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■第二章 試される大地
第一話 柵作り
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家づくりは柵から始まる――。
まず敷地内の安全を確保しなければデリケートな作業である建築などできようはずがない。
「じゃ、材料を集めよう。みんな、ハードウッドの太くて真っ直ぐな成木を探してきて」
僕が言うと、みんなが一斉に眉をひそめた。
「ちょっと、アッシュ、ハードウッドって言われてもアタシ達は木の素人だから訳わかんないんだけど!」
おっとそうだった。つい、今までの癖で大工さん達の集まりかと勘違いしたが、今回はDIYだったな。
「ごめんごめん、レニア。ハードウッドという種類の木は、広葉樹、葉っぱの丸いヤツだよ。今の季節は葉が茶色くなってて、根元にカブトムシの死骸やドングリが落ちていると最高だね」
「なるほど、葉っぱが針みたいな、くねくねの木なんかもあるけど、あれじゃなくて真っ直ぐのヤツね」
「そうそう。成木というのは、大きい木のことだから。本当は板に加工した後で乾燥させて寝かせておきたいんだけど、今回は素早く完成させたいからね」
「そうね、みんなの家を早く建てなきゃだし!」
「おう。じゃ、オレが切り倒して運んでやるから、見つけたら教えてくれよな!」
ドワーフの鍛冶職人であるアイゼンさんが斧をブンブンと軽々振り回しているが、こういうときに頼もしい。
「他にも伐採と運搬はウッドゴーレムを使うから、みんなは見つけてくれるだけでいいよ。ああでも、ムーンベアが出てくると危ないから、遠くへは行かないように」
「分かったわ」「おう」
「じゃ、始めよう」
職人の集まりなのでそこはサッと散って各自が作業を開始する。
僕も斧を持って森に入ることにした。
「大きいな……」
道中でも思っていたが、ノースオーシャンの森はすべてのものが一回り大きい。
木は太々とたくましく育ち、実に加工しがいがありそうだ。
「おっ、この木がいいな」
僕はさっそく良い成木を見つけた。枝が少なく、立派に育った大木だ。
「せーの! それっ!」
周りに誰もいない安全を確認したあとで斧を振り下ろす。
「うっ!」
木に斧を当てた感触に僕はビックリした。
「な、なんだ? この木は確かに楢のはずなのに」
まるで鉄のように硬く、傷もほんのちょっとしかついてない。
ノースオーシャンの木は何か違うようだ。
「仕方ない、『一式』頼んだよ」
「了解シマシタ」
ウッドゴーレムが右腕のドリルを木に当ててガリガリと削っていく。
いくら鉄のように硬かろうと、このドリルは金剛石製だから余裕だ。
左腕のダイヤモンドカッターも使い、あっという間に板に加工してくれた。
「よし、じゃ、次は支柱だ。そっちの木を加工して持ってきてくれ」
「了解シマシタ」
ウッドゴーレムが材料を作っている間に、僕は柵の場所を決め、支柱を建てる穴を掘ることにした。
「ふう、土も硬いな……支柱を建てるにはうってつけだけど、畑は難しいか」
何か後で方法を考える必要があるだろう。だけど、今はまず柵だな。
「アッシュ、板ができたけど、どこに置けば良いの?」
「ああ、レニア、先に支柱を建てないといけないから、その辺でいいよ」
「分かった。アイゼンさんに伝えてくるわね」
「うん」
支柱を埋めた後でモルタルを周囲に流し込んで固める。
モルタルは、石灰を高温で熱して粉状にしたもので、水を混ぜて使う。
材料の石灰は、山なのに貝殻が出てくる不思議な地層から取れる。
祖父が「ここは昔、海だったんじゃよ」と微笑みながら言っていたが、本当かどうかは僕には分からない。
ともかく、これに水を混ぜて十五分もすればカチカチになるので強度も充分だろう。
注意する点は、一本の支柱につき2カ所の穴を造り、一本は斜めにして支え棒にしておくことだ。祖父がよく「人という漢字は支え合いじゃからの。一本ではすぐ倒れてしまうんじゃ」と言っていた。その不思議な文字を見ると背の低い人が一方的に支えるだけで損していると僕は思うのだけれど、まあいいか。
支柱の並びは上空から見て横一直線ではなく、わざと前後にほんの少しだけずらしてジグザグに配置し、その中間に板を挟み込むイメージだ。
(真上から見た図)
支柱 支柱
―――――――――――――――――― ←板
支柱 支柱
これだと釘はあくまで板の垂直方向のズレを固定するだけで、支柱が前後方向をがっちりと支えてくれるから、破壊されにくい。
さらに板は『羽目板』と呼ばれるものを使う。これは板幅の両端を少し削って凸と凹を造り、はめ込みだけでも板同士を固定できるようにしておく。
僕が板を支柱の間に落として、はめ込んでいるとレニアがそれを見て面白がった。
「あ、それ簡単そう! アタシもやりたい!」
ま、組み立て自体は実に簡単だ。
ただし、凸凹の寸法や厚みをしっかり造っておかないときちんとハマらなくなるし、支柱の位置にも注意を払わないといけないけど。
「じゃ、レニアに板のはめ込みは任せるよ。できあがったら釘を打つから言って。その間に僕は支柱を地面に埋めていくから」
「分かった!」
見栄えや長期的なことを考えると、釘はなるべく使わない方が良いが、相手はムーンベアという凶悪で強力なモンスターだ。
その侵入を防ぐべく、今は強度とスピードを最優先し、僕らは柵を作っていく。
まず敷地内の安全を確保しなければデリケートな作業である建築などできようはずがない。
「じゃ、材料を集めよう。みんな、ハードウッドの太くて真っ直ぐな成木を探してきて」
僕が言うと、みんなが一斉に眉をひそめた。
「ちょっと、アッシュ、ハードウッドって言われてもアタシ達は木の素人だから訳わかんないんだけど!」
おっとそうだった。つい、今までの癖で大工さん達の集まりかと勘違いしたが、今回はDIYだったな。
「ごめんごめん、レニア。ハードウッドという種類の木は、広葉樹、葉っぱの丸いヤツだよ。今の季節は葉が茶色くなってて、根元にカブトムシの死骸やドングリが落ちていると最高だね」
「なるほど、葉っぱが針みたいな、くねくねの木なんかもあるけど、あれじゃなくて真っ直ぐのヤツね」
「そうそう。成木というのは、大きい木のことだから。本当は板に加工した後で乾燥させて寝かせておきたいんだけど、今回は素早く完成させたいからね」
「そうね、みんなの家を早く建てなきゃだし!」
「おう。じゃ、オレが切り倒して運んでやるから、見つけたら教えてくれよな!」
ドワーフの鍛冶職人であるアイゼンさんが斧をブンブンと軽々振り回しているが、こういうときに頼もしい。
「他にも伐採と運搬はウッドゴーレムを使うから、みんなは見つけてくれるだけでいいよ。ああでも、ムーンベアが出てくると危ないから、遠くへは行かないように」
「分かったわ」「おう」
「じゃ、始めよう」
職人の集まりなのでそこはサッと散って各自が作業を開始する。
僕も斧を持って森に入ることにした。
「大きいな……」
道中でも思っていたが、ノースオーシャンの森はすべてのものが一回り大きい。
木は太々とたくましく育ち、実に加工しがいがありそうだ。
「おっ、この木がいいな」
僕はさっそく良い成木を見つけた。枝が少なく、立派に育った大木だ。
「せーの! それっ!」
周りに誰もいない安全を確認したあとで斧を振り下ろす。
「うっ!」
木に斧を当てた感触に僕はビックリした。
「な、なんだ? この木は確かに楢のはずなのに」
まるで鉄のように硬く、傷もほんのちょっとしかついてない。
ノースオーシャンの木は何か違うようだ。
「仕方ない、『一式』頼んだよ」
「了解シマシタ」
ウッドゴーレムが右腕のドリルを木に当ててガリガリと削っていく。
いくら鉄のように硬かろうと、このドリルは金剛石製だから余裕だ。
左腕のダイヤモンドカッターも使い、あっという間に板に加工してくれた。
「よし、じゃ、次は支柱だ。そっちの木を加工して持ってきてくれ」
「了解シマシタ」
ウッドゴーレムが材料を作っている間に、僕は柵の場所を決め、支柱を建てる穴を掘ることにした。
「ふう、土も硬いな……支柱を建てるにはうってつけだけど、畑は難しいか」
何か後で方法を考える必要があるだろう。だけど、今はまず柵だな。
「アッシュ、板ができたけど、どこに置けば良いの?」
「ああ、レニア、先に支柱を建てないといけないから、その辺でいいよ」
「分かった。アイゼンさんに伝えてくるわね」
「うん」
支柱を埋めた後でモルタルを周囲に流し込んで固める。
モルタルは、石灰を高温で熱して粉状にしたもので、水を混ぜて使う。
材料の石灰は、山なのに貝殻が出てくる不思議な地層から取れる。
祖父が「ここは昔、海だったんじゃよ」と微笑みながら言っていたが、本当かどうかは僕には分からない。
ともかく、これに水を混ぜて十五分もすればカチカチになるので強度も充分だろう。
注意する点は、一本の支柱につき2カ所の穴を造り、一本は斜めにして支え棒にしておくことだ。祖父がよく「人という漢字は支え合いじゃからの。一本ではすぐ倒れてしまうんじゃ」と言っていた。その不思議な文字を見ると背の低い人が一方的に支えるだけで損していると僕は思うのだけれど、まあいいか。
支柱の並びは上空から見て横一直線ではなく、わざと前後にほんの少しだけずらしてジグザグに配置し、その中間に板を挟み込むイメージだ。
(真上から見た図)
支柱 支柱
―――――――――――――――――― ←板
支柱 支柱
これだと釘はあくまで板の垂直方向のズレを固定するだけで、支柱が前後方向をがっちりと支えてくれるから、破壊されにくい。
さらに板は『羽目板』と呼ばれるものを使う。これは板幅の両端を少し削って凸と凹を造り、はめ込みだけでも板同士を固定できるようにしておく。
僕が板を支柱の間に落として、はめ込んでいるとレニアがそれを見て面白がった。
「あ、それ簡単そう! アタシもやりたい!」
ま、組み立て自体は実に簡単だ。
ただし、凸凹の寸法や厚みをしっかり造っておかないときちんとハマらなくなるし、支柱の位置にも注意を払わないといけないけど。
「じゃ、レニアに板のはめ込みは任せるよ。できあがったら釘を打つから言って。その間に僕は支柱を地面に埋めていくから」
「分かった!」
見栄えや長期的なことを考えると、釘はなるべく使わない方が良いが、相手はムーンベアという凶悪で強力なモンスターだ。
その侵入を防ぐべく、今は強度とスピードを最優先し、僕らは柵を作っていく。
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