3 / 53
幼なじみで許嫁
しおりを挟む
僕はインターホンを押すため手を伸ばそうとしたが、その前にドアが開いた。
「ヒーロー!おっはよー!」
中から飛び出してきた人が、僕に体当たりするように抱きついてきた。
「あ、アカリちゃん、おはよーーぅっ…」
勢い良すぎる体当たりに息が詰まったけど頑張って踏ん張る。
「今日のヒロも大好き!」
そんな踏ん張った僕の眼鏡をずらし左目蓋にチュッとちゅーをしたのは、僕の幼なじみのアカリちゃん。
「さっ、学校行こうー」
アカリちゃんは僕と手をぎゅっと握り歩き出す。
引っ張られ2、3歩よろけつつなんとか隣に並び、アカリちゃんの手を握り返す。
「うん」
「えっへへぇ~」
これが、学校まで徒歩15分のいつもの日課だ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
棗燈(ナツメ アカリ)ちゃんは167cmの細身でオメガ性の、高校2年生の男の子。
アカリちゃんはすごく可愛くて、特に笑顔は女の子でも敵わない。
花の蜜ような甘い香りがするフェロモンはアルファ性だけでなくベータ性をも惹きつける。
オメガ性は頭脳・体力共にアルファ・ベータに劣ると言われているけど、アカリちゃんは学年トップ3に入るほど勉強ができて、運動神経も抜群。
そんなアカリちゃんと幼なじみの僕は七月緋色(ナナツキ ヒロ)。
アカリちゃんと同じ高校2年生。
アルファ性なのに164cmと伸び悩み中で、見た目も際立った特徴もない普通の男の子。
しかも分厚い黒縁眼鏡とボリュームのある前髪のせいでもっさり感が否めないから、「アルファです」と言っても十人中十人に疑われる。
見た目だけでなく、勉強も普通、運動神経なんてちょっと悪いくらいだから、それも疑われる原因なんだけど。
「ヒロは今日もいい匂いだね」
僕の首に顔を寄せてクンクン匂いを嗅ぐアカリちゃんに耳が熱くなる。
アカリちゃんは鼻が利く。
お母さんの一族である如月家のオメガの特性らしく、どんな微かな香りも嗅ぎ取ることができるらしい。
「今日もヒロの耳真っ赤、あははっ」
蕩けるような笑顔を僕だけに向けるアカリちゃんに、顔まで真っ赤になる。
「ヒロ、ボクはどう」
「うん、今日もいい匂いだよ、アカリちゃん」
「でしょー!だって、ヒロのための匂いだもん」
僕の鼻先に首を寄せて匂いを嗅がせてくるアカリちゃんに僕はいつもドキドキする。
誰の目も気にすることなくイチャイチャしてくるアカリちゃんとの15分はあっという間だ。
「棗くん、おはよう」
「アカリくん、おはよう」
「ナツくん、おはよー」
校門付近まで行くと、色んなところから声が掛かる。
それはすべてアカリちゃんに向けてのものだ。
アカリちゃんは「おっはよー」と手をヒラヒラしながら挨拶を返す。
アカリちゃん以外の人にとって、僕はいつも透明人間だ。
「アカリくん、おはよう」
「一城先輩、おはよーございます」
昇降口で声をかけてきたのは、3年の一城可那抖(イチジョウ カナト)先輩。
去年の冬に僕たちの学校に編入してきた先輩は、大手電機メーカー"一城電気"の御曹司様だ。
しかも、アルファ性の先輩はモデルの様なルックスで勉強も運動もできて、アルファの見本のように全てを持ち合わせている。
「アカリくん、今日も素敵な香りだね」
「これはヒロのものなので嗅がないで下さい」
アカリちゃんは匂いを嗅ぎに近寄ってきた先輩から身体を引きながら冷たく言い放ち、僕の後ろに立つ。
その首にはネックプロテクターが巻かれている。
このプロテクターは僕のお父さんが開発したもので、巻くことでオメガのフェロモンをかなり抑えることができる。
それでも強いアルファにはこんな風に嗅ぎ付けられてしまうらしい。
「そのヒロくんは、彼の匂い、本当に判るのかな?」
一城先輩の言葉にビクッと肩が跳ねる。
実は僕にはアカリちゃんの匂いがよく分からない。
ネックプロテクターのせいもあるのだけど、僕にはアカリちゃんだけでなくオメガの匂いが分からない。
"花のような甘い香り"なんて、周りが言ってたセリフだ。
だから、僕が"いい匂い"というアカリちゃんの匂いは、アカリちゃんのフェロモンじゃなくアカリちゃんのきている服の柔軟剤の匂いなんだと思う。
先輩の問いに答えられない僕に先輩は「ふっ」と鼻で笑う。
「アカリくん、僕はいつでも君を番にする準備ができているからね」
そう言うと、先輩は校舎に歩いて行った。
「べぇー」と舌を出し嫌そうな顔をするアカリちゃん。
そんな顔も可愛いのに、僕はいつも顔が曇ってしまう。
「ヒーロ、そんな顔しない」
ニコッと笑うアカリちゃん。
「ヒロは僕の大好きな許嫁なんだから」
「さっ行こう」と手を引くアカリちゃん。
そう。
アカリちゃんは僕の許嫁だ。
__________________
次回は18時更新予定です。
「ヒーロー!おっはよー!」
中から飛び出してきた人が、僕に体当たりするように抱きついてきた。
「あ、アカリちゃん、おはよーーぅっ…」
勢い良すぎる体当たりに息が詰まったけど頑張って踏ん張る。
「今日のヒロも大好き!」
そんな踏ん張った僕の眼鏡をずらし左目蓋にチュッとちゅーをしたのは、僕の幼なじみのアカリちゃん。
「さっ、学校行こうー」
アカリちゃんは僕と手をぎゅっと握り歩き出す。
引っ張られ2、3歩よろけつつなんとか隣に並び、アカリちゃんの手を握り返す。
「うん」
「えっへへぇ~」
これが、学校まで徒歩15分のいつもの日課だ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
棗燈(ナツメ アカリ)ちゃんは167cmの細身でオメガ性の、高校2年生の男の子。
アカリちゃんはすごく可愛くて、特に笑顔は女の子でも敵わない。
花の蜜ような甘い香りがするフェロモンはアルファ性だけでなくベータ性をも惹きつける。
オメガ性は頭脳・体力共にアルファ・ベータに劣ると言われているけど、アカリちゃんは学年トップ3に入るほど勉強ができて、運動神経も抜群。
そんなアカリちゃんと幼なじみの僕は七月緋色(ナナツキ ヒロ)。
アカリちゃんと同じ高校2年生。
アルファ性なのに164cmと伸び悩み中で、見た目も際立った特徴もない普通の男の子。
しかも分厚い黒縁眼鏡とボリュームのある前髪のせいでもっさり感が否めないから、「アルファです」と言っても十人中十人に疑われる。
見た目だけでなく、勉強も普通、運動神経なんてちょっと悪いくらいだから、それも疑われる原因なんだけど。
「ヒロは今日もいい匂いだね」
僕の首に顔を寄せてクンクン匂いを嗅ぐアカリちゃんに耳が熱くなる。
アカリちゃんは鼻が利く。
お母さんの一族である如月家のオメガの特性らしく、どんな微かな香りも嗅ぎ取ることができるらしい。
「今日もヒロの耳真っ赤、あははっ」
蕩けるような笑顔を僕だけに向けるアカリちゃんに、顔まで真っ赤になる。
「ヒロ、ボクはどう」
「うん、今日もいい匂いだよ、アカリちゃん」
「でしょー!だって、ヒロのための匂いだもん」
僕の鼻先に首を寄せて匂いを嗅がせてくるアカリちゃんに僕はいつもドキドキする。
誰の目も気にすることなくイチャイチャしてくるアカリちゃんとの15分はあっという間だ。
「棗くん、おはよう」
「アカリくん、おはよう」
「ナツくん、おはよー」
校門付近まで行くと、色んなところから声が掛かる。
それはすべてアカリちゃんに向けてのものだ。
アカリちゃんは「おっはよー」と手をヒラヒラしながら挨拶を返す。
アカリちゃん以外の人にとって、僕はいつも透明人間だ。
「アカリくん、おはよう」
「一城先輩、おはよーございます」
昇降口で声をかけてきたのは、3年の一城可那抖(イチジョウ カナト)先輩。
去年の冬に僕たちの学校に編入してきた先輩は、大手電機メーカー"一城電気"の御曹司様だ。
しかも、アルファ性の先輩はモデルの様なルックスで勉強も運動もできて、アルファの見本のように全てを持ち合わせている。
「アカリくん、今日も素敵な香りだね」
「これはヒロのものなので嗅がないで下さい」
アカリちゃんは匂いを嗅ぎに近寄ってきた先輩から身体を引きながら冷たく言い放ち、僕の後ろに立つ。
その首にはネックプロテクターが巻かれている。
このプロテクターは僕のお父さんが開発したもので、巻くことでオメガのフェロモンをかなり抑えることができる。
それでも強いアルファにはこんな風に嗅ぎ付けられてしまうらしい。
「そのヒロくんは、彼の匂い、本当に判るのかな?」
一城先輩の言葉にビクッと肩が跳ねる。
実は僕にはアカリちゃんの匂いがよく分からない。
ネックプロテクターのせいもあるのだけど、僕にはアカリちゃんだけでなくオメガの匂いが分からない。
"花のような甘い香り"なんて、周りが言ってたセリフだ。
だから、僕が"いい匂い"というアカリちゃんの匂いは、アカリちゃんのフェロモンじゃなくアカリちゃんのきている服の柔軟剤の匂いなんだと思う。
先輩の問いに答えられない僕に先輩は「ふっ」と鼻で笑う。
「アカリくん、僕はいつでも君を番にする準備ができているからね」
そう言うと、先輩は校舎に歩いて行った。
「べぇー」と舌を出し嫌そうな顔をするアカリちゃん。
そんな顔も可愛いのに、僕はいつも顔が曇ってしまう。
「ヒーロ、そんな顔しない」
ニコッと笑うアカリちゃん。
「ヒロは僕の大好きな許嫁なんだから」
「さっ行こう」と手を引くアカリちゃん。
そう。
アカリちゃんは僕の許嫁だ。
__________________
次回は18時更新予定です。
39
あなたにおすすめの小説
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる