辺境の国のダルジュロス

蜂巣花貂天

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千年の夜の覚めぬ夢

第4話「うさぎが跳ねる」

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月子は地面が揺れていることに気がついた。

出血のせいか、頭がズキズキと痛む。

視界はぼやけているが、どうやらまだ生きているらしかった。

「生身の女なんて、久しぶりに見たから興奮しちまうよ」

「だよなぁ、指一本触るなって言われても無理な話だ」

「どうする? 」

「抵抗されたから、思わずやっちまったってのはどうだ?」

「船長に殺されてもいいなら、好きにしたらいいさ」

薄く目を開いて部屋の中を確認すると身なりの汚い男が2人、いまにも月子に襲いかかろうとしているようだった。

幸い縛られているのは、両手だけのようだった。

月子を覗き込んでいた男の身体を、抱き寄せるように両足で絡めとる。

「お、なんだよ。へっへ、いいねぇ」

勘違いした男の緩んだ顔面に、勢いよく頭突きを食らわせる。

「ぐはっ」

鼻を思いっきり打った男は怯む。

すかさず、絡めた両足をひねり、男を足で転倒させる。

「舐めやがって!」

もう1人の男が身構える。

月子は息を吐き出して、宙を舞い膝で顔面を蹴り、体重をかけていく。

さらに、的確に相手の首、ひざの関節にも一撃を食らわせる。

血が足りないので、足元がおぼつかないが、手が使えない事がハンデにならないくらいに強かった。

「くそ、なにしやが……」

最初の男も立ち上がるが、腹に重い一撃を受けてうずくまる。

「ぐぅ」

膝をついた男の顔にさらにトドメをさす。

「ふぅ」

戦意が喪失したのを確認すると、月子は部屋の隅にあった小さな木製のテーブルに目をつける。

固定されていないテーブルの脚を蹴りで真っ二つにすると、その破片を利用して数秒で両手を開放した。

男達は、信じられないという顔で硬直している。

「私と踊りたかったら、両手じゃなくて足を縛るべきだったね」

「ひぃ……」

「でも、ちょっと疲れたなぁ」

額から止まりかけていた血が流れ出す。

「どうぞ、休んでいってください」

男は急に低姿勢になる。

「あんたが逃げたってなると、俺らも怒られるんで」

「え、いいんですかぁ?」

「どうぞどうぞ」

「良かった、話が早くて助かるわ」

「お嬢さん強すぎ……」

「訓練された犬は狼より強い」

その言葉は誰かの受け売りだった。

「敵わないなぁ」

「それじゃあ、退屈しのぎにゲームをしましょう」

「ゲーム?」

「私、拷問って嫌いなのよね。指を一本ずつ折っていくなんて野蛮でしょう」

月子の目は全く笑っていない。

「拷問の代わりに、私とゲームをするの。ゲームに負けたらひとつ質問に答えるの」

「なるほど、こっちが勝っても質問できるって訳だな」

「もちろん!」

「よし、わかった」

「おっけー、じゃあ宣誓をしましょう?」

「宣誓?」

「私の国では、こう言うのよ。指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った!」

月子は一方的に、男の小指に自分の小指を絡めて宣誓を行う。

「じゃあ始めましょう。針は無いけど、嘘ついたらこのテーブルの脚を喉に突き刺すわね」

月子は初めて笑顔を見せた。

「わ、わかった。嘘はつかないよ」

「じゃあルールを説明します!」

月子はそう言って、一本脚の無いテーブルを中央に引き寄せた。

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