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幼なじみで許嫁
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僕はインターホンを押すため手を伸ばそうとしたが、その前にドアが開いた。
「ヒーロー!おっはよー!」
中から飛び出してきた人が、僕に体当たりするように抱きついてきた。
「あ、アカリちゃん、おはよーーぅっ…」
勢い良すぎる体当たりに息が詰まったけど頑張って踏ん張る。
「今日のヒロも大好き!」
そんな踏ん張った僕の眼鏡をずらし左目蓋にチュッとちゅーをしたのは、僕の幼なじみのアカリちゃん。
「さっ、学校行こうー」
アカリちゃんは僕と手をぎゅっと握り歩き出す。
引っ張られ2、3歩よろけつつなんとか隣に並び、アカリちゃんの手を握り返す。
「うん」
「えっへへぇ~」
これが、学校まで徒歩15分のいつもの日課だ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
棗燈(ナツメ アカリ)ちゃんは167cmの細身でオメガ性の、高校2年生の男の子。
アカリちゃんはすごく可愛くて、特に笑顔は女の子でも敵わない。
花の蜜ような甘い香りがするフェロモンはアルファ性だけでなくベータ性をも惹きつける。
オメガ性は頭脳・体力共にアルファ・ベータに劣ると言われているけど、アカリちゃんは学年トップ3に入るほど勉強ができて、運動神経も抜群。
そんなアカリちゃんと幼なじみの僕は七月緋色(ナナツキ ヒロ)。
アカリちゃんと同じ高校2年生。
アルファ性なのに164cmと伸び悩み中で、見た目も際立った特徴もない普通の男の子。
しかも分厚い黒縁眼鏡とボリュームのある前髪のせいでもっさり感が否めないから、「アルファです」と言っても十人中十人に疑われる。
見た目だけでなく、勉強も普通、運動神経なんてちょっと悪いくらいだから、それも疑われる原因なんだけど。
「ヒロは今日もいい匂いだね」
僕の首に顔を寄せてクンクン匂いを嗅ぐアカリちゃんに耳が熱くなる。
アカリちゃんは鼻が利く。
お母さんの一族である如月家のオメガの特性らしく、どんな微かな香りも嗅ぎ取ることができるらしい。
「今日もヒロの耳真っ赤、あははっ」
蕩けるような笑顔を僕だけに向けるアカリちゃんに、顔まで真っ赤になる。
「ヒロ、ボクはどう」
「うん、今日もいい匂いだよ、アカリちゃん」
「でしょー!だって、ヒロのための匂いだもん」
僕の鼻先に首を寄せて匂いを嗅がせてくるアカリちゃんに僕はいつもドキドキする。
誰の目も気にすることなくイチャイチャしてくるアカリちゃんとの15分はあっという間だ。
「棗くん、おはよう」
「アカリくん、おはよう」
「ナツくん、おはよー」
校門付近まで行くと、色んなところから声が掛かる。
それはすべてアカリちゃんに向けてのものだ。
アカリちゃんは「おっはよー」と手をヒラヒラしながら挨拶を返す。
アカリちゃん以外の人にとって、僕はいつも透明人間だ。
「アカリくん、おはよう」
「一城先輩、おはよーございます」
昇降口で声をかけてきたのは、3年の一城可那抖(イチジョウ カナト)先輩。
去年の冬に僕たちの学校に編入してきた先輩は、大手電機メーカー"一城電気"の御曹司様だ。
しかも、アルファ性の先輩はモデルの様なルックスで勉強も運動もできて、アルファの見本のように全てを持ち合わせている。
「アカリくん、今日も素敵な香りだね」
「これはヒロのものなので嗅がないで下さい」
アカリちゃんは匂いを嗅ぎに近寄ってきた先輩から身体を引きながら冷たく言い放ち、僕の後ろに立つ。
その首にはネックプロテクターが巻かれている。
このプロテクターは僕のお父さんが開発したもので、巻くことでオメガのフェロモンをかなり抑えることができる。
それでも強いアルファにはこんな風に嗅ぎ付けられてしまうらしい。
「そのヒロくんは、彼の匂い、本当に判るのかな?」
一城先輩の言葉にビクッと肩が跳ねる。
実は僕にはアカリちゃんの匂いがよく分からない。
ネックプロテクターのせいもあるのだけど、僕にはアカリちゃんだけでなくオメガの匂いが分からない。
"花のような甘い香り"なんて、周りが言ってたセリフだ。
だから、僕が"いい匂い"というアカリちゃんの匂いは、アカリちゃんのフェロモンじゃなくアカリちゃんのきている服の柔軟剤の匂いなんだと思う。
先輩の問いに答えられない僕に先輩は「ふっ」と鼻で笑う。
「アカリくん、僕はいつでも君を番にする準備ができているからね」
そう言うと、先輩は校舎に歩いて行った。
「べぇー」と舌を出し嫌そうな顔をするアカリちゃん。
そんな顔も可愛いのに、僕はいつも顔が曇ってしまう。
「ヒーロ、そんな顔しない」
ニコッと笑うアカリちゃん。
「ヒロは僕の大好きな許嫁なんだから」
「さっ行こう」と手を引くアカリちゃん。
そう。
アカリちゃんは僕の許嫁だ。
__________________
次回は18時更新予定です。
「ヒーロー!おっはよー!」
中から飛び出してきた人が、僕に体当たりするように抱きついてきた。
「あ、アカリちゃん、おはよーーぅっ…」
勢い良すぎる体当たりに息が詰まったけど頑張って踏ん張る。
「今日のヒロも大好き!」
そんな踏ん張った僕の眼鏡をずらし左目蓋にチュッとちゅーをしたのは、僕の幼なじみのアカリちゃん。
「さっ、学校行こうー」
アカリちゃんは僕と手をぎゅっと握り歩き出す。
引っ張られ2、3歩よろけつつなんとか隣に並び、アカリちゃんの手を握り返す。
「うん」
「えっへへぇ~」
これが、学校まで徒歩15分のいつもの日課だ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
棗燈(ナツメ アカリ)ちゃんは167cmの細身でオメガ性の、高校2年生の男の子。
アカリちゃんはすごく可愛くて、特に笑顔は女の子でも敵わない。
花の蜜ような甘い香りがするフェロモンはアルファ性だけでなくベータ性をも惹きつける。
オメガ性は頭脳・体力共にアルファ・ベータに劣ると言われているけど、アカリちゃんは学年トップ3に入るほど勉強ができて、運動神経も抜群。
そんなアカリちゃんと幼なじみの僕は七月緋色(ナナツキ ヒロ)。
アカリちゃんと同じ高校2年生。
アルファ性なのに164cmと伸び悩み中で、見た目も際立った特徴もない普通の男の子。
しかも分厚い黒縁眼鏡とボリュームのある前髪のせいでもっさり感が否めないから、「アルファです」と言っても十人中十人に疑われる。
見た目だけでなく、勉強も普通、運動神経なんてちょっと悪いくらいだから、それも疑われる原因なんだけど。
「ヒロは今日もいい匂いだね」
僕の首に顔を寄せてクンクン匂いを嗅ぐアカリちゃんに耳が熱くなる。
アカリちゃんは鼻が利く。
お母さんの一族である如月家のオメガの特性らしく、どんな微かな香りも嗅ぎ取ることができるらしい。
「今日もヒロの耳真っ赤、あははっ」
蕩けるような笑顔を僕だけに向けるアカリちゃんに、顔まで真っ赤になる。
「ヒロ、ボクはどう」
「うん、今日もいい匂いだよ、アカリちゃん」
「でしょー!だって、ヒロのための匂いだもん」
僕の鼻先に首を寄せて匂いを嗅がせてくるアカリちゃんに僕はいつもドキドキする。
誰の目も気にすることなくイチャイチャしてくるアカリちゃんとの15分はあっという間だ。
「棗くん、おはよう」
「アカリくん、おはよう」
「ナツくん、おはよー」
校門付近まで行くと、色んなところから声が掛かる。
それはすべてアカリちゃんに向けてのものだ。
アカリちゃんは「おっはよー」と手をヒラヒラしながら挨拶を返す。
アカリちゃん以外の人にとって、僕はいつも透明人間だ。
「アカリくん、おはよう」
「一城先輩、おはよーございます」
昇降口で声をかけてきたのは、3年の一城可那抖(イチジョウ カナト)先輩。
去年の冬に僕たちの学校に編入してきた先輩は、大手電機メーカー"一城電気"の御曹司様だ。
しかも、アルファ性の先輩はモデルの様なルックスで勉強も運動もできて、アルファの見本のように全てを持ち合わせている。
「アカリくん、今日も素敵な香りだね」
「これはヒロのものなので嗅がないで下さい」
アカリちゃんは匂いを嗅ぎに近寄ってきた先輩から身体を引きながら冷たく言い放ち、僕の後ろに立つ。
その首にはネックプロテクターが巻かれている。
このプロテクターは僕のお父さんが開発したもので、巻くことでオメガのフェロモンをかなり抑えることができる。
それでも強いアルファにはこんな風に嗅ぎ付けられてしまうらしい。
「そのヒロくんは、彼の匂い、本当に判るのかな?」
一城先輩の言葉にビクッと肩が跳ねる。
実は僕にはアカリちゃんの匂いがよく分からない。
ネックプロテクターのせいもあるのだけど、僕にはアカリちゃんだけでなくオメガの匂いが分からない。
"花のような甘い香り"なんて、周りが言ってたセリフだ。
だから、僕が"いい匂い"というアカリちゃんの匂いは、アカリちゃんのフェロモンじゃなくアカリちゃんのきている服の柔軟剤の匂いなんだと思う。
先輩の問いに答えられない僕に先輩は「ふっ」と鼻で笑う。
「アカリくん、僕はいつでも君を番にする準備ができているからね」
そう言うと、先輩は校舎に歩いて行った。
「べぇー」と舌を出し嫌そうな顔をするアカリちゃん。
そんな顔も可愛いのに、僕はいつも顔が曇ってしまう。
「ヒーロ、そんな顔しない」
ニコッと笑うアカリちゃん。
「ヒロは僕の大好きな許嫁なんだから」
「さっ行こう」と手を引くアカリちゃん。
そう。
アカリちゃんは僕の許嫁だ。
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次回は18時更新予定です。
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