99 / 312
続編
大学に行く理由って色々あると思う。だけど学費は安くないからそれを念頭に置くべきだと思う。
しおりを挟む中間テスト一週間前になった。
私は休み時間も勉強するようになり、家でも時間の許す限り勉強していた。テスト終了まで亮介先輩と会うのはお預けである。
終われば剣道の練習を見学できるご褒美が待っているのでそれのために頑張る!!
「田端せんぱーい! 今日、家来ませーん?」
「…ごめんね。私勉強しないといけないからまた今度ね」
相変わらず私に懐いている植草さんは昼休みに三年の教室までやってきて私を家に招いてきた。
だが私はテスト前にそんな余裕なんて無いのでお断りした。
「えー、一緒に勉強しましょうよ~」
「私、教えられるほど余裕ないんだ。本当にゴメンね」
「今日お兄ちゃんいるから勉強教えてもらえますよ? お兄ちゃん理工学部生だから」
「うん、大丈夫。一人で勉強したいの」
植草さんのお兄さんは私を敵視というか警戒してるし、私もそんな人に近づきたいとは思わない。ていうか誤解が生まれるような接触は避けたいのだ。
ぶっちゃけ私にそんな余裕があるなら彼氏に会いたいんだよ。
連絡はしてるけど、それよりも会いたいんだよ。だけど私は学生だから、何よりも学業を優先しないといけないから我慢してるんだよわかるか?
「むーっ」
「植草さん、中学の時よりも科目も増えてるんだよ? そんな油断してたらいい点は取れないんだよ?」
「大丈夫ですもん。お兄ちゃんが教えてくれるし」
ねー来てくださいよ~と絡まれて私は少々困っていた。
悪い子じゃないんだけどちょっとわがままなところがあるんだよね…
「…ねぇ。田端さんが断ったのが聞こえなかったのアンタ」
「…箕島さん?」
「大体さ、田端さんに迷惑かけてんのわからないわけ? 私ら受験生なんだけど?」
その言葉に植草さんは顔を歪める。そして私を伺うように見てきた。
彼女の縋るような目にウッとなったが私は心を鬼にする。
「せんぱぁい…」
「…ごめんね。テストが終わったならいいけど、本当に今は無理なんだ」
「……わかりました…じゃあテスト明けに! 絶対ですよ!」
不貞腐れた顔をしていた植草さんだったが、私とそう約束を取り付けると帰って行った。
相変わらず女友達はいないのか。テスト明けの体育祭に期待するしか無いのか。
「本当に懐かれてるわね。田端さん」
「あはは…なんだろう私から母性でもにじみ出てるのかな?」
「あー…でも田端さん下に兄弟いるからそういうのあるかもしれないね」
自分の席に戻ると、箕島さんが空席である前の席に座って私の机に身を乗り出した。
「ねぇ、志望学部違うのは分かってるんだけどさ、本当に今度一緒に勉強しない?」
「…え?」
「被る受験科目はあるんだしさ、誰かと一緒に勉強するのって張り合いが生まれるし」
箕島さんの提案に私はなんとなく、下心を感じていた。
だって私達はそんなに親しいわけでもないし、一緒に勉強するメリットも感じないから。
「…山ぴょんとの復縁を狙ってるの?」
「…あら、バレた?」
「私を利用するのは止めてね? 巻き込むのだけはやめて」
「ダメかぁ…大志ホント彼女作る気ないみたいでさ、断られちゃったのよ」
「…箕島さんから振ったのになんで今さら?」
私の問いに箕島さんは苦笑いした。
今教室に山ぴょんはいない。ついでにいうと私の周りは丁度人が捌けている。つまり小声で話せば周りには聞こえないので質問してみた。
「嫌いで別れたんじゃないからね。……私、大志の気を引きたかっただけなのよ」
「ふうん」
「大志に新しい彼女が出来た時後悔したんだよね。だからもう一度やり直せないかなと思って。気を悪くさせたならゴメン」
そう言って彼女は立ち上がると小さく呟いた。
「やっぱり自分でなんとかしなきゃよね」
そこに丁度山ぴょんが男友達とお喋りしながら教室に入ってきたので、箕島さんは早速山ぴょんに話しかけに行っていた。
私はといえば他人の事どころではないので、それから目を逸らしてテスト勉強を再開したのである。
☆★☆
「あんた目障りなんだけど」
「ハーフだか何だか知らないけど男に媚び売って恥ずかしくないわけ?」
帰る間際に先生から呼び出しがあったので職員室で用事を済ませた後、裏庭に面した廊下を歩いていると、窓の外からそんな声が聞こえてきた。
不穏なそれに私が思わず窓の外を覗き込むと、植草さんがなんだか見覚えのある女子たちに囲まれていた。
相手は私と林道さんを冬の資料室に閉じ込めた事のあるキラキラ系女子(現在二年)である。
この人達も懲りないなぁ。自分たちのことは棚に上げて…。
「あんた達だってうちの弟に媚び売ってたじゃん。人のこと言える? それとも…植草さんが美人だから妬んでるの?」
「! あんた、和真の」
「ねぇ後輩をいびって楽しい? アンタ達、前科があるのにいい度胸だよねぇ?」
小姑よろしく私はキラキラ女子に嫌味を言ってみる。
すると奴らは負け惜しみのようになんか色々言って逃げてった。『うざいんですけど!』『クソババァ!』『ブース!』とか色々ね。罵倒がワンパターンだな。
小物臭がすごいわ。
見た目は可愛いのに本当性格が残念だ。
私は植草さんに目をやった。
彼女はノーダメージに見えるけど、若干うんざりした顔をしていた。美人も大変だな。
「植草さん大丈夫?」
「田端先輩~怖かったですよ~」
「うん、でも自業自得だからね?」
「最近は控えてますもん!」
切り替えが早いのか、植草さんは「今帰りですかー? 駅まで一緒に帰りません?」と誘ってきた。
まぁそのくらいなら構わないかと思って了承すると彼女と駅まで向かうことに。
「田端先輩は志望大学何処でしたっけ~?」
「国公立にしようかなと思ってるけど、まだ決まってないよ」
「えぇー彼氏さんと同じ大学にすればいいのに!」
「自分の将来のことだからよく考えたいの」
「でもどうせ女って結婚して子供生んだら仕事辞めざるを得なくなるじゃないですか。適当で良くないですか?」
植草さんの言い分に私は顔を顰めてしまった。
私の母は高卒で就職し、会社員として働いていた。だけど結婚して、二人の子供に恵まれると仕事と家事育児の両立が厳しくなり、父の仕事も多忙になってしまったため、夫婦で話し合った結果専業主婦になることにしたそうな。
だから彼女の言い分もわからんでもない。
とは言っても、私達が中学生になってから母も短期パートに出たりしてるからたまに働きに出てるけどね。最近は私達の進学のことを考えてレギュラーのパートの仕事を探しているみたいだ。
学資保険プラス、私達の学費の足しになるようにと両親とも頑張ってくれている。
私もなるべく負担をかけたくないので、国公立受験を限定として奨学金ローンを少額で借りようとは思うんだけどね。満額借りるのは怖いから残りは親に援助してもらおうと思ってる。後で親孝行で返してくさ。
だから専業主婦前提で大学行くのは嫌だ。それなら私は就職を選ぶ。
私は自分のために、手に職をつけるために大学に行くと決めたのだ。
だから産休育休があって時短で働けるとか、一旦退職しても身の周りが落ち着いてから再チャレンジできるような環境に就職したいと考えている。
「あのね、植草さん。大学ってすごいお金がかかるの」
「それはわかってますけど」
「専業主婦になると決めてるなら大学に行かないで就職なりフリーターになればいいじゃない。それを置いておいても、学ぶのは自由だと思うけどさ、適当に大学に行くとか私そういう考え方あまり好きじゃない」
和真いわく私は真面目すぎるらしいが、間違ってはいないと思うのだ。
だって結婚しても離婚したら?
旦那さんが働けなくなったら?
そしたら自分自身で稼がないといけないじゃないの。絶対なんてないんだから。
私の目指す専門職となると大学で学んだ知識が必要になる。大学によって就職先も変わるし、条件も変わってくる
なら通う大学を吟味するのも大事だと思うのだけど。考えが堅いのかな?
「私は結婚出産で一旦離脱しても、復帰できるような仕事ができるように学びに行くと決めてるから適当にしたくないんだよ」
「…すいません…」
「…え?」
「…あたしなんか…気に障ること言っちゃって…」
ショボーンと植草さんが凹みだした。
あ、ちょっと私言い方きつかったかも。
「あ…ゴメン。言い過ぎた。…でもね、経済的に進学できない人もいるからそういう事軽々しく言わないほうがいいかな?」
「はいすいません…」
いかんいかん。
ムッとしたからって自分の考えを他人に押し付けちゃダメだな。自分大人げないわ。
しょぼくれた植草さんにフォローを入れてると、何処からかクラクションの音が聞こえてきた。
振り返ると目立つ外車の姿。運転席に乗っている彼女のお兄さんが私を探る目で見ていた。
うわぁ…タイミング悪いなぁ。
「植草さんお迎え来たみたいだね。私はここで」
「…えっ? 送ってもらいますよ?」
「ううん、大丈夫。それじゃあね」
ちょっとダサいけど私は逃げるようにして植草兄妹から離れていったのである。
気まずいし。
20
あなたにおすすめの小説
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる