太陽のデイジー 〜私、組織に縛られない魔術師を目指してるので。〜

スズキアカネ

文字の大きさ
107 / 209
Day‘s Eye 魔術師になったデイジー

物々しい雰囲気【三人称視点】

しおりを挟む
 ハルベリオン軍のエスメラルダ侵攻の情報はまたたく間に広まった。普段はのどかな獣人村には王国の役人や職員が集まって物々しい雰囲気となっていた。
 捕まえた敵国の兵士並びに魔術師は拘束されたまま、エスメラルダ王国王都へ輸送して然るべき対応を取られることになった。
 逃げた魔術師の行方は未だ不明。

 この侵攻を危険視したエスメラルダ王国国王はハルベリオンへ向けて抗議を送った。両国は直接戦争を行ったことは無いが、これによって完全に敵対国と認定された事になった。
 この異変にいち早く気づき、隣国シュバルツから飛んできた貴族令嬢は激しい戦闘の末、大怪我・魔力枯渇による衰弱を起こして現在昏睡中である。詳しい話は昏睡中の令嬢が目覚めた後にでも確認する必要があるが、村人複数名が状況説明してくれているので、大方把握は済んでいた。

 南の国グラナーダにて、何者かによる獣人狩りが行われたのはエスメラルダ王国の一部でも噂になっていた。
 ──ハルベリオンがドラゴンの妙薬を欲しがっていることはその前から把握していた。……それでもひとつだけ、どうしても理解できない事。
 竜人の肉を食べたとしても、病は治癒しない。竜人とドラゴンは似て非なるもの。
 それなのにハルベリオンはそれを欲しているのだという。


 今まで決して警戒を怠っていたわけではない。だが、今回のことでエスメラルダ全体の緊張は高まった。

 戦火の火種は、いつ燃え出してもおかしくない、そんな状況へと移り変わっていた。


■□■


 落ち着かなさそうに一軒の家の前でそわそわする青年の姿があった。
 朝には摘みたての花を持ってきて、昼休みには職場を抜け出し、八百屋に並んでいた果物を差し入れる。そして夜には眠る彼女に付き添って、深夜には彼女の兄によって力技で追い出されるという日々をここ5日程続けていた。

 ベッドの住人となっている彼女は以前にも魔力切れで昏睡に陥ったことがあるが、今回は負傷による体への負担もあったため、昏睡からなかなか目覚めなかった。 
 そんな青年の姿を見ていた丸眼鏡の女は苦笑いしていた。

「大丈夫だって、私ら魔術師にはよくある魔力切れだし、もう幼い子どもじゃないから寝てれば回復するって」

 マーシアがそう声かけると、青年テオは視線をちらりと向け、耳と尻尾をへにょんとさせていた。

「私が毎日治癒魔法かけているから深刻に考えなくていいよ。デイジーは大怪我負ったから休養が必要なの」

 水分や栄養は医療機器を使って流しているから衰弱死することはない、と彼女は言うが、テオの不安は解消されないらしい。
 マーシアは空へと視線を向けると、腰に手を当てて息を吐き出した。

「デイジーは1人でなんとかしようとする子だからねぇ」

 学生時代もそうだった、としみじみと呟く。
 あとちょっとで命を落とすところだったのに、それでも死ぬまで戦おうとするデイジー。
 捨て子だったのは間違いで、行方不明になった貴族令嬢だったという話を聞かされていたマーシアだったが、彼女にとってデイジーは変わらず年下の友人のままであった。

「シュバルツの神殿から転送術使ってきたんだってよ。何度か結界に阻まれて大変だったろうに……なんとしてでも大切な人達を守りたかったんだろうね」

 こちら側にも怪我人は出たが、死者が出なかったのは幸運だった。
 実際に戦闘してわかった。逃亡を許してしまったハルベリオンの魔術師の男は一味違う。デイジーがいなければ恐らく、獣人の村は全滅していたであろう…

「ギャウッ」

 犬の悲鳴のような音が聞こえて彼らは視線をそちらに向ける。メイとジーンと名付けられた、デイジーの眷属である姉弟狼だ。彼らは術者に戻るように言われていないため、そのままここに残っていた。

「ジーン、またオヤツとられたの?」

 オヤツの鹿干肉を奪われた弟狼がガウガウ鳴いてマーシアに助けを求めていた。

「お姉ちゃんに負けるってどうなの、でっかい子どもだなぁジーンは」

 弟に容赦ない姉狼メイは、弟を冷酷に睨み付けながら奪い取った鹿肉をムチャムチャと食べている。食は戦争なのだと言わんばかりの暴君ぶりである。まさに弱肉強食を地で行っている。
 見た目はおっかない野生の狼だが、デイジーと眷属の契約を結んでいるため、彼らは飼い犬にも見えた。

 マーシアは通心術を使って彼らと意思疎通できるようにしているので、彼らと話ができるが、テオからしてみたら不思議な光景である。
 一応、狼獣人のテオにも狼の血が流れているのだが、流石に狼の言葉はわからない。楽しそうに戯れる彼らを見ながら、テオは少しばかり疎外感に襲われていた。

 テオもマーシアも通常ならデイジーの看病のために側についていることが多いのだが、今は外で待機していた。
 なぜなら、シュバルツからデイジーの身内が駆けつけてきたからである。涙を流したフォルクヴァルツ夫人は娘の側から離れたくないと言って、娘の看病を申し出てきたのだ。
 デイジーを休ませているマック家は普通の民家なので大勢の人が入らない。よって縁者ではない彼らは遠慮して外にいるのである。


「──君、ちょっといいかな」

 静かに呼びかけてきたのは、デイジーの実兄であるディーデリヒだ。
 それに反応したのはテオである。マーシアは会ったことのない、しかし友人によく似た貴族青年を怪訝に見上げていたが、彼が呼んだのはテオの方らしく、マーシアの方には一切視線を向けない。

「話があるんだ。…アステリアのことで」
「……いいですけど」

 彼らは真剣な表情でお互い見つめ合うと、黙ったままどこか別の場所へと移動していった。
 取り残されたマーシアはといえば、ジーンの頬を手のひらでもふもふしながら黙ってそれを見送っていた。


□■□


 彼らは人気のない森の奥深くへとやって来ていた。ここは、赤子だったデイジーが見つかったとされる場所である。

「妹には…アステリアには抱えるものが多い。両親の前ではこのようなことは言えないが……ただの村娘でいたほうがきっと幸せだっただろうな…」

 ディーデリヒはそう言って、動かしていた足を止めた。それに合わせてテオも立ち止まる。

「いつか、また牙を剥くだろうとは思っていたが……ハルベリオンが動き始めた。これから間違いなく荒れるぞ」

 この国も。と独り言のようにつぶやくと、ディーデリヒは森の中をグルリと見渡した。そして後ろにいるテオを見上げる。

「テオ・タルコット君。君は我が妹に恋情を抱いている。…間違っているかな?」

 単刀直入な問いかけだ。
 ディーデリヒの瞳の色がデイジーと同じだったので、テオはその色を直視して声が出なくなりそうになったが「間違っていない」と首を横に振った。
 元々気づいていたが、確認のためだけにただ聞いてみただけのディーデリヒは小さく頷く。

「しかし、私はそれを認めてやることはできない」

 ディーデリヒがよく思っていないことにテオは気づいていた。だからそう言われるのは予想していた。

「話に聞くと君には運命の番がいるのだろう。アステリアを裏切る恐れがあるのであれば、私はそれを邪魔させてもらう」
「それはっ…」

 テオが言い募ろうとするが、ディーデリヒは手で制した。そして想い人に似たその瞳を細めて冷たく言い放つのである。

「君は小さな村の住民で、あの子はフォルクヴァルツ辺境伯の娘。幼い頃の恋だと思って…諦めたほうがいい」

 村娘として育った彼女が貴族の娘だとわかって、強制的に引き離されたというのに。その兄だという男から言われた言葉にテオは苛立った。長年温め続けてきた想いを否定されたような気分だった。

「あんたに何が分かる…!」

 テオもデイジーと同じ17歳。もう幼い子どもではない。感情的になって飛びつきそうな衝動を抑えるくらいには成長した。仮にも相手は想い人の兄。そして人間だ。テオは色々言いたいことがごちゃごちゃしているのを抑え込んで、睨みつけるにとどめた。
 ディーデリヒはテオの心中なぞお構いなしとばかりに、冷たい言葉を投げかける。

「だが君は運命の番である娘にも惹かれているだろう。同じ狼獣人の娘に。仮にアステリアと結ばれてどうする? 人間と獣人、貴族と平民がうまくいくとでも思っているのか?」

 その言葉に冷や水を浴びせられた感覚に襲われた。テオはぴしりと固まり、その顔からは徐々に血の気が引いていく。

「まだ過去の遺恨は残っているというのに、祝福されるとでも思っているのか? アステリアは貴族の娘だぞ。王太子殿下との婚約話も復活する可能性だってある」

 ぐっと握りしめたその手は震えていて、ぎりぎり音が聞こえてきそうだ。テオは苦悩の表情を浮かべていた。

 毎週、運命の番だというレイラはテオに会いに来る。だけどテオは本能を抑え込んで彼女の好意に応えずにいた。
 運命の番への衝動だけで暴走するのは違うと冷静な自分がささやくのだ。テオが番にしたいのはデイジーなのに、手の届かない相手になってしまったことでテオは苦悩していた。

 運命の番。その渇望は獣人でなければわからないことであろう。
 人間とて身分差やその他の事情により報われない恋をするものがいるが……獣人のそれは呪いのようなものである。

 ディーデリヒはテオの苦悶の表情をじっと観察していたが、見飽きたようで鼻を鳴らすと踵を返した。村に戻るらしい。

「悔しかったら、運命の番の呪いを自ら解いてみろ。その上で妹に求婚するんだな」

 じゃなければ、絶対に認めない。
 妹には然るべき縁を結ばせる。

 脅し文句に似た言葉を吐き捨てたディーデリヒはテオを置き去りにして去っていった。

「…くそっ!」

 ダン! と近くにあった木の幹を殴りつけると、木の枝に留まっていた鳥たちが驚いて一斉に飛んでいく。
 テオだってわかっている。
 身分差がどうのと言う前にまず自分のことを精算しなくては、彼女に求婚する資格すら生まれないと。
 だが、運命の番という存在はテオの本能を高ぶらせ、飢餓感に陥れるのだ。レイラを前にすると、自分の中のケモノが暴れだしそうな衝動を抑えるので手一杯なのだ。

 テオの心はただひとりに向かっているはずなのに。こんなにもいとしいのは彼女だけなのに。

「テーオ!」

 その声にテオの肩はビクリと揺れた。
 甘ったるい香り。
 デイジーの柔らかいいつまでも嗅いでいたい甘い香りとは違う。まるではちみつや砂糖を煮詰めたような甘い匂いを持つのは運命の番の匂い。
 この香りを嗅ぐとテオの頭はぼうっとして、言おうとする言葉が出てこなくなるのだ。

「探したよ! なんでこんな森の中にひとりでいるの?」

 レイラはテオの腕に馴れ馴れしく抱きつくと、甘えるようにすり寄った。

「襲撃の件…大変だったね。テオに何事もなくてよかった…」

 運命の番というだけでフィルターが掛かったように相手が魅力的に映る。自分の本能の衝動に頭がおかしくなりそうだったが、歯を食いしばる。腕に絡みついた彼女の腕をそっとほどいた。

「……テオ?」

 不思議そうにテオを見上げたレイラは首を傾げた。
 同じ狼獣人のレイラ。テオに従順で好意的。魅力溢れる女性だ。運命の番と言ったら、獣人の夢また夢の存在。
 きっとテオのしようとすることは獣人として間違っているのだろう。

 だけどこれがテオ自身にとっては正しいことなのだ。

「……ごめん」

 彼女を拒む姿勢を見せたテオは、目を瞑って、デイジーを思い浮かべる。
 賢くて、努力家で、強がりゆえに無謀なところのある不器用な彼女……ふとした瞬間に見せる表情がたまらなく愛おしい。
 彼女の側にいるのは自分だと思ってきた。ここに来て側にはいられないとわかった瞬間、心が張り裂けそうだった。
 それでも彼女がテオにとっての唯一。
 運命とかそんなものを放り投げてでも、手に入れたい存在。

「悪い、俺はお前とは番えないんだ」

 テオはレイラと目をしっかり合わせた上で、お断りの言葉を告げたのである。

「俺には心に決めた女がいるんだ」

 レイラは目を大きく見開いて呆然としていた。それを見たテオは心が悲鳴を上げたかのようにひどく傷んだが、彼女をその場に残して踵を返した。

 誰かを傷つけてしまうとはわかっていた。
 それでも。
 テオは自分の恋心を裏切りたくなかったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...