お嬢様なんて、冗談じゃない!

スズキアカネ

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第4話 このワガママ令嬢め。

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 苦しかった女子高生生活がやっと終わりを告げた。
 ようやくお迎えがきたのだ。一年以上経過してるんですけど、地獄のシステムどうなってんの!?

 色んな事情を理解してくれた閻魔大王がかなり破格な待遇で転生手続きをしてくれた。そして俺の転生まであと一歩というところで、俺は引き止められていた。

「駄目なの! 皆あなたを探してる!」
「なわけ無いだろうが! ふざけんな転生するのは俺だ!!」

 やっと天に召されて、転生への道がひらけたのにお騒がせ令嬢がここまで追いかけてきやがったのだ。

 お前、やっと正しい方向に進み始めたのになんでまたやってきた! 転生待ちの亡者の行列に突っ込んできたエリカ嬢が俺を引きずり出そうとする。
 どこまで俺を生き恥地獄に引きずり降ろそうとするのかこのワガママ令嬢め! 俺はお前に恨まれることなにかしましたか!?

 しかし俺がこの華奢な令嬢に負けるわけがない。頭1個どころか1.5個分くらい背丈違うからな! 腕力では負けんぞ!
 俺の転生の順番が回ってきた。もう時間もないので、少々乱暴になるが彼女を振り払って転生の扉に突っ込もうとした。

「だめっ!」
「ギャフッ!?」

 ──なのだが寸前でタックルされて阻止された。予想していなかった攻撃に、どしゃっと地面に滑り込み着地した。
 俺は地面にキスしたまま呻いていた。亡者なのになんでここまで感触があるわけ…腕の皮膚擦りむいてるよこれ。

「あー…女の子が割り込み転生しちゃったよ…」

 呆けたような鬼の声に俺は頭が真っ白になった。

「おい、ふざけんなよ!?」

 おい、俺がお前を庇うために命落としたの知った上での行動!? マジありえねーから! 命粗末にすんな!
 死にたいっていうなら頼むから俺を巻き込むなよ! このすっとこ令嬢!!
 俺は彼女を捕まえようと転生の扉に特攻を仕掛けようとしたが、グワシッと自分よりも身体の大きな赤鬼に捕まり、罪人のように閻魔庁に連行されていったのである。


 その後、俺の意思を無視して現世にクーリングオフされた俺は病室で慎悟と再会することになる。

「うぉぉぉ! このリアルハーレム野郎久しぶりだなぁ!」
「……あー…看護師を呼ぼうな…」

 その一声ですぐに奴は、俺が戻ってきたと察したらしく、冷静にナースコールを押していた。

「ちくしょう、あのワガママ令嬢! なに悲劇のヒロインぶってんだよ! 俺のほうが悲劇だわ!!」

 俺がベッドの上で頭を掻きむしりながら悲鳴を上げていると、慎悟が生温かい視線を向けてくる。
 この野郎、この野郎! 絶対に他人事だと思ってるだろ!

「代われよぉぉぉお! もうやだァァァ!!」
「点滴刺してるんだから暴れるなよ」 
「コロシテェェ」

 ヒンヒン泣きわめく俺の肩を撫でて「落ち着け」と抑えてくる慎悟。
 お前もっと嘆き悲しめよ、俺よりエリカ嬢とのほうが付き合いなげぇんだろ。2人はどうも仲が悪かったみたいだけど、情くらいは残ってるだろうが!
 今はテメェのその冷静さが憎いぜ!!

 ちくちょうめ!
 俺、一生独身か、養子取るから! 男と恋愛とか絶対嫌、メス堕ちとか勘弁してください。発狂して死ぬわ!
 一生清い身体で生きていきます!!

 恨むなら、あの行動力の化身、二階堂エリカ嬢を恨むんだな!


■□■


 嵐は望んでなくても向こうからやってくるものだ。

 時に暴風、時に雷豪雨。女の子に憑依して、地獄のボスから「寿命まで頑張って☆」とクーリングオフされて毎日どんより生きている。
 そんな俺のもとには絶えず嵐がやってくるんだ。

「…いま、なんと?」
「…二階堂のお祖父様が、縁談を持ちかけてきたの」

 二階堂のママさんの言葉に、俺は思わず白目をむいてしまった。
 縁談って…あれ、お見合いのことだよね。相手の性別男だよね、将来結婚する相手って意味だよね。

「いやぁぁぁ! 無理っむりぃぃぃメス堕ちいやぁぁぁぁ!!」
「笑也君落ち着いて! 大丈夫、参加してくれるだけでいいの。相手には悪いけどやんわりお断りすれば済む話だから!!」

 ママさんはそう言うけど、じいさまの一言で強制的に婚約されるって可能性もあるでしょぉぉ!?
 体が女な今は女の子と恋愛とかハードル高すぎる。だけど男と恋愛とか本当に無理。俺はゲイでもないので、ちょっと…いやかなり厳し目。だって同じモンついてんじゃん! 男相手に欲情なんてできんわ! 受け入れんのも無理!!

 二階堂パパママもその辺は理解してくれていて、俺は一生独身のまま二階堂家の会社を継ぐ覚悟でいる。
 なのでそのために勉強を頑張ることにした。今まで全く力を入れなかった勉強をだ。大学に進んで、海外留学して、ノウハウを学んで、立派な女社長になるためにだ。俺に出来ることはそれくらいしかない。
 パパママには孫を見せられなくて申し訳ないが、これはエリカ嬢の選んだ道。彼らも複雑そうだったが、俺の気持ちをくみ取ってくれた。
 て言うか別人の体で結婚とか恋愛となると戸惑うの普通だと思う。
 今は女性の体だから結婚相手はどうしても男になる。そんなん俺が耐えられない。もしそうなれば、ショック死か、今度こそ首括って死に行きそうである。
 エリカちゃんの身体を粗末にするなと怒られそうだが、俺も精神崩壊しそうなのよ。



「エリカさんはとても可愛らしい方ですね」
「…アリガトウゴザイマス」

 お見合い中ずっとガン見されて俺は寒気を覚えていたよ。
 お見合い相手は海運会社のご子息とやらだ。俺とは正反対の温室育ちのお坊ちゃんはお見合い写真の中の美少女に夢見てお見合いに参加した様子。
 ……悪いやつじゃなさそうだが、俺にとってはそういう問題じゃないのだ。
 中身が同い年の男子高生だと知ったら、この西園寺君は女性不信になるんじゃなかろうか……

 俺のテンションが低いことに気がついた西園寺君は健気にも色々話を振ってきた。本当に申し訳ない…ここにいるのがあのワガママ令嬢ならどんなに良かったことか…
 趣味の話になったときに彼の趣味がジオラマと聞き、彼のスマホのコレクション写真で話が盛り上がったことを、俺は後になって後悔することになる。
 だってほら、ジオラマって少年心くすぐられるやん……


 お見合いをお断りしてから一週間後。
 部活に勤しんでいた俺を呼び出す放送が流れた。何事だろうと首を傾げながら守衛室まで足を運ぶと、そこには有名男子校の制服に身を包んだ西園寺青年の姿があった。
 相手と目があった俺はぎくりと身をこわばらせてしまった。
 
 なんでここにいるんスか、西園寺君…

「すみません、マナー違反だとはわかっていたのですが、どうしても諦めきれなくて。…あの日すごく話が盛り上がったのに、どうして断られてしまったのかと…」
「あ…おぅ…す、すみません、ごめんなさい…」

 俺の、馬鹿…!
 なんであの時ジオラマに食いついたりしたんだ! 好印象与えてんじゃないよ!!

「多分僕たちは仲良くなれると思うんです。僕のことをもっと知っていただけたら、きっと前向きに考えていただけると思うのです」
 
 そうね、俺が俺のままだったらいい友達になれたと思うよ。
 ──今の状況じゃ、結婚相手としてって意味みたいだけど。

「ごめ、ごめんなさい、俺、私、あの、結婚、無理なんです……」

 動揺し過ぎて日本語覚えたての外国人みたいに片言な喋り方になってしまう。学校ではもう自分のこと俺って言ってるし、女らしくなんてしていないから、いざこうして迫られると混乱すると言うか。

 そんな俺へ生温かい視線を送るリアルハーレム野郎がいた。俺と西園寺君を観察しながら、そのままスルーして帰宅しようとしているではないか。この薄情者め!

「しぃんごぉぉ! エマージェンシー!」

 慎悟の腹に特攻すると、ぐふっと慎悟がむせた。奴は俺の頭を引き剥がそうとするが、俺は慎悟の腰に腕を回して離れてやらなかった。

「自分の責任だ。自分でなんとかしろ」
「なんでだよぉ、俺達友達だろぉぉ!?」

 呑気に他人事扱いすんなよ! こういうの精神的ボーイズラブっていうのよ!? 良くないでしょう色んな意味で!!

「…加納君…? エリカさん、もしかして彼と…」
「いや、違いますけど!?」

 やめろ。何だって精神的ボーイズラブに結びつけようとするのか。西園寺君が俺の真実を知らないから、そう見えるのかもしれないが、やめろ。俺達は男の友情で団結してるのだ。

「この人は事件の影響で少々情緒不安定なだけなんでお気になさらず」

 そうだけどそうじゃない!
 慎悟、なんでお前はそうして他人事のように…! 

「あぁ…そしたらエリカさん、日を改めてお話いたしましょう」
「えっ」

 提案を持ちかけてきた西園寺君は俺の手を握って、熱い瞳で見つめてきた。

「僕は諦めませんよ、エリカさん」
「……」

 俺は白目になって固まった。
 西園寺君は気づかないのか、「では、また」と爽やかに立ち去っていく。
 隣にいた慎悟がじっと俺を見下ろしている。その目は憐憫に満ちていた。

「このォー! すかしやがってぇぇ!」

 腹が立ったので、もう一度慎悟の腹にタックルした。奴の腹に一撃を決める。

「ラグビーじゃないんだからタックルするな!」
「うるせぇ! いっぺん慎悟も男に掘られてこい! そしたら俺の気持ちが理解できるようになるんだ!!」 

 なにが悲しくて男に口説かれにゃならんのだ! お前にその気持ちがわかるか! 罪悪感と嫌悪感でいっぱいだよ! 西園寺君がいい奴なだけあって本当に申し訳ない!!
 八つ当たりを交えてドムス、ドムスと慎悟にタックルを続けていると、「二階堂エリカァァ!! あなたなに、慎悟様に堂々と抱きついていますのぉぉぉ!?」と加納ガールズが特攻してきた。
 俺は慎悟から引き剥がされ、巻き毛にぺしーんと叩かれたのである。

 抱きついてんじゃねーし! タックルだし!
 なにが何でも色恋に結びつけんなこの恋愛脳共!!
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