8 / 312
本編
見捨てたんじゃない。旅をさせたの。
しおりを挟む「あっ! あやめ先輩こんにちはー」
「はいどーも、こんにちは」
「先輩、今日も決めてますね!! かっこいいです!」
あの混合リレーが切っ掛けで1年の室戸実花になつかれた。
室戸さんは以前の地味な私と雰囲気が似ている。間違っても私のようなギャルギャルしい格好の人間とは関わりがないようなおとなしい子。
「先輩、テスト勉強してますか?」
「うんボチボチね。もう一週間前でしょ?」
「あの、どんな勉強してます?」
「んー。とにかく問題解いてるかなぁ。私、塾行ってないからネットとか本屋で問題集探して……」
室戸さんは小柄でくりっとした大きな瞳がチャームポイントで小動物を彷彿させる可愛らしい子だ。庇護欲が湧いて思わず彼女の頭を撫でてしまった。
学生の本分は勉強。私も例に漏れず勉強をしている。
これがチートというのかどうかはわからないが、女子高生二回目の影響なのか……授業を受けているときに「あ、これわかる」と既視感を覚えることが多く、多分前世の私が学んだこともうっすら覚えてるようなのだ。
ちょっとズルしているような気がしてならないが、悪い結果だと夏休みのバイトを禁止されるかもしれないので、ベストを尽くしたいと思う。
……そういえばテスト。
田端和真ルートのストーリーで期末テストの結果発表で成績が急落した和真がプライド折れたせいで荒れるというシナリオがあったなぁ。
でも正直、若い頃に毒を出しておいた方が良いんじゃないかな。悪いことするのは流石に止めるけど。和真が盗んだバイクで走り出したらぶん殴るけど。
個人的に……和真は今までが出来すぎたから挫折も味わうべきだと思うんだ。
これは姉としての意見だ。冷たいと感じるかもしれないが、和真はまだ子供だ。挫折を知らないと大人になってはじめて挫折した時きついと思うんだよ。
私は敢えて、攻略対象である弟の非行を止めないことにした。
☆★☆
期末テスト全日程を終えて、クラスの皆は早くも夏休みモードである。
私の目の前には前髪チョンマゲおでこをさらしながらにこにこ笑顔でチケットを見せびらかす沢渡君がいた。
「アヤちゃん、アヤちゃん。今度プールいかない?」
「…プール?」
「うちの父さんに割引券貰ったんだ。ユカちゃんリンちゃんも誘ってさ皆で」
「私パス」
折角の誘いだがお断りさせていただいた。
私はまだ目標体重に到達出来ていないのだ。今はちょうど停滞期なのか全く痩せる気配がない。それに夏休みはがっつりバイトに入る予定だ。
「えー!? なんで?」
「目標体重に到達してないから」
「大丈夫だよー女の子は少しポッチャリした方が」
「……私のこと、デブって思ってたってことね」
「えっ!? 違うよ! ちがうってぇ!」
かなり体重の事を気にしていた私は沢渡君のフォローをプラスに受け入れることはできなかった。沢渡君が隣で騒いでいるが、私は求人雑誌に目を落としてスルーしたのである。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムと共に担任が教室に入ってきた。うちのクラスの担任は英語の教諭でもある。
「お前ら席つけーテスト返すぞー」
テストの返却の日がやって来た。今回英語は結構できたんじゃないかと思う。自己採点でも過去最高だったかもしれない。
「今回平均点上がってたぞ。よく頑張ったなー。だが夏休み中浮かれて勉強しないのはよくないからな」
そういうと、あいうえお順で名前を呼ばれる。皆順々にテストを返却され、私も名前を呼ばれたので教卓までテストを取りに行った。
「田端ぁ! お前今回よかったぞ! よく頑張ったなぁ」
「どーも」
「……本当に悩みはないのか??」
「ありませんて。……あ、この学校ってバイトオッケーでしたよね」
「!? お前金に困ってるのか!?」
「違いますけど、欲しいものがあるので」
学業に支障ない程度に、と念押しされた私はテストに書かれた点数を見てにんまり笑う。
──中間テストの順位の中の中から期末テストは上の中まで成績の上昇が見られた。
この結果に両親もアルバイトの反対はできなかったらしく、勉強をサボらないこと、ちゃんと門限には帰ることを条件に許してくれた。
……和真は、テストの結果が思わしくなかったようだ。
乙女ゲームのシナリオ通り、弟は日に日にグレている。最近、生意気にも弟はピアスを開けたり髪を染めだしたのだ。お前が言うなと言う話なんだけどね。ちなみにアッシュカラーにしていた。
今までが品行方正優等生タイプの弟だったので、それを見たときは思わず二度見してしまった。
あ、でも私がイメチェンしたときもそんな反応されたわ。
確か悪い友達と付き合いはじめて、夏休みに入ると夜遊びをするようになるんだ。
最近気になるのは弟とヒロインちゃんの接触がないことだ。乙女ゲームではもっと接触があったはずなんだけども。そしてヒロインちゃんの動向もわからない。
ゲームでは確か……夏休み中、和真が夜遊びしてるところで塾帰りのヒロインちゃんが他の不良に絡まれてるのをかっこよく助けるというイベントがあったけど、私門限あって見に行けないんだよ。門限破ったらバイトできなくなるし……
願うのは、グレるレベルが犯罪にならない程度であって欲しいということだ。
ホント盗んだバイクで走るのはダメよ。
窃盗と無免許だからね。
21
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる