 月子にはそういう不思議な魅力があった。

「じゃあおやすみなさい。海賊さん」

「ナハテだ」

「私は月子。ムーンチャイルド」

「漢字だろ? 兄貴がよくタトゥーで彫ってた文字だ」

「へぇ、案外博識ね」

「まぁ、書ける訳じゃないがな」

「ナハテ、私が眠ってる間に何かあったら。船長にハヌマーンを起動させるように進言してね」

「ハヌマーン? あぁ、あの帽子型デバイスか」

「……」

「? 寝たのか」

「月子。そういえばディアナも月に関係する名前だったよな」

ナハテは、何故かそんな事を呟いていた。

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