姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

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第七話 アルブヘイブン

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 ドワーフの持つ技術で発展遂げてきた国――アルブヘイブン。昼夜問わず、永遠に金属音が鳴り響き、その音は風景に溶けていく。
 ドワーフの国ではあるが、街を闊歩する殆どの種族はドワーフではなかった。
 というのも、ドワーフはその職人気質からか、自身の工房や、鉱山に籠る事が多いからだとか……。
 そのため、ドワーフの国で初めに見かける種族は大凡、人間であり、それも商人である。

 カリーナ達は、飛行船から地上へ降りた。

「ふあーー」
 カリーナは大きくその背筋を伸ばした。

「これからどこに向かうんだ?」
 ブルーがカリーナに尋ねる。

「トゥオブ商会よ、依頼内容の確認をするわ」
 アリーナはブルーの質問に笑顔で答えた。
 
 カリーナ達はトゥオブ商会へ向かうこととなった。
 絶えず響く金槌の音に、ブルーは耳を塞いでいる。

「気分悪くなるぜ、この音」
 ブルーは顔を顰めて舌を出す。とても気分が悪そうだった。

「何だ、ブルー。そのでかい耳は飾りか?」
 ブレイブは両耳を両手で塞ぎ込むブルーの真似をする。

「飾りじゃねぇから気持ち悪くなるんだよ、耳の奥まで響いてきやがる」
 ブルーは、ブレイブのそんな揶揄いに反応するのも面倒臭くなっていた。

「ここで吐くのだけは、よしてくれよ」
 商人が慌ただしく行き来するこの道で、吐瀉物が商品にかかるようなことになれば、大惨事になる。
 ブレイブはそんなブルーの嘔吐による被害を心配していた。

「せめてそこは、俺の心配をしてくれ」
 消え入りそうなか細い声でブルーは答えた。

 ◆◇◆◇

「着いたわ、恐らくここよ」
 カリーナは、共和国で出会った商人から貰った地図を照らし合わせる。

 三階建の建物を構えるトゥオブ商会は、飛行船の発着場の目の前を通る大通りに面していた。

 カリーナは扉を開けて中に入ると、受付の女性に、商人から受け取った依頼書とそれに押されたハンコを見せて、用件を伝える。
 
「商会長のバラガさんに会いにきました」

「バラガさんですね、分かりました。お呼びしますので、応接室でお待ち下さい」
 カリーナは応接室に案内される。

「あの、私の仲間も一緒で良いですか?」
 カリーナは、扉の隙間から覗くブレイブ達を指差した。

「え、ええ。構いませんよ」
 受付の女性は苦笑いしながらも許可を出してくれた。

 応接室は、真ん中に巨大な長机が、そしていくつもの椅子が並んで置いてあるだけの部屋だった。
 その部屋に長机の片側に並んで座って、バラガを待った。

「どうする?こんな奴が来たら?」
 ブルーが口を尖らせて、変顔をする。

「そんな奴が来たら、そりゃ傑作だな」
 ブレイブは机を叩いて笑う。

「見ろよ、ブルーの顔。こりゃ――」

「こりゃ、何だって?」
 応接室の扉が開き、多分、バラガであろう人物が訝しむ表情で立っていた。

「こりゃあ……あれだ。そう、あれだ」
 ブレイブは咄嗟に誤魔化そうとする。

「まぁ良い。お前らと盗賊の違いは、法を犯してるか犯してないかぐらいだ。初めから、その辺りは期待してない。依頼については期待しているが……」
 白い髭を蓄えたバラガはゆっくりと席に座った。

「あーそう……それはどうも」
 ブレイブは苦笑いをした。

「なぁ今のって褒めてるのか?」
 ブレイブは小声でブルーに聞く。

「さぁな」

「それで……依頼についてだが。次の運送までに盗賊団の討伐を頼みたい……可能か?」
 バラガは指を組んだ。

「良いわよ、壊滅させるわ」
 カリーナは屈託のない笑顔で応える。

「そうか、それは心強い。では頼んだぞ」

 バタン。
 バラガは部屋から出ていった。
 
「え、終わり?」
 余りにもすぐに終わった話をブルーは不思議に思った。

「終わりよ、殆どの話は既に共和国でしてあるもの。今日は単なる顔合わせよ」
 カリーナはブルーの疑問に答えた。

 ◆◇◆◇

 カリーナ達は商会の建物を出た。

「それで、どうやって盗賊を探すんだ?」
 ブレイブはカリーナに尋ねる。

 盗賊団の居場所を探すとは言うものの、この人混みでは困難を極めた。

「聞き込みでもしましょうか」
 カリーナはとりあえずの案を提案した。

「今日は、とりあえず聞き込みをしましょう。それで、宿屋に帰ってから情報の整理ということで」
 アイは話をまとめた。

「分かった、行こうぜ。ブルー」
 ブレイブはブルーを誘う。

「あいよ」
 ブルーはブレイブの誘いに乗った。

「それじゃあ、私たちは三人で」

 手を振って別れると、二人は人混みの中に消えていった。

 ◆◇◆◇

 日がとっくに暮れた宿屋の一室に、全員が集まっていた。

「情報を整理しましょうか」
 カリーナは話を切り出した。

「まず、俺たちからいいか?俺たちはドワーフの職人達に聞き込みをしたんだが、何も情報は得られなかった。あの人らは、篭りっぱなしみたいでな。正直、無駄足だったよ」
 ブレイブは肩をすくめた。

「私たちは、商人達に聞き込みをしたわ。有力な情報と言えば、商人が行商に行く時のルートを、盗賊達は事前に知っているかのように待ち伏せしているって事だね」
 カリーナはそう言うと、街の地図を広げた。

「この国にあるトゥオブ商会と行商ルートの全てがこれよ」
 商会の位置に印がつけられ、行商ルートが黒くなぞられている地図を見せた。

「これだけの数のルートを事前に把握か……」
 地図に示されたルートは複雑に重なり合い、地図を黒く染め上げるほどであった。

「十中八九、商会側に協力者がいるな。でないと、これを事前に把握するのは無理だ」
 ブルーは地図を見て考察する。

「問題はどうやって協力者を見つけるか、ですよね」
 アイは腕を組んで考える。

「案外、すぐに見つかるかもよ」
 ブレイブは不適に笑みを浮かべた。

 その言葉にアイは首を傾げるが、真意に気づいたサラマンダーは、刀の鞘に指をかけた。
 

 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 

 
 
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