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さようなら、私。こんにちは、エリカちゃん。
高貴に麗しく、魔女っ子アンジェラ見参!
しおりを挟む「みらくる☆アンジェラ! 高貴に麗しく見参!」
「キャーッ! 二階堂様ナイスですわ! こちらに視線下さい!」
「…あんたもようやるよ…」
文化祭当日になった。
朝から準備をしていたが、昨晩のうちに業者さんが大方準備を終えてくれていたので、私達はコスプレと、簡単な準備をするだけで済んだ。
そしてまじょまじょ☆みらくるのアンジェラに変装完了した私は衣装を準備してくれた井口さんにアンジェラ姿を絶賛されていた。ここまで褒められるとちょっといい気がしてきたぞ。調子に乗って決めポーズを取ってみた。
ぴかりんが私を若干引いた目で見てくるが、こういうのはなりきったほうが勝ちなんだよ! 私は今日アンジェラになりきってやると決めているんだ。恥ずかしがっていたら余計に恥ずかしいから開き直るのが一番。
クラスメイトも文化祭ではっちゃけているのか、ちょいちょいアニメのコスプレをしている人がいる。それを見てたら恥ずかしくなくなってきた。そんな気がする。
「エリカちゃーん…うわっなにそれ、なんのコスプレ?」
「出ましたわね! 悪の手先ダーククリスタル!」
「へっ?」
「うちのお店で飲食してくれなきゃ、このステッキでエターナル☆アンジェラアタックをお見舞いしますわよ!」
「え、なに? …痛い!」
「新規2名様入りまーす!」
私のクラスを冷やかしに来た男子バレー部2年の二宮さんが、小池さん(ぴかりんの想い人)と来店してきたので、二宮さんの腰にステッキをグリグリねじ込みながら中に誘導して無理やり席につかせた。
カフェメニューを二人に差し出すと、私は腕を組んで高飛車にこう告げた。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びなさいな」
「なんか偉そう!」
「こういうキャラですの」
私は高飛車なアンジェラ風にツンとそっぽ向いてやった。店に来いとか誘ってないのに来るとか…絶対私を見て笑いに来たんだな。特に二宮さん。悪い人じゃないんだけど私をからかう面があるから、たまにイラッとするんだよね。
小池さんはからかうタイプじゃないので、ナチュラルに褒めてきた。彼に褒められた九尾コスのぴかりんが真っ赤になって照れていたのでなんか甘酸っぱかった。アオハルかよ。
「ちょ…エリカ、すごい格好ね」
「可愛いー。ひかりはなにそれ狐?」
「すごい……特にエリカ…」
皆考えることは同じらしい。部活の先輩・同級生方が入れ替わりでやってくる。そして半笑いで写真撮影を希望してきたので私はやけくそ気味に応えた。
大丈夫。エリカちゃんカワイイから! 私の身体じゃないから恥ずかしくない!! もしかしたら知らないうちにエリカちゃんの黒歴史を作っているのかもしれないとは思ったけど、文化祭だから! 文化祭は我を忘れて楽しめばいいの!
だけど私のHPはもうゼロ状態。笑顔を作って慣れないキャラのフリをしていたのでドッと疲れた…
「……アンジェラちゃん…!?」
「え」
「実写版アンジェラちゃん…! 尊い…!!」
あと1時間でやっと交代時間になると言う所。私が少々お疲れ気味に接客をしていると、出入り口に突っ立っていた生徒会副会長・寛永さんが感動したように口元を抑えてプルプル震えていた。
「…寛永さん、アンジェラのこと知ってるんですね」
「はっ!」
私の声かけに寛永さんは我に返ったかのように辺りをキョロキョロしていた。急にどうしたんだろうか。
急に挙動不審になった寛永さんはもじもじして、私をチラッチラッと見てきた。何だどうしたんだこの人。周りのことを気にしているようだが、寛永さんはただでさえ目立つのだから、挙動不審にしてたら悪目立ちするよ。
「あ、の…二階堂…さん?」
「はい?」
「あの…その…しゃ、写真撮影はしてもらえるのかしら…?」
一瞬意味がわからなくて、その言葉に私は5秒位遅れて返事をした。確かにポラロイド撮影サービスはあるけど、1500円以上飲食したお客さんに限る。
…しかし美人が恥じらってもじもじしているのは威力が強いな。ちょっと挙動不審だけど。
「…1500円以上ご利用につき1枚、サービスで撮影しておりますが…」
「あとで一緒に写真を撮って下さる!? 私、まじょまじょ☆ミラクルのアンジェラちゃん好きなの!」
意外。寛永さんもアニメとか見るんだ。ちょっと親近感が湧いたぞ。
「…高飛車だけど芯が通っていて格好いいですよね、アンジェラって」
「あなたも観てるの?」
「この衣装を着ることが決まった時に予習で。今では決めポーズや必殺技名まで憶えてますよ」
「まぁ!」
寛永さんはワクワクした顔で目を輝かせていた。その後彼女のリクエスト通り、アンジェラの決めポーズをして一緒にツーショット写真を撮影した。
寛永さんは感激した様子で私の手がしびれるくらい激しいシェイクハンドをすると、ウキウキした足取りで退店していった。
喜んでくれたなら何より…今までに見たことがないハイテンションな副会長の姿を見た生徒達がずっとこっちを見ていた。…寛永さんはお嬢様の仮面でも被っていたのだろうか。
私としてはこっちの方が親しみやすいとは思うけどね。
■□■
遅めの交代時間になり、私は自由時間を迎えた。ずっと働きっぱなしだったので小腹がすいたな。そういえばバレー部の先輩のクラスでアメリカンドッグとかポテトフライとか屋台系の食べ物を出してるって言っていたから顔出すついでにいこうかな…
本当は衣装を着替えたかったのだが、宣伝になるからチラシ配りながら見て廻ってと言われたのでアンジェラの格好のままで、ぴかりんと文化祭を見て廻った。
3年の元女子バレー部部長のクラスに行くと、そこにはあの男バレ元マネージャーの富田さんがいた。
私を目にするなり富田さんはきっつい目つきで睨みつけてきた。その瞬間、彼女の周りに居た男子が引いた顔をしていた。普通にしていれば可愛い人なのになぁ。
私は富田さんに会いに来たわけじゃないので、元部長に声を掛けると手作りのアメリカンドッグを購入した。見た目は普通の何処にでもあるアメリカンドッグだが、中のソーセージから外の生地であるホットケーキミックスまでこだわった材料で作ったらしい。味は普通にアメリカンドッグなんだけどね。美味しかったよ。
3年のクラスでお腹を満たした後、私とぴかりんは目的地が異なるためにそこで別れた。ぴかりんは小池さんのクラスに行くんだってよ。
私は慎悟のクラス1-2に寄ってハンドメイド商品をなにか購入しようかと思う。あいつが遅番かどうかは知らないけど。
1年のクラスがあるフロアに戻って歩いていると、隣の1-4が人気無くガラーンとしているのに今気づいた。
そう言えば1-4は劇だったな。ならいくつかある体育館の何処かでなにか演劇をしているのだろう。…何の劇をしてるんだろう。宝生氏とか瑞沢姫乃も役を演じているのだろうか。もう時間ないから観に行かないけど。
4組と3組の前を通り過ぎて、2組の教室に入ろうとした私だったが、足を踏み入れる直前でぽん、と肩を叩かれたので後ろを振り返った。
「二階堂さん、こんな所に居たんだ」
「……」
何その口振り、まさか探してたの?
困惑している私の様子には気づいていないのか、上杉はニコニコと笑顔で、私のコスプレを褒め称える。褒められているんだけどそのどれも耳に入ってこない。だって嬉しくないんだもの。
「僕、手相占い担当なんだ。二階堂さんはタダでしてあげるよ」
「えっ、いや、私占いとかはあんまり…」
「娯楽だから深く考えないでいいんだよ。ほらほら、こっちこっち」
上杉は腕を掴んで私を引っ張ってきた。私はついて行くまいと踏ん張ったが、その甲斐もなく引き摺られるようにして1組のクラスに連れて行かれてしまった…
強引な奴め……
占いをしている1組は多くの仕切りがされていた。声は漏れ聞こえるが、顔は見えない。プライバシーを考えた目隠しなのだろう。…でも声でバレそうだよね。
席に座らされた私は、上杉に左手を取られて虫眼鏡でマジマジと手のシワを観察されていた。
本当勘弁してぇ。エリカちゃんの手相で占われても私には関係ないんですけどぉ。
早く終われと念じながら、ひたすら耐えていたのだが、上杉はひとしきり観察し終えると、そっと虫眼鏡を机の上に置いた。
「二階堂さんの手には結婚線が20代と30代の間にあるから、20代半ばくらいに結婚するかな? 線が真っすぐ伸びているから、相手とずっと寄り添い、一途に思い続ける事を示してるね」
「はぁ…そっすか…」
「この線が薬指まで到達した線は玉の輿線って言って、安定した暮らしができるんだ」
私はほぼ流し聞きをしていた。
だって結婚ってエリカちゃんの運命やん。私関係ないやん。
おい上杉、手のひらを指で撫でるな。ゾワゾワするから。
「二階堂さんは知能線が短いね」
「えっ」
ギクッとした。私のアタマが悪いことがバレたのか! と反応したけど、上杉は「違うよ」とフォローしてきた。
「悪いことじゃないんだよ。くよくよ悩まずに楽観的…プラス思考な人が多いんだ」
「そ、そっか…」
手相とか関係ないしとか思っていたくせに悪そうな結果が出ると気にして私はアホか。
私がソワソワしていることに気づいていないのか、上杉はまた手の中央を指でなぞってくる。
だ か ら
ゾワゾワするってば!
「ここが運命線。中央にまっすぐ1本入ってるね。性格が真っ直ぐな人が多くて、何か大きな壁にぶち当たっても正面から衝突して乗り越えるタイプ。人生全体的にドラマティックな一生を終えるんだよ」
「…ドラマティック…?」
その診断にちょっと心臓が跳ねた。
たしかに今の私は小説やドラマにありそうな現象を体感中だが、そのことを言っているのだろうか…?
占いごときでこんなにハラハラさせるなんて、コイツ占い師向いてるんじゃないのか?
「それでここが生命線なんだけど……途中で横切る障害線があるね。この障害線は劇的な環境の変化を表すんだ。人生の方向転換やこれまでの生活とは一変した人生を歩んでいくことになる」
「…え?」
「……時には生命に関わる問題になることも」
「……」
その生命線の話に私は言葉を失った。
これはエリカちゃんの手だ。確かに変化はあったし、今まさに私がエリカちゃんの身体を(不本意だけど)乗っ取っている状況だ。だから、私自身の診断じゃないはずなのに、ドキッとしてしまった。
「…まぁ、あんな事件があったからその名残だと思うよ。手相は変わるものだし、そのうち変化するよ」
私の様子がおかしくなったのに気づいたのか上杉がフォローしていたが、手相占いの結果が私の頭の中に残っていて、なんだかスッキリしない気分に陥ったのであった。
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