攻略対象の影薄い姉になったけど、モブってなにしたらいいの?

スズキアカネ

文字の大きさ
182 / 312
続編

先輩ともっと色んなことがしたい。それは我儘なのだろうか?【卒業式前の二人】

しおりを挟む
あやめの卒業式直前のある土曜日のお話。
ーーーーーーーーーーーー

「では、こちら2点こちらでお預かりいたしますね」
「お願いします」
「あぁ~…」

 土曜の午前中に私は先輩と一緒に近所の神社に行って、例のお守り2つを返納した。
 本当はまだちょっと未練はあるけど…。私が最後まで返納するのを躊躇っていたので、焦れた先輩が私の手からお守りを取り上げて巫女さんに返しちゃった。
 その後すぐに新しい学業守を買ってもらったから少し気分が浮上したけど、まだちょっとだけもやもやしている。

 修学旅行のお土産でお守りをくれた和真にも事情を話してから謝罪したけど、和真はそこまで気にしてないようで、怪我の心配をしてくれた。
 折角買ってきてくれたのに…本当情けない姉ですまん…


 神社を後にすると、私は先輩と手を繋いで駅前の方へと向かった。
 色々あったけどなんとか受験も終え、後は卒業式と合格発表を待つだけ。因みに試験に全力を尽くしたが、解答欄間違えてないかなとかそんな不安がある。
 私が本当の意味で受験から解放されるまではまだもうしばらく掛かるらしい。

 今日は受験の労いを込めて先輩がお昼ご飯をおごってくれると言うので、私はまわる寿司屋さんをリクエストした。
 お昼より少し早い時間に店に入った。待ち時間もなく席に通された私達は、テーブルに備え付けられたタッチパネルで食べたいネタを注文してお寿司の到着を待った。
 当然のことだがマンボウは寿司ネタにはない。マンボウ寿司とかないのかな。マンボウ白身魚らしいよ。
 

「先輩先輩、来年の冬は遠出してスキーとか行ったりしません?」
「…スキー?」
「大学生になったらいい加減私も門限とかもうちょっと緩くなると思うんです。先輩のお家にお泊りとかもしてみたいし、旅行も行ってみたい。またみんなで海に行ったり、バーベキューとかも良いかも」

 まだ合格発表前のため大学合格したという保証はないのだが、私はこれからしてみたいことが沢山あった。
 時間は無限にあるというのに疾る心が抑えきれない。早く大学生になりたい!

「……学生の本分は勉強だぞ。遊んでばかりじゃいられないのだから」
「それはわかってますよ! 私は遊ぶために大学進学を選んだわけじゃないですもん。…でも、もっと先輩と色んな事したいんだもん…」

 先輩の冷静な返答に私は唇を尖らせた。
 受験が終わるまで恋人らしいこと我慢していたから、その分補填したいのに……。

《ご注文の商品が到着しました》

 機械音声と共に注文分の寿司が届いた。先輩が腕を伸ばしてすべて取ってくれる。

「…ほら、届いたぞ」
「…ありがとうございます…」

 提案を却下された気がして私は落ち込んだ。先輩はOKしてくれるって思っていたのに…

 わかってるよ。遊んでばかりじゃいられないのは。
 でも、でもさぁ…

 いただきますと呟いて、お寿司を箸で挟んだ私はすっかり意気消沈して食べていた。
 …炙りサーモン美味しいな。
 お寿司は美味しい。いっぱい食べとこう。
 先輩のおごりだし、ちょっとした反抗心もある。当てつけでお腹いっぱい食べてやる。
 …全部とは言わないから、ちょっとくらい叶えてくれてもいいじゃん。先輩のケチ。

 私は頼んだ分を食べ終わるとすぐに注文画面で寿司を頼むと、セルフの熱いお茶を飲んでひと息つく。
 
「……この後俺の家に来るか?」
「行きませーん。先輩は一人でお勉強してたらどうですか?」

 先輩がご機嫌取りをしてきたから私はプンッとそっぽ向いた。イチャイチャで誤魔化されないから!
 いじけた行動だというのはわかっている。でもなんかムッとしたんだもん。
 先輩は私ともっと色んな事したくないのだろうか。街をブラブラするのもいいけど、ちょっと冒険して遠出とかも楽しいはず。そういうご褒美があればバイトのやる気に繋がるし、勉強だってもっと頑張れるはずなのに。

 いいもん。ユカとかリン誘うから。リンの就職先は土日祝休みだって言ってたから予定は立てやすいし。後で連絡してみよ。

「…別に行きたくないと言っているわけじゃないだろ」
「……先輩のケチンボ」
「浮かれて大学の勉強が疎かになると思ったから指摘しただけだよ」
「いいもん、先輩とは行かない。ユカとリンと行くもん」

 私は最近先輩に対して我儘な面が出てきた気がする。それは親しくなった証なのか。私が素直に甘えることのできる存在になったからだろうか。
 決して先輩を困らせたいわけじゃない。だけどどこからか我儘な私が顔を出して、結局先輩を困らせてしまっている。

「…遊びに行くのも、バイトに精を出すのも構わない。だけどそれに没頭して勉強をおろそかにしたら……わかるだろ?」
「……わかってますもん…」

 学業をおろそかにしてしまったら、私達の関係に危機が訪れるだろうと示唆しているのだろう。それはわかってる。そうなれば橘家だけでなく、ウチの両親も良い顔しないだろうし。

「…俺は今年こそお前と花火が観たいな」
「え…」
「去年は観る前に会場を出てしまったから」
「………あぁ…」

 そういえば、去年の花火大会では先輩といい雰囲気になったので、花火を観ないでそのまま先輩の部屋に行ったんだった。
 …そうだな、今年も先輩とお祭りに行きたいな。花火も観たい。

「おじさんとおばさんの許可があればいくらでも家に泊まっても良いし」
「…はい」
「それに今年は大学祭を一緒に回るんだろ?」
「……はい回りたいです…」

 テーブルの向こう側から先輩が腕を伸ばして、まだ不貞腐れた顔をしてる私の頭をワシャワシャと撫でてきた。
 先輩は困った顔をしていたけど、それは何処か苦笑いが含まれた表情だった。

「お前を放置してたら何するかわからなくて心配だから、海やバーベキューに行く時は声かけろよ」
「……え」
「スキーはお前のテスト結果次第だな。悪かったら中止だ」

 先輩のその言葉に私の瞳に期待が浮かぶ。
 それって……

「……私と色んな所に行ってくれるってことですか?」

 私のその問いに対して、先輩は少しはにかんだ様子になった。

「…お前と一緒ならどこでも楽しいからな」
「……先輩」
「なんだ?」
「好きです」

 これ以上好きにさせてどうするつもりなの私の彼氏様。
 さっきまでへそを曲げていたというのに私はなんてちょろい女なんだ。もう機嫌が治った。
 今無性に先輩に抱きつきたい気分である。

「先輩。やっぱりこの後お部屋行きます。イチャイチャを所望します。この間先輩は違うことしてきたので、今日はハグとキスでお願いします」
「…お前は俺に我慢しろと言いたいのか」
「我慢してるのは先輩だけじゃありません!」

 先輩はムッとした顔で私を軽く睨んできた。なんで睨むのよ! いいじゃないハグとキス! 心満たされるじゃないのよ! 先輩不足を補わせてくれよ!
 両手をグーにしてだしだしだし、と軽くテーブルを叩いて不満を訴えていると、再び電子音が鳴った。

【ピローン! ピローン!】
《ご注文の品をお受け取りください》

 既に届いていた注文のお寿司。気づかなかった。「早く取れよ」と電子音声が注意してきたので慌ててお寿司を取った。




 その後、先輩のお家で私の希望通りにイチャイチャしてもらった。
 フローリングに敷かれたラグの上に座る先輩の膝の間に体育座りをしてもたれ掛かる。後ろに座っている先輩の腕で私の身体を包み込むようにして抱きしめてもらった。
 前に回ってきている彼の手を握って、私は幸せを感じていた。こうすると守られている感じがするから。こうして先輩と2人きりの部屋でテレビ見ながら、のんびりまったりするのが好きなのだ。

 だがしかし、その幸せな時間は15分くらいで終わってしまった。他でもない彼によってその手をやんわり解かれたのだ。
 手を振り払うかのような動作に不安を感じた私は振り返って先輩を見上げる。すると先輩は私の膝裏に腕を回してきた。…もしかして膝抱っこしてくれるのかな? と思ったら違った。
 彼は私を抱き上げると迷いなくベッドに向かい、ゴロンとベッドの上に私を転がしたのだ。

 今何が起きたのかわからずに、彼の顔をポカンと見上げたのだが、先輩のお目々は肉食獣そのものの目をしていらっしゃった。

「先輩、ハグとキスがいいって!」
「してるだろ。…そんなに嫌か?」
「だって恥ずかしいんですもん!」
「大丈夫……可愛いから」
「…もうっ先輩のエッチ! 馬鹿! …好き!」

 恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ!
 先輩に宥められるようにキスされて、可愛いと言われてしまったらもう私は抗えない。もー! 好き!

 結局、先輩にあんな事やこんな事をされてしまった。
 どうやら我儘になったのは私だけじゃないらしい。先輩も我儘である。
 そしてそんな先輩も好きな私は重症なのかもしれない。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

処理中です...