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■第一章 時代の荒波
第六話 心なき者
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ウッドゴーレム『一式』が前傾姿勢になり、大地を蹴る。
ドゥン! と大地がクレーターを描いて大きくへこんだが、後で直さなきゃだな。ここは馬車が通る道路なのだから。
脚力を生み出す力は、ビッグカラムシという植物を何本も縒り合わせ魔石の力で反応させたものだ。その最大パワーは38000馬力、ドラゴンにも匹敵する。
スペックにこだわりたい僕としては、もっと繊維を増やして馬力を上げたいのだけれど、そうすると今度はウッドゴーレムの骨格を支える外殻が持たないというジレンマに陥ってしまう。
どこかに『リグナムバイタ』よりも硬く良い素材はないものか。『リグナムバイタ』は非常に重いため、持ち運びできるよう軽量化すると、ひょろい姿にするしかなく、それも強度を下げる一因となっている。
「は、速いっ……!」
初めてその動きを目にした騎士ギルが驚く。彼は悪竜フールババを倒した英雄、ドラゴンバスターである。その彼が驚くとなると、フールババはそれほど素早くなかったのかもしれない。飛竜系は体が軽く動き速いけど、アースドラゴンは飛べず、動きも遅いからね。
ウッドゴーレム『一式』が右腕の上腕部を高速回転させ、ドリルモードでパンチを繰り出した。
毎分72万回転の高速回転から生み出す威力は金剛石でも軽々と打ち砕く。
「GUAAAAA――――!」
断末魔の叫びを上げたムーンベアは、見事に後ろに吹っ飛び、数十本の木をなぎ倒してようやく止まった。
「敵性ヲ排除シマシタ」
「「「 やった!!! 」」」
僕らは抱き合って歓声を上げる。勝てるぞ。ムーンベアを倒せるんだ!
「い、いやいやいや、一撃!? 一撃でアレを倒せるのですか!」
一人だけギル君が狼狽えているが、ま、いずれ馴れてくれるだろう。
「当然だろう。神匠が造ったゴーレムだぞ? ドラゴンだって倒せるぜ、なぁ、アッシュ! ガハハ」
アイゼンさんがバシバシと僕の肩を嬉しそうに叩いてくるが、ちょっと痛いって。
「いやー、ドラゴンは無理だから」
炎を吐くドラゴンにはウッドゴーレムは極めて弱い。難燃性の生木にするという手もあるのだが、生木は時間が経つにつれて歪みが出たりするので、やっぱり使いたくはない。
「これほどとは……ですが、それなら私が配下になる意味が……」
そう言って折れた剣を悲しそうに見つめたギルがうつむいてしまう。
「いいや、ギル、そんなことはないよ。ウッドゴーレムは戦闘は強いけど、他のことには使いにくいんだ。いくら全自動の自律型と言っても『心』がないからね。話が必要な時でも、知らない人はビックリして逃げちゃうし。だから人間の君は絶対に必要だし、剣はまた作ればいいさ」
「なるほど、つまり私は、組織作りや管理を担当すれば良いのですね。少し安心しました」
「なんでい、少しだけかよ。アッシュの部下はまだ少ねえんだ、オレ達は当分の間はてんてこまいの大忙しだぜ。不安を感じてるヒマなんかありゃしねえぞ!」
「はい!」
アイゼンさんが気合いを入れてくれたが、そうだな、領地経営は馴れてくるまで当分の間は忙しくなりそうだ。
「さあ、ボサッとしてないで、アンタ達、ムーンベアを解体するよ!」
料理人のマチルダさんがテキパキと指示を出し、あっという間にムーンベアは解体されてしまった。さすがに全部の肉は持って行けないので、美味しい部分だけだ。
残念ながら貴重な魔石はウッドゴーレムの一撃で粉砕されてしまい、欠片をいくつか回収できただけだが、それでも普段、僕らが目にするよりもずっと大きくて透明度が高いものが手に入った。
これでウッドゴーレムの動力に使っている魔石も交換して強化できる。
上手くムーンベアを狩って、魔石を王都まで売りに出せれば、領地も潤うに違いない。
危険な害獣も駆除できて、良い事だらけだ。
きちんと道路も平らに戻して、ここの後始末も終える。ギルには木剣を渡しておいた。材質は『リグナムバイタ』だから、新しい剣ができるまではこれで間に合うだろう。
「よし、みんな、出発だ!」
僕も新しい領地に向けて、しっかりと気合いを入れていくことにした。
ドゥン! と大地がクレーターを描いて大きくへこんだが、後で直さなきゃだな。ここは馬車が通る道路なのだから。
脚力を生み出す力は、ビッグカラムシという植物を何本も縒り合わせ魔石の力で反応させたものだ。その最大パワーは38000馬力、ドラゴンにも匹敵する。
スペックにこだわりたい僕としては、もっと繊維を増やして馬力を上げたいのだけれど、そうすると今度はウッドゴーレムの骨格を支える外殻が持たないというジレンマに陥ってしまう。
どこかに『リグナムバイタ』よりも硬く良い素材はないものか。『リグナムバイタ』は非常に重いため、持ち運びできるよう軽量化すると、ひょろい姿にするしかなく、それも強度を下げる一因となっている。
「は、速いっ……!」
初めてその動きを目にした騎士ギルが驚く。彼は悪竜フールババを倒した英雄、ドラゴンバスターである。その彼が驚くとなると、フールババはそれほど素早くなかったのかもしれない。飛竜系は体が軽く動き速いけど、アースドラゴンは飛べず、動きも遅いからね。
ウッドゴーレム『一式』が右腕の上腕部を高速回転させ、ドリルモードでパンチを繰り出した。
毎分72万回転の高速回転から生み出す威力は金剛石でも軽々と打ち砕く。
「GUAAAAA――――!」
断末魔の叫びを上げたムーンベアは、見事に後ろに吹っ飛び、数十本の木をなぎ倒してようやく止まった。
「敵性ヲ排除シマシタ」
「「「 やった!!! 」」」
僕らは抱き合って歓声を上げる。勝てるぞ。ムーンベアを倒せるんだ!
「い、いやいやいや、一撃!? 一撃でアレを倒せるのですか!」
一人だけギル君が狼狽えているが、ま、いずれ馴れてくれるだろう。
「当然だろう。神匠が造ったゴーレムだぞ? ドラゴンだって倒せるぜ、なぁ、アッシュ! ガハハ」
アイゼンさんがバシバシと僕の肩を嬉しそうに叩いてくるが、ちょっと痛いって。
「いやー、ドラゴンは無理だから」
炎を吐くドラゴンにはウッドゴーレムは極めて弱い。難燃性の生木にするという手もあるのだが、生木は時間が経つにつれて歪みが出たりするので、やっぱり使いたくはない。
「これほどとは……ですが、それなら私が配下になる意味が……」
そう言って折れた剣を悲しそうに見つめたギルがうつむいてしまう。
「いいや、ギル、そんなことはないよ。ウッドゴーレムは戦闘は強いけど、他のことには使いにくいんだ。いくら全自動の自律型と言っても『心』がないからね。話が必要な時でも、知らない人はビックリして逃げちゃうし。だから人間の君は絶対に必要だし、剣はまた作ればいいさ」
「なるほど、つまり私は、組織作りや管理を担当すれば良いのですね。少し安心しました」
「なんでい、少しだけかよ。アッシュの部下はまだ少ねえんだ、オレ達は当分の間はてんてこまいの大忙しだぜ。不安を感じてるヒマなんかありゃしねえぞ!」
「はい!」
アイゼンさんが気合いを入れてくれたが、そうだな、領地経営は馴れてくるまで当分の間は忙しくなりそうだ。
「さあ、ボサッとしてないで、アンタ達、ムーンベアを解体するよ!」
料理人のマチルダさんがテキパキと指示を出し、あっという間にムーンベアは解体されてしまった。さすがに全部の肉は持って行けないので、美味しい部分だけだ。
残念ながら貴重な魔石はウッドゴーレムの一撃で粉砕されてしまい、欠片をいくつか回収できただけだが、それでも普段、僕らが目にするよりもずっと大きくて透明度が高いものが手に入った。
これでウッドゴーレムの動力に使っている魔石も交換して強化できる。
上手くムーンベアを狩って、魔石を王都まで売りに出せれば、領地も潤うに違いない。
危険な害獣も駆除できて、良い事だらけだ。
きちんと道路も平らに戻して、ここの後始末も終える。ギルには木剣を渡しておいた。材質は『リグナムバイタ』だから、新しい剣ができるまではこれで間に合うだろう。
「よし、みんな、出発だ!」
僕も新しい領地に向けて、しっかりと気合いを入れていくことにした。
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