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番外編/後日談
後日談:大人たちの祝宴
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「「かんぱーい」」
ガチンッと派手な音を立ててグラスをぶつけたが、幸いにも割れることはなかった。
「さすがに今回は心臓に悪かったな」
「何があったんだ?」
「まさかのヒロのお昼寝」
「うっそーホントにー?」
「この1週間ほとんど眠れてなかったみたい。そのツケが今日来たのよ。アレにはちょっと焦ったわ…」
「ふふふっ、でもなんとか間に合って良かったわ。ねっ、蒼くん」
「そうだね」
乾杯からビール、ワイン、日本酒、ウィスキーと各々の好きな酒を楽しむ4人は、やっと纏まった我が子たちに笑みが絶えない。
蒼はグラスに口をつけかけ、思い出したように問いかける。
「なあ透」
「何だ?」
「もし…もしも、アカリの発情期が終わってない状態で一城可那斗に噛まれてたらどうなってた?」
「うーん。どうだろう?たぶん、あの一回では番にはならないと思う。先にヒロが噛んでいたし。ただ、赤ん坊のヒロの噛み跡は仮契約くらいの効力しかないから次の発情期にもう一度噛まれたら判らない……ってとこかな。あくまで推測だが」
「ヒロくんがレア・アルファで良かったー。あんなくっさい息子ができると思ったらゾッとしちゃった」
「本当、大事なアカリちゃんが他の野郎に取られなくて良かったわー」
貴美と百合はカチンとまた乾杯する。
「一城可那斗の弟たちはどうしてる?」
「ウチのマンションで元気にしてるわよー。あの家から離して正解だったわ。未那斗くんも凪沙くんもよく笑うようになったの」
透の問いに百合が嬉しそうに答えた。
「アルファの僕はしばらく警戒されたけどね」
肩を竦ませながら蒼はワインを飲み干す。
ははははっと笑いながら透は手に取ったボトルの中身を蒼のグラスに注いだ。
「そういえば、百合ちゃんのお兄さんとこの結季くん。あの子はどうしてるの?」
「結ちゃんね。年始に会ったけど元気にしてたわ。受験生だからピリピリしてたけど、兄さんと楓くんが家庭教師してるのだから志望校には余裕で合格できるはずよ。……でもねぇ…」
「……でも?」
「フェロモンが少し出てたの……たぶん、結ちゃんのオメガが目覚め始めてる」
「彼の記憶は?」
透の問いに百合はフルフルと頭を横に振る。
「このまま思い出さない方が幸せなんだと思う……」
「でも、結季くんのオメガが完全に目覚めてしまったらあの一族に見つかるのも時間の問題だよね」
「だから、見つかる前に番を得ることができれば……なんだけど、結ちゃん、自分がベータだと思って育っちゃったから難しいのよねぇ」
百合はグラスに残っていた日本酒を飲み干す。
それに合わせて、貴美が空いたグラスに日本酒を注ぎ入れる。
「オメガとして覚醒したらどうするの?」
「様子見かな。でもフェロモンがあと少し強く出るようになったらすぐ転校になるかな。転校先はもう決めてて、すでに根回しは終わってるって兄さん言ってたし」
「なんか可哀想ね。志望校合格のために必死に勉強してるんでしょ」
「これだけは仕方がないかな。結ちゃんをあの家から守ることがお祖父様の意向だから」
そう言うと百合はグラスに並々と注がれた日本酒を一気に煽った。
「彼の項にも噛み跡があるんだよね?」
「うん、だいぶ薄くなってるけど」
「相手ってまだ分からないの?」
「結ちゃんの記憶が戻れば分かるのかもしれないけど…」
「なあ透。彼の項を噛んだのレア・アルファの可能性はないのかな?」
「ああ、それは俺も思った。可能性はゼロではない……が、断言はできない」
「知り合いに分かる人はいないの?」
「……いる…いるが、できればこの件には関わりたくない」
「それって……アメリカに留学中に出会ったって言ってた人?」
「ああ、たぶん、あの男はレア・アフルァだ。そして俺がレア・アルファであることに気がついてる………そう遠くない未来、ヒロにも接触してくるはずだ」
スラックスの上から膝を強く掴む透に貴美が手を伸ばすとその手を透が掴む。
一気に重苦しくなった空気に、誰も言葉が出てこない。
「番を得てレア・アルファとして完全に覚醒したヒロにとってはこれからの方が大変かもしれないけど……アカリという番を得たから、何が起きても大丈夫だよ」
「なにせウチの息子は一途で最強ですから~」
重苦しい空気を打ち破るように蒼と百合が言葉を発する。
「…透…」
「そうだな。今考えても仕方がない。なにせ今日は最高の日なんだから」
重苦しい空気にした張本人が続ける。
「もう一度、乾杯しよう」
「「「「乾杯」」」」
4人は静かにグラスを当てた。
__________________
ビール:貴美
ワイン:蒼
日本酒:百合
ウィスキー:透
ガチンッと派手な音を立ててグラスをぶつけたが、幸いにも割れることはなかった。
「さすがに今回は心臓に悪かったな」
「何があったんだ?」
「まさかのヒロのお昼寝」
「うっそーホントにー?」
「この1週間ほとんど眠れてなかったみたい。そのツケが今日来たのよ。アレにはちょっと焦ったわ…」
「ふふふっ、でもなんとか間に合って良かったわ。ねっ、蒼くん」
「そうだね」
乾杯からビール、ワイン、日本酒、ウィスキーと各々の好きな酒を楽しむ4人は、やっと纏まった我が子たちに笑みが絶えない。
蒼はグラスに口をつけかけ、思い出したように問いかける。
「なあ透」
「何だ?」
「もし…もしも、アカリの発情期が終わってない状態で一城可那斗に噛まれてたらどうなってた?」
「うーん。どうだろう?たぶん、あの一回では番にはならないと思う。先にヒロが噛んでいたし。ただ、赤ん坊のヒロの噛み跡は仮契約くらいの効力しかないから次の発情期にもう一度噛まれたら判らない……ってとこかな。あくまで推測だが」
「ヒロくんがレア・アルファで良かったー。あんなくっさい息子ができると思ったらゾッとしちゃった」
「本当、大事なアカリちゃんが他の野郎に取られなくて良かったわー」
貴美と百合はカチンとまた乾杯する。
「一城可那斗の弟たちはどうしてる?」
「ウチのマンションで元気にしてるわよー。あの家から離して正解だったわ。未那斗くんも凪沙くんもよく笑うようになったの」
透の問いに百合が嬉しそうに答えた。
「アルファの僕はしばらく警戒されたけどね」
肩を竦ませながら蒼はワインを飲み干す。
ははははっと笑いながら透は手に取ったボトルの中身を蒼のグラスに注いだ。
「そういえば、百合ちゃんのお兄さんとこの結季くん。あの子はどうしてるの?」
「結ちゃんね。年始に会ったけど元気にしてたわ。受験生だからピリピリしてたけど、兄さんと楓くんが家庭教師してるのだから志望校には余裕で合格できるはずよ。……でもねぇ…」
「……でも?」
「フェロモンが少し出てたの……たぶん、結ちゃんのオメガが目覚め始めてる」
「彼の記憶は?」
透の問いに百合はフルフルと頭を横に振る。
「このまま思い出さない方が幸せなんだと思う……」
「でも、結季くんのオメガが完全に目覚めてしまったらあの一族に見つかるのも時間の問題だよね」
「だから、見つかる前に番を得ることができれば……なんだけど、結ちゃん、自分がベータだと思って育っちゃったから難しいのよねぇ」
百合はグラスに残っていた日本酒を飲み干す。
それに合わせて、貴美が空いたグラスに日本酒を注ぎ入れる。
「オメガとして覚醒したらどうするの?」
「様子見かな。でもフェロモンがあと少し強く出るようになったらすぐ転校になるかな。転校先はもう決めてて、すでに根回しは終わってるって兄さん言ってたし」
「なんか可哀想ね。志望校合格のために必死に勉強してるんでしょ」
「これだけは仕方がないかな。結ちゃんをあの家から守ることがお祖父様の意向だから」
そう言うと百合はグラスに並々と注がれた日本酒を一気に煽った。
「彼の項にも噛み跡があるんだよね?」
「うん、だいぶ薄くなってるけど」
「相手ってまだ分からないの?」
「結ちゃんの記憶が戻れば分かるのかもしれないけど…」
「なあ透。彼の項を噛んだのレア・アルファの可能性はないのかな?」
「ああ、それは俺も思った。可能性はゼロではない……が、断言はできない」
「知り合いに分かる人はいないの?」
「……いる…いるが、できればこの件には関わりたくない」
「それって……アメリカに留学中に出会ったって言ってた人?」
「ああ、たぶん、あの男はレア・アフルァだ。そして俺がレア・アルファであることに気がついてる………そう遠くない未来、ヒロにも接触してくるはずだ」
スラックスの上から膝を強く掴む透に貴美が手を伸ばすとその手を透が掴む。
一気に重苦しくなった空気に、誰も言葉が出てこない。
「番を得てレア・アルファとして完全に覚醒したヒロにとってはこれからの方が大変かもしれないけど……アカリという番を得たから、何が起きても大丈夫だよ」
「なにせウチの息子は一途で最強ですから~」
重苦しい空気を打ち破るように蒼と百合が言葉を発する。
「…透…」
「そうだな。今考えても仕方がない。なにせ今日は最高の日なんだから」
重苦しい空気にした張本人が続ける。
「もう一度、乾杯しよう」
「「「「乾杯」」」」
4人は静かにグラスを当てた。
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ビール:貴美
ワイン:蒼
日本酒:百合
ウィスキー:透
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