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【出国】
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てっきり処刑されるものとばかり思っていたが、意外なことにその処罰は降りなかったらしい。
曲がりなりにも今まで土地を守ってきた聖女に対する慈悲――王宮もよく分からぬところで情を見せる。
ルイーン、彼女の下卑高慢に歪んではいるが悔しさにも満ちたあの顔で見送られるのは、痛快であったな。
「イルス、またな」
友には然るべき言葉をかけたのだが。
「……いや、ノア、これっきりだ。もう、僕たちには関わるな。いいね……?」
友にとっての然るべき言葉をかけられた私は……さすがに何も言えなかった。
少しだけ……悲しかった。
「それで、エルーナ。君は、私なぞに付いてきてよかったのか?」
隣を歩く小さな背を見下ろすと、そこには、それこそ聖女のように澄んだ誠実の瞳があった。
「私は、どこまででもノア様のお供を致します」
――まったく、私は人徳に対しあまりに過ぎた付き人を持ったものだ。
この子を不幸にしては……いけないな。
さて、ではどこへ向かおうかと考えたが、別段向かうべき場所というものもない。
土地の良さそうな場所へ、気ままに足を向けようか。
「――もう相当の距離を歩いたなぁ。今は三日目であったか」
「はい、あれから日が三度沈みました。……ふぅ、ふ――」
「おっといけない。よっと――」
「ノ、ノア様いけませんッ! 大丈夫です……!」
「いや、足を痛めてしまってはいけない。しばらくおぶわれていなさい」
「う、うぅ……。……ノア様は女性のように手足が華奢であるのに、まったく疲れを見せないのですね……」
「生まれてこのかた、疲れというものは感じたことがないなぁ」
「……あの国はどうなるのでしょう?」
「なるようになるのさ」
道中はエルーナのおかげで退屈しなかった。
常人であるエルーナの体調に気を向けながら旅を続ける。私はそういったところに鈍いところがあるから、それは特に強く意識しなければならぬことだ……。
そして三十八日目の朝に、私たちはその地に辿り着いた。
曲がりなりにも今まで土地を守ってきた聖女に対する慈悲――王宮もよく分からぬところで情を見せる。
ルイーン、彼女の下卑高慢に歪んではいるが悔しさにも満ちたあの顔で見送られるのは、痛快であったな。
「イルス、またな」
友には然るべき言葉をかけたのだが。
「……いや、ノア、これっきりだ。もう、僕たちには関わるな。いいね……?」
友にとっての然るべき言葉をかけられた私は……さすがに何も言えなかった。
少しだけ……悲しかった。
「それで、エルーナ。君は、私なぞに付いてきてよかったのか?」
隣を歩く小さな背を見下ろすと、そこには、それこそ聖女のように澄んだ誠実の瞳があった。
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――まったく、私は人徳に対しあまりに過ぎた付き人を持ったものだ。
この子を不幸にしては……いけないな。
さて、ではどこへ向かおうかと考えたが、別段向かうべき場所というものもない。
土地の良さそうな場所へ、気ままに足を向けようか。
「――もう相当の距離を歩いたなぁ。今は三日目であったか」
「はい、あれから日が三度沈みました。……ふぅ、ふ――」
「おっといけない。よっと――」
「ノ、ノア様いけませんッ! 大丈夫です……!」
「いや、足を痛めてしまってはいけない。しばらくおぶわれていなさい」
「う、うぅ……。……ノア様は女性のように手足が華奢であるのに、まったく疲れを見せないのですね……」
「生まれてこのかた、疲れというものは感じたことがないなぁ」
「……あの国はどうなるのでしょう?」
「なるようになるのさ」
道中はエルーナのおかげで退屈しなかった。
常人であるエルーナの体調に気を向けながら旅を続ける。私はそういったところに鈍いところがあるから、それは特に強く意識しなければならぬことだ……。
そして三十八日目の朝に、私たちはその地に辿り着いた。
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