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さようなら、エリカちゃん。ごきげんよう、新しい人生。
私の未来への展望。サイコスリラー生活を阻止せよ!
しおりを挟む「二階堂さん、本当にパートナー…」
「ならない」
「…1人で参加とか…惨めだよ?」
「惨めかどうか、それを決めるのは私だ」
登校してきた私を通せんぼしてきたのは上杉の野郎だ。
こっちは連日のテスト勉強でピリピリしてんだよ。声かけてくんな前科複数犯! あんたの前科の数が多すぎて数え切れねぇわ!
「…頑張りすぎじゃない?」
「うーるさい」
「…僕のものになってくれるなら勉強なんかしなくても」
「さよなら」
──ピシャン!
世迷い言を言ってくる上杉を、教室の扉を締めてシャットアウトした。
朝から最悪な気分である。上杉の野郎はしつこすぎる! 一度きっぱりと断ったのに何度も付き纏ってきて…油断していたら頭から飲み込まれてしまいそうだ。…油断も隙もない。
やだわ! アイツの毒牙に引っ掛かったら毎日がサイコスリラーじゃないの! 人間の狂気というものの傍で死ぬまで生活とか気が狂うわ!
捕まってしまったら最後、絶対にうまいこと既成事実作られて、婚約→結婚に持ち込まれるんだ。結婚後は家族や友達との連絡手段を断たれて、自宅に軟禁してじわじわ追い詰めてくんだ! ひどいと暴力振るうんだよ…そして無理やり産ませた子供で縛っていくスタイル。しかもその子供すら引き剥がすんだよ! 子ども共々、生きた人形扱いされるんだ…!
…やだ、絶対にやだよ! それなら嫌いな勉強を一生懸命頑張る! …勉強しまくったらパパの仕事継げるかな…?
私はいっそ自力で身を立てようかと考えついた。だってほら、二階堂の会社は二階堂の縁者の優秀な人間に任せるって言うじゃん? 私が会社経営のノウハウ学んで女社長として継いだ後は養子をもらってさ…
「あんたって考えが時々吹っ飛ぶよな」
「……おはよう…私、口に出してた?」
「思いっきりな。…心配せずともおじさんおばさんが上杉とのそれは阻止してくれると思うよ」
「…毎日がサイコスリラー生活阻止できるかな?」
考えるだけで心臓がバクバクする。恐怖で心不全起こしそうです。
上杉は今まで周りにいないタイプでもう本当に動きが予測できないわ、何考えているかわからないわで…本当に怖いの。
「大丈夫だよ」
ガクブルと恐怖に震えていたら、慎悟によってワシャッと頭を撫でられた。それによって一瞬脳の働きが止まった。一拍後に我に返った私は後ずさって彼の手から逃れた。
「スキンシップ禁止!」
「…はぁ?」
「セクハラはダメって慎悟が言ってきたんだから、慎悟もしないように!」
あんたはスキンシップどころかセクハラが目に余ります! これ以上私に触らないように!
そう言い聞かせると、慎悟はむっと眉間にシワを寄せていた。そしてキッパリとこう言ったのだ。
「断る」
「わかったなら……断る?」
何この人。何堂々とセクハラします宣言をしているの?
カァッと頬に熱が集まったのがわかった。あんたそんな事言う奴じゃなかったでしょ!? は、恥ずかしくはないのか!
「あ、あんたねぇ!」
「いちゃつくなら2人っきりになれる所でしてくれるー? あともうすぐ先生来るよ」
「い、いちゃついてなんかいないよ!」
ぴかりんに冷やかされたので私が訂正をしていたのだが、担任の先生が教室に入ってきたので私は慌てて席についた。これのどこがいちゃついているように見えるんだ! 私はセクハラを注意していただけだよ!
担任の先生が教壇で何かを話している間もずっと心臓が暴れていた。先生の話が頭に入ってこなくて、私はずっと慎悟のことを考えていた。もともと生意気な奴だったけど、ここ最近は違う方向に生意気になってきているぞあいつ…!
いつの間にか上杉とのサイコスリラーな未来のことなんて吹っ飛んでいたんだ。
あー…心臓が苦しいな…不整脈だろうか。近々病院に再検査をしに行ったほうが良いのかもしれない。
■□■
「……」
「二階堂様、お気を確かに」
魔の期末テストが終わった。
私は気力体力を使い果たして机の上で潰れていた。阿南さんが声を掛けてくるけど、応答する気力がわかない。
めっちゃ頑張った…私めちゃめちゃ頑張った…
「二階堂様、自己採点をしましょうか」
「……」
「そんな顔してもダメです。自己採点も復習の内ですよ」
机に倒れた姿勢のまま、死んだ目で見上げてみたのだけど、幹さんは無情であった。
幹先生は最近厳しくなってきた。前までもっと優しかったのにドンドン厳しくなっていく。私としてはもう少し休憩時間が欲しいんだけど、アホにはそんな暇を与えてくれないらしい。テスト最終日のHRが終了するなり、幹さんは私の前の机をくっつけて問題用紙を広げ始めた…。
自己採点をしたお陰で答案返却前から大方の点数を知ることになったが、全体的に点数は上がっていた。…学年50位は絶対ムリだけど。
あれだけ頑張って下がったら凹んでいたところだ。
テストが終わると、学校中早くもクリスマスムードになっていた。
私はと言うと、1月の春高バレー大会に意識が向いていた。…他のみんなクリスマスパーティに目が向いていて、楽しそうである。
テスト最終日翌日から部活復帰した私はいつものようにストレッチと筋トレをしてから練習をしていた。部員達も春高大会に賭けているので真面目に練習をしていたが、部活から離れるともうクリスマス独特の雰囲気、カップル成立も多い。
去年こんなんだったっけ…? 私が余裕なさ過ぎただけか。学校が違うとこうも雰囲気が変わるんだな。
テーン、テン、テン…
どこからかバレーボールが飛んできた。私は屈んでそれを拾い上げる。
「ごめーんごめんこっちに投げてエリカちゃーん」
男子バレー部の練習スペースの方から流れてきたらしい。二宮さんが元気よく声を掛けてきたので、彼に向けてボールを投げて返す。
そういえば早いものでもうすぐ3年は卒業なんだよなぁ。私も本来なら卒業のはずなのに…まるで留年してしまったような心境だ。本来であれば同い年であるはずの二宮さんは卒業してしまうのか。少し寂しいな。
…3年といえばその後の進路である。英学院にはエスカレーター式の大学がある。一定の成績を収めていれば進学できる。中には外部受験する人もいるし、まれに就職だったり、結婚で進学しない人もいるそうだけど。
誠心高校3年の依里は大学には進まずに実業団入りだし、あそこにいる二宮さんは英学院の大学部に進んでバレーを続けるようだ。
…流れ的には私も大学に行かないといけないんだろうけど、大学でもバレー続けたいなぁ…ところで私は何学部に入れば良いんだろうか。二階堂パパママとそんな話をしたことないんだよな……いや、私の頭とも相談しないといけないけども……
進路を考え始めるの遅いな私。
「…私2人のお仕事の手伝いが出来るように勉強しておきたいんだけど。…これからどうなるかわからないじゃない…私もちゃんと勉強しておかないとと思って」
私は帰りの遅い二階堂ママを待ち伏せしていた。疲れている所申し訳ないが、時間を作ってもらって彼女に進路相談をした。
「そうねぇ、えっちゃんが興味のある分野を学んでいいけれど。…エリカにも自由にしていいと伝えていたし」
二階堂夫妻はその辺り放任主義みたいだ。もともとエリカちゃんが優秀だったこともあるのかな。
自由にと言われても私は何を学べば良いのかがわからないのだよ。参考のために二階堂ママの卒業学部を質問してみることにした。
「ママは? 何学部出身だったの?」
「私は商学部だったわ。元々ね、家庭に収まるような性格じゃなかったから、興味のある分野に進んだわ」
そうだったのか。
しかしそれが私の足りない頭で通えるのか…
「今度大学部に見学しに行ってみたら良いわ。大学部は高等部からそう離れていない場所にあるから、来年になったら大学の各学部を見学してきたら? 英学院大学部への進路決定はまだ時間の猶予があるからじっくり考えてみて」
「うん…」
エリカちゃんとして生きることになって、私はいろんなものを得たが、その代わりに失ったものも沢山ある。
依里のように実業団スカウトされることはまずないだろう。スパイカーとして身長が圧倒的に足りないから世界では戦えないし、この体では実績を残せていない。…現実はそう甘くないってこと。
それに私は二階堂の家に役立てるように沢山勉強しなくてはならない。エリカちゃんの代わりと言ったらあれだけど、何か役に立ちたいのだ。
私に出来る限りの努力はしたいと考えている。あまり期待されても困るけどね。色々と不安だ…。
■□■
翌日、朝のHRが終わった後に私は教室を出ていく担任を追いかけて、英学院大学部への見学はどうしたら良いのかを質問してみた。そしたらあとで詳細の書かれたプリントと申込用紙を持ってきてくれると言われた。
「二階堂さん大学に行くつもりなの?」
来年になってからスケジュールを立てて申し込みしようと考えながら教室に引き返していると、横から声を掛けられた。相変わらず神出鬼没な奴である。
「出たな、連続わいせつ犯」
「人聞きが悪いなぁ」
自分が何をしでかしたか覚えていないのか? 乙女の唇をなんと心得ているんだこの蛇男。
私はスカート横にぶら下げている防犯ベルを握ってジリジリと後退していたのだが、上杉は苦笑いしてこちらを見ている。
私をバカにしてんのかコイツは。2度も同じ目に遭ってたまるか…!
「嫌いな勉強をしなくても、僕が一生面倒見てあげるよ?」
「いらない。それなら勉強頑張って自分の力で生きていきます」
「…君に出来るかなぁ? 会社継ぐつもりなんでしょ? …二階堂さんならともかく、君に出来るかな?」
うん、正体バレてるのわかっていたけどね。改めて言われるとこっわい…
ゾッと悪寒がした。風邪かしら。
「…人間には可能性があるんだよ…無責任に無理だって口出しすんのやめようか」
私はね、忍耐力だけは秀でてるんだよ。じゃなきゃバレー強豪校代表なんて無理なんだからね? 私の持ち前の忍耐力で乗り越えてみせる!
「理解できなくても、私の人生に口出ししてこないで。私は私なりに頑張って生きるんだよ」
二階堂エリカとして生きると決まったなら、好き勝手に生きる事はできなくなるだろう。それならば自由に選択できるその枠組の範囲内で自分の幸せを見つけてみせる。
「何度も言っているけど、あんただけはないよ」
「そんな事言われると傷つくんだけどなぁ」
「そのまま傷ついて再起不能になってくれたら助かるんだけどね? あばよ!」
前にパンチを繰り出しながら、上杉から距離をとって逃げ出した私は、曲がり角でどーんっと人とぶつかった。
「うわっ!」
「あ、ごめん宝生氏。不審者から逃げてて」
「だからって廊下を走るなよ!」
ぶつかったのが宝生氏だったので軽く謝罪すると注意された。ごめんってば。
「あ…」
宝生氏は1人ではなかった。彼の後ろには瑞沢嬢がいて、私を見るなり彼女は目を見開いていた。
そしてその瞳にはじわじわと涙が浮かび…私はそれに罪悪感を感じていた。
エリカちゃんの立場なら、そんな反応されても罪悪感を感じる必要はないのに、中の人である私は良心がチクチクと痛んだ気がした。
「ごめんね。じゃあね」
「おい! 走るなってば!」
もう一度謝ると私はその場からまた逃走した。
それは上杉から逃げたのか、それとも瑞沢嬢から逃げたのか…あるいはどちら共なのか。
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