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番外編
パンケーキタイム【雅ちゃんVS花恋ちゃん】
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※このお話は友情ものです。GLではございません。
あやめ大学1年の時のお話。
ーーーーーーーーーーー
「……本当にごちそうになってもいいの…?」
「なんでも頼んで!」
「あやめは恩人だからな」
そう言ってメニュー表を差し出してきた花恋ちゃんと蓮司兄ちゃんはお互いの顔を見て仲睦まじく笑い合っていた。
気づいているぞ、テーブルの下で手を繋いでいるんだろ。やーらしか。
先日、蓮司兄ちゃんのデモデモダッテによって拗れかけた2人の仲だが、私の介入によって丸く大団円となった。
その事で御礼をさせてくれと二人に言われて連れてこられたのは最近オープンしたパンケーキショップだ。ここ英恵さんが好きそうだな。今度教えてあげよう。
メニュー表を見ると、カロリーの暴力の数々。私はギュッと目をつぶったが、今日は特別、2人の厚意を無下にしてはいけないと自分に言い聞かせた。
「…あやめさん?」
「え……あっ!」
私がメニュー表を睨みつけていると、横から鈴の鳴るような可愛らしい声がかけられた。私が首をそちらへ向けると、お嬢様学校である聖ニコラ女学院の制服を身にまとった、大和撫子の姿があった。
「雅ちゃん!!」
彼女を視界に入れたその瞬間から、私の世界に光が満ち溢れた。
私のアイドルにして永遠の推し、小石川雅は今日も可憐で美しく、とってもかわいい! 雅ちゃんと会えるなんてツイてる! 私と雅ちゃんは運命で結ばれているのかもしれない!
私はテーブルを立ち上がるとしっぽを振って近づく子犬のように雅ちゃんに話しかけた。
「どうしたのどうしたの? 友達とお茶に来たの?」
「いえ、あやめさんによく似た方がいるなと思って見ていたら、ご本人だったのでご挨拶を、と思いまして」
そう言うと、雅ちゃんは私の対面席に座っていた2人に視線を向けてにっこり微笑んだ。
蓮司兄ちゃんは目を丸くして雅ちゃんを見上げており、花恋ちゃんはなんだかムッとした顔をしていた。
「こんにちは。…こちらはあやめさんのご親類の方?」
「うん、父方の従兄。最近花恋ちゃんと交際を始めたんだ」
私に似ているからすぐに血縁者だと察した雅ちゃんは軽く頭を下げて「はじめまして、小石川雅と申します。あやめさんにはいつも仲良くしていただいておりますわ」とご丁寧に挨拶をしてくれた。
対する蓮司兄ちゃんは「はぁ、田端蓮司です…どうも」しどろもどろながらに挨拶をし返していた。なんだその頼りない挨拶。しゃきっと挨拶してよね。雅ちゃんだぞ!
蓮司兄ちゃんのヘタレな挨拶はどうでもいい。目の前の雅ちゃんのほうが優先である。推しのほうが大事。
「雅ちゃん、時間があるなら一緒にお茶しようよ!」
「あら…よろしいのかしら…ご一緒しても?」
バカップルに紛れておやつ食べるのも息苦しいし、雅ちゃんと会えたのにここでお別れはなんだか嫌だ。今日は私に対するお礼なのだから少しばかりのワガママも許されるはず。
いいよね? と目の前の2人に確認すると、2人は頷いていた。心配するな。私もちゃんとお金は出す。2人分奢らせたりはしないから。
私は雅ちゃんとシェアするために別々のパンケーキを頼んだ。私は季節の果物をふんだんに乗せたパンケーキで、雅ちゃんは小豆と抹茶生地のパンケーキを選択していた。
「まぁ、お2人は同じ大学なのですか? …本橋さんは、蓮司さんがあやめさんによく似た殿方だから心惹かれましたのかしら?」
「…そういうわけじゃないよ? ちゃんと蓮司さんを好きになったの。…きっかけはあやめちゃんだけど、今はそうじゃない」
「あらそうですの、仲がよろしくて何よりですわ。惚気に当てられてしまいそうです」
パンケーキの出来上がりを待つ間、おしゃべりを…と思っていると、雅ちゃんが2人の馴れ初めを聞いていた。その問いに対して花恋ちゃんは硬い表情で否定していた。
まぁそれで拗れに拗れたからね。きっちり否定しておかないとまた拗れそうだもんね。
花恋ちゃんが見せつけるように蓮司兄ちゃんにくっついているけど、雅ちゃんは別に蓮司兄ちゃんを狙ったりしていないよ。雅ちゃんには婚約者がいるし。水を差すような真似になるから敢えて言わないけど。
「お待たせいたしました。季節の果物のパンケーキのお客様」
しばらくしてパンケーキが到着した。私は口を付ける前に切り分けて、雅ちゃんのお皿におすそ分けした。
雅ちゃんも切り分けた小豆抹茶のパンケーキをおすそ分けしてくれた。シロップは黒蜜一択である。
「美味しいね」
「ふふ、あやめさんたら口の端に生クリームがついておりますよ」
雅ちゃんは女神のような麗しい微笑みを浮かべると、ナプキンを手にとって私の口元を拭った。
「あ、ありがとう」
雅ちゃんが私の口元拭ってくれたぁ~! やだぁドキドキするー!
なんだろ、前世の私どれだけ徳を積んだんだろ。神様がいい子の私を彼女に出会わせるために導いてくれたに違いないわー!
えへえへと笑っていると、目の前に座った蓮司兄ちゃんが「あやめ、顔が崩れてるぞ」と余計な一言を言ってきたので、テーブル下で蓮司兄ちゃんの足を軽く蹴っておいた。
蓮司兄ちゃんが呻いていたけど知らないふりをしておいた。
「……あやめちゃん、はい、あーん」
「…えっ?」
「ほらほら、美味しいよ」
夢心地でふわふわしながらパンケーキを食べていると、目の前にずいっとチョコレートホイップの乗ったパンケーキを突きつけられた。花恋ちゃんが席を立って斜め右からパンケーキを突きつけてきたのだ。
私が固まっていると、焦れた花恋ちゃんが更にそれを近づけてきたので、ホイップがべちゃりと口元についてしまった。仕方がないのでそれを食べた。
私が咀嚼する様子を花恋ちゃんが息を呑んだ様子で眺めている。そんなに見られると食べにくいんだけどな……
「おい…田端あやめお前ぇ…」
ごくん、とパンケーキを飲み込んだタイミングで、地を這うような…まるで呪詛を含むようにフルネームを呼ばれた。
聞き覚えのある声だ。
…気づかないうちにテーブル席の真横に立ってたのは、先日3回目の失恋を記録更新した、間先輩であった。
「……どうも、お元気そうでなによりです」
「お前はホント呑気だよなぁ…相変わらず人の癇に障ることばかりしやがって……ホント目障りだな」
この人は出会い頭に喧嘩を売ってくる癖をいい加減に直したほうが良い。チンピラもいいところである。
人の癇に障るって…今の花恋ちゃんによる「はい、あーん」のことを言っているのか? そうだとしたら誤解である。
「パンケーキは色んな味をシェアしながら食べると、倍美味しいんですよ!」
「チッ」
「女に嫉妬して情けないと思わねぇの? お前…」
目に余る態度に蓮司兄ちゃんが呆れた声で指摘するも、恋敵を睨みつけた間先輩はイライラした様子でこう言った。
「俺はお前のことを認めてないからな…!」
「お前に認められなくても結構だよ」
蓮司兄ちゃんを親の敵のごとく睨みつける間先輩はなんだか…とても哀れに見えた。
間先輩が認めなくても2人が彼氏彼女な関係なのは紛れもない事実。どんなに反対しようと引き裂けないのである。
3度めの失恋を経ても変わらない花恋ちゃんへの恋心。一途っちゃ一途だけど、諦めが悪すぎてちょっと怖い。
「…間様、ごきげんよう。お久しぶりですわね」
「…お前、志信の」
「えぇ、一応婚約者の小石川でございます。類は友を呼ぶのかしら、あなたもこちらの本橋さんにただならぬ感情を抱かれておりますのね」
雅ちゃんの婚約者である伊達先輩も花恋ちゃんに想いを抱いていた1人。今はどうか知らないけど、彼らは友人同士にして恋のライバル同士でもあった。友人同士って好みが合うのか、それとも乙女ゲームの呪いかな…
「お前まさか、花恋になにか危害を加えるつもりじゃないだろうな?」
「まさか。そんな事致しませんわ」
心外とばかりに雅ちゃんは顔をしかめた。
失礼な。雅ちゃんは何もしていない。雅ちゃんはどんな時でも正々堂々とした素晴らしい女の子だよ。
陽子様という婚約者がおりながら、フラフラしている間先輩が言えることじゃないぞ。
「間先輩! そういうところですよ! 間先輩はこうしてカッコつけようとしてますけど、中身がスカスカなんです! 行動に説得力がないんです! 婚約者がいるってのに、ケジメも付けないで花恋ちゃんに告白したりして……ホントそういう所情けないです。これ伊達先輩にも言えることですけどね!」
「うるせぇよ! お前には関係ないだろ!」
愛のない婚約だとしても、本当に失礼だぞ! 婚約者にしても、想い人にしても!
私のアイドルを侮辱することは許さん。雅ちゃんファンクラブ第一号の私が直々にお相手するぜ!
「間先輩は今、雅ちゃんを侮辱しました! 間先輩は偉そうに言える立場ではないのです。非礼を詫びるべきです!」
「あ゛ぁ!?」
間先輩が威嚇してきた。
この人一応良いところの坊っちゃんのはずなのにガラが悪いんだよなぁ。どういう育て方されたんだ。
私も口が悪くなることあるから人のこと言えないけどさ…。でも好きな女の子の前でその態度はマズいと思うんだ……
「雅ちゃんはとても素敵な女の子です! 今この場で謝罪してください。間先輩はレディに対する態度が本当にひどすぎますよ!」
「…いいんです、あやめさん。時間の無駄ですわ。こんな人は放って置いて、パンケーキを食べましょう。できたてが一番美味しいのですから」
私は怒りが収まらなくて間先輩を睨みつけていたが、雅ちゃんがなだめるように腕を引いてきた。……彼女にそう言われたら引くしかない。
だが間さんよ、あんたは雅ちゃんに謝るべきだ。証拠もないのに疑ってかかるところとか本当最低だからな。
「あやめさん、ほら、あーん」
「むぐ」
私が渋い顔をしていたからか、雅ちゃんがめちゃくちゃかわいい笑顔で切り分けたパンケーキを差し出してきた。
口を開ける間もなく押し付けられたので、私はそれを黙って食べた。
「美味しいですか?」
「あやめちゃん! 私のももっとあげるよ!」
どうした雅ちゃん、それに花恋ちゃんも。
私はひな鳥のごとくパンケーキを口に放りこまれた。目の前で蓮司兄ちゃんが笑いながらそれを撮影している。それ後で消してね。それより二人を止めてよ。
待って、そんなに食べられない。美味しいけど色んな味がミックスされてなにがなんだか……
気がついた時には私は一人前以上平らげていた。
そして、先程まで騒いでいた間先輩の姿はどこかへと消えていた。
何故か最後まで雅ちゃんと花恋ちゃんが対抗心を燃やしており、「私が食べさせたパンケーキのほうが美味しいよね?」と2人に聞かれたときはすごく困った。
──その後、私は体重が増えていた。
あやめ大学1年の時のお話。
ーーーーーーーーーーー
「……本当にごちそうになってもいいの…?」
「なんでも頼んで!」
「あやめは恩人だからな」
そう言ってメニュー表を差し出してきた花恋ちゃんと蓮司兄ちゃんはお互いの顔を見て仲睦まじく笑い合っていた。
気づいているぞ、テーブルの下で手を繋いでいるんだろ。やーらしか。
先日、蓮司兄ちゃんのデモデモダッテによって拗れかけた2人の仲だが、私の介入によって丸く大団円となった。
その事で御礼をさせてくれと二人に言われて連れてこられたのは最近オープンしたパンケーキショップだ。ここ英恵さんが好きそうだな。今度教えてあげよう。
メニュー表を見ると、カロリーの暴力の数々。私はギュッと目をつぶったが、今日は特別、2人の厚意を無下にしてはいけないと自分に言い聞かせた。
「…あやめさん?」
「え……あっ!」
私がメニュー表を睨みつけていると、横から鈴の鳴るような可愛らしい声がかけられた。私が首をそちらへ向けると、お嬢様学校である聖ニコラ女学院の制服を身にまとった、大和撫子の姿があった。
「雅ちゃん!!」
彼女を視界に入れたその瞬間から、私の世界に光が満ち溢れた。
私のアイドルにして永遠の推し、小石川雅は今日も可憐で美しく、とってもかわいい! 雅ちゃんと会えるなんてツイてる! 私と雅ちゃんは運命で結ばれているのかもしれない!
私はテーブルを立ち上がるとしっぽを振って近づく子犬のように雅ちゃんに話しかけた。
「どうしたのどうしたの? 友達とお茶に来たの?」
「いえ、あやめさんによく似た方がいるなと思って見ていたら、ご本人だったのでご挨拶を、と思いまして」
そう言うと、雅ちゃんは私の対面席に座っていた2人に視線を向けてにっこり微笑んだ。
蓮司兄ちゃんは目を丸くして雅ちゃんを見上げており、花恋ちゃんはなんだかムッとした顔をしていた。
「こんにちは。…こちらはあやめさんのご親類の方?」
「うん、父方の従兄。最近花恋ちゃんと交際を始めたんだ」
私に似ているからすぐに血縁者だと察した雅ちゃんは軽く頭を下げて「はじめまして、小石川雅と申します。あやめさんにはいつも仲良くしていただいておりますわ」とご丁寧に挨拶をしてくれた。
対する蓮司兄ちゃんは「はぁ、田端蓮司です…どうも」しどろもどろながらに挨拶をし返していた。なんだその頼りない挨拶。しゃきっと挨拶してよね。雅ちゃんだぞ!
蓮司兄ちゃんのヘタレな挨拶はどうでもいい。目の前の雅ちゃんのほうが優先である。推しのほうが大事。
「雅ちゃん、時間があるなら一緒にお茶しようよ!」
「あら…よろしいのかしら…ご一緒しても?」
バカップルに紛れておやつ食べるのも息苦しいし、雅ちゃんと会えたのにここでお別れはなんだか嫌だ。今日は私に対するお礼なのだから少しばかりのワガママも許されるはず。
いいよね? と目の前の2人に確認すると、2人は頷いていた。心配するな。私もちゃんとお金は出す。2人分奢らせたりはしないから。
私は雅ちゃんとシェアするために別々のパンケーキを頼んだ。私は季節の果物をふんだんに乗せたパンケーキで、雅ちゃんは小豆と抹茶生地のパンケーキを選択していた。
「まぁ、お2人は同じ大学なのですか? …本橋さんは、蓮司さんがあやめさんによく似た殿方だから心惹かれましたのかしら?」
「…そういうわけじゃないよ? ちゃんと蓮司さんを好きになったの。…きっかけはあやめちゃんだけど、今はそうじゃない」
「あらそうですの、仲がよろしくて何よりですわ。惚気に当てられてしまいそうです」
パンケーキの出来上がりを待つ間、おしゃべりを…と思っていると、雅ちゃんが2人の馴れ初めを聞いていた。その問いに対して花恋ちゃんは硬い表情で否定していた。
まぁそれで拗れに拗れたからね。きっちり否定しておかないとまた拗れそうだもんね。
花恋ちゃんが見せつけるように蓮司兄ちゃんにくっついているけど、雅ちゃんは別に蓮司兄ちゃんを狙ったりしていないよ。雅ちゃんには婚約者がいるし。水を差すような真似になるから敢えて言わないけど。
「お待たせいたしました。季節の果物のパンケーキのお客様」
しばらくしてパンケーキが到着した。私は口を付ける前に切り分けて、雅ちゃんのお皿におすそ分けした。
雅ちゃんも切り分けた小豆抹茶のパンケーキをおすそ分けしてくれた。シロップは黒蜜一択である。
「美味しいね」
「ふふ、あやめさんたら口の端に生クリームがついておりますよ」
雅ちゃんは女神のような麗しい微笑みを浮かべると、ナプキンを手にとって私の口元を拭った。
「あ、ありがとう」
雅ちゃんが私の口元拭ってくれたぁ~! やだぁドキドキするー!
なんだろ、前世の私どれだけ徳を積んだんだろ。神様がいい子の私を彼女に出会わせるために導いてくれたに違いないわー!
えへえへと笑っていると、目の前に座った蓮司兄ちゃんが「あやめ、顔が崩れてるぞ」と余計な一言を言ってきたので、テーブル下で蓮司兄ちゃんの足を軽く蹴っておいた。
蓮司兄ちゃんが呻いていたけど知らないふりをしておいた。
「……あやめちゃん、はい、あーん」
「…えっ?」
「ほらほら、美味しいよ」
夢心地でふわふわしながらパンケーキを食べていると、目の前にずいっとチョコレートホイップの乗ったパンケーキを突きつけられた。花恋ちゃんが席を立って斜め右からパンケーキを突きつけてきたのだ。
私が固まっていると、焦れた花恋ちゃんが更にそれを近づけてきたので、ホイップがべちゃりと口元についてしまった。仕方がないのでそれを食べた。
私が咀嚼する様子を花恋ちゃんが息を呑んだ様子で眺めている。そんなに見られると食べにくいんだけどな……
「おい…田端あやめお前ぇ…」
ごくん、とパンケーキを飲み込んだタイミングで、地を這うような…まるで呪詛を含むようにフルネームを呼ばれた。
聞き覚えのある声だ。
…気づかないうちにテーブル席の真横に立ってたのは、先日3回目の失恋を記録更新した、間先輩であった。
「……どうも、お元気そうでなによりです」
「お前はホント呑気だよなぁ…相変わらず人の癇に障ることばかりしやがって……ホント目障りだな」
この人は出会い頭に喧嘩を売ってくる癖をいい加減に直したほうが良い。チンピラもいいところである。
人の癇に障るって…今の花恋ちゃんによる「はい、あーん」のことを言っているのか? そうだとしたら誤解である。
「パンケーキは色んな味をシェアしながら食べると、倍美味しいんですよ!」
「チッ」
「女に嫉妬して情けないと思わねぇの? お前…」
目に余る態度に蓮司兄ちゃんが呆れた声で指摘するも、恋敵を睨みつけた間先輩はイライラした様子でこう言った。
「俺はお前のことを認めてないからな…!」
「お前に認められなくても結構だよ」
蓮司兄ちゃんを親の敵のごとく睨みつける間先輩はなんだか…とても哀れに見えた。
間先輩が認めなくても2人が彼氏彼女な関係なのは紛れもない事実。どんなに反対しようと引き裂けないのである。
3度めの失恋を経ても変わらない花恋ちゃんへの恋心。一途っちゃ一途だけど、諦めが悪すぎてちょっと怖い。
「…間様、ごきげんよう。お久しぶりですわね」
「…お前、志信の」
「えぇ、一応婚約者の小石川でございます。類は友を呼ぶのかしら、あなたもこちらの本橋さんにただならぬ感情を抱かれておりますのね」
雅ちゃんの婚約者である伊達先輩も花恋ちゃんに想いを抱いていた1人。今はどうか知らないけど、彼らは友人同士にして恋のライバル同士でもあった。友人同士って好みが合うのか、それとも乙女ゲームの呪いかな…
「お前まさか、花恋になにか危害を加えるつもりじゃないだろうな?」
「まさか。そんな事致しませんわ」
心外とばかりに雅ちゃんは顔をしかめた。
失礼な。雅ちゃんは何もしていない。雅ちゃんはどんな時でも正々堂々とした素晴らしい女の子だよ。
陽子様という婚約者がおりながら、フラフラしている間先輩が言えることじゃないぞ。
「間先輩! そういうところですよ! 間先輩はこうしてカッコつけようとしてますけど、中身がスカスカなんです! 行動に説得力がないんです! 婚約者がいるってのに、ケジメも付けないで花恋ちゃんに告白したりして……ホントそういう所情けないです。これ伊達先輩にも言えることですけどね!」
「うるせぇよ! お前には関係ないだろ!」
愛のない婚約だとしても、本当に失礼だぞ! 婚約者にしても、想い人にしても!
私のアイドルを侮辱することは許さん。雅ちゃんファンクラブ第一号の私が直々にお相手するぜ!
「間先輩は今、雅ちゃんを侮辱しました! 間先輩は偉そうに言える立場ではないのです。非礼を詫びるべきです!」
「あ゛ぁ!?」
間先輩が威嚇してきた。
この人一応良いところの坊っちゃんのはずなのにガラが悪いんだよなぁ。どういう育て方されたんだ。
私も口が悪くなることあるから人のこと言えないけどさ…。でも好きな女の子の前でその態度はマズいと思うんだ……
「雅ちゃんはとても素敵な女の子です! 今この場で謝罪してください。間先輩はレディに対する態度が本当にひどすぎますよ!」
「…いいんです、あやめさん。時間の無駄ですわ。こんな人は放って置いて、パンケーキを食べましょう。できたてが一番美味しいのですから」
私は怒りが収まらなくて間先輩を睨みつけていたが、雅ちゃんがなだめるように腕を引いてきた。……彼女にそう言われたら引くしかない。
だが間さんよ、あんたは雅ちゃんに謝るべきだ。証拠もないのに疑ってかかるところとか本当最低だからな。
「あやめさん、ほら、あーん」
「むぐ」
私が渋い顔をしていたからか、雅ちゃんがめちゃくちゃかわいい笑顔で切り分けたパンケーキを差し出してきた。
口を開ける間もなく押し付けられたので、私はそれを黙って食べた。
「美味しいですか?」
「あやめちゃん! 私のももっとあげるよ!」
どうした雅ちゃん、それに花恋ちゃんも。
私はひな鳥のごとくパンケーキを口に放りこまれた。目の前で蓮司兄ちゃんが笑いながらそれを撮影している。それ後で消してね。それより二人を止めてよ。
待って、そんなに食べられない。美味しいけど色んな味がミックスされてなにがなんだか……
気がついた時には私は一人前以上平らげていた。
そして、先程まで騒いでいた間先輩の姿はどこかへと消えていた。
何故か最後まで雅ちゃんと花恋ちゃんが対抗心を燃やしており、「私が食べさせたパンケーキのほうが美味しいよね?」と2人に聞かれたときはすごく困った。
──その後、私は体重が増えていた。
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