辺境の国のダルジュロス

蜂巣花貂天

文字の大きさ
5 / 6
千年の夜の覚めぬ夢

第5話「完全勝利」

しおりを挟む
月子と男はテーブルを挟んで対峙する。

「このゲームのルールは、テーブルに手の甲を着いたら負け、そして肘をテーブルから離したら負け。」

「ふむ……どうなったら勝ちなんだ?」

「つまり、肘を離さずに相手の手の甲をテーブルに着けさせたら勝ちよ」

 ルール自体は、なんの変哲もない普通の腕相撲だ。

「このガタガタのテーブルでやるのか? 」

「えぇ、場所を変更してもいいわよ」

男は少し思案して、自分の側にテーブルが傾く側面に位置を選んだ。

「よし、俺はここがいい」

「ふーん、そっちでいいんだ」

月子は、その正面に陣取る。

 2人は腕を組合い、微妙な位置を修正する。

「準備はいい? 」

「いつでも」

「では、ゲーム開始!」

掛け声と同時に男は腕に力を入れる。

様子を見るつもりでだいたい60%くらいの力だ。

月子の細い腕は、全く動かない。

「ふむ」

お互いの表情には、まだ余裕がある。

 不安定な机は月子側の3点の支柱にしっかり体重がかかっている。

 男はさらに力を強める。

 すると、机の均衡が崩れ男の側に天板が傾き月子の手の甲が少し板に近づいたように見える。

 しかし、腕はそのまま止まっている。

「ぐっ」

テーブルが傾く事で、男は逆に肘が離れそになり焦りを見せる。

 思わずもう片方の手でテーブルを支えてしまう。

「別にルールには違反してないだろ? 」

「もちろん」

 月子にとっては想定内のようだ。

「じゃあこれはどう? 」

 月子は腕ではなく指先に力をこめる。

「ぐっ痛たたたっ」

 異常な握力で握られた男の指先がボキボキと音を立て、悲鳴がもれる。

「てめぇ」

「別にルールには違反してないわ」

「力で押し切ってやる」

 男は全身を使って腕に力を込める。

「なかなかやるわね……でも」

 流石の月子も押し負け始める。

「ぐぁ、ぐぐっ」

 力を入れようとするが、男は痛みに悶絶する。

「はぁー」

 月子は息を大きく吸い込み、渾身の力を一気に注ぐ。

 男の手は手首ごとあり得ない角度に曲がり、同時に腕が倒れ始める。

「手が……手が……」

 手甲がつくより早く、男の肘はテーブルから離れる。

「はい、私の勝ちね。じゃあ、次は利き腕でやりましょうか 」

 月子は男の姿をみて笑う。

「化物め……」

「では、約束通り質問に答えてもらいましょうか」

「仕方がない、何でも聞きやがれ」

 完全に心を折られた男は腹をくくった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...