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この恋に気づいて
魔なし【三人称視点】
しおりを挟むその世界には魔法が存在した。
魔法を操るための魔力を身に宿しものは【贈り物持ち】と呼ばれ、貴重な存在だった。国の庇護のもと魔術師として教育を受け、大切にされていた。
魔力をその身に宿せることはとても誉れなことであり、他とは違う存在として一目置かれることになる。
その中でも王侯貴族間の中では魔力至上主義な考えが色濃く残っており、魔術師家系にも関わらず魔力がない【魔なし】は血の繋がった家族からいないもの扱いをうけ、日陰の身として一生を送ることも少なくなかった。
魔なしは価値がないという烙印を押されていたのだ。
いないものとして神殿へ送られたり、養子として別の家に送られて一生を過ごす子どもが多い中、陽の光がかすかにしか届かない屋内で軟禁されて一生を送らされることもある魔なしの子どもも存在した。
彼らはその存在を外部に知られることなく一生を終える。
本来であればそんな扱いは許されることではないが、そんなことをするのはなまじ権力のある貴族だ。発覚しても周りからの干渉を跳ね除けてしまい、保護されるのは一握りだけ。
時代が変わっても貴族の中での魔なしへの差別は色濃く残っていた。
貴族として生まれたのであれば、魔力があって当然。魔なしは貴族に非ず。
──それが彼らの常識で矜持であったのだ。
◆◇◆
世間では不可解な失踪事件が起きていた。不定期に少女が行方不明になるのだ。
そんな中でまたひとり、少女が失踪したという情報が入ってきた。
魔法魔術学校を卒業したばかりの市井出身の少女が忽然と姿を消したというものだ。
「また、ですか」
「家出とかじゃないんですか? 田舎娘が都会に憧れて出帆する的な」
彼らは難しい顔をして、ずらりと並んだ若い娘たちの姿絵を眺めていた。
魔法魔術省と呼ばれる少々特殊な役所の中に集まる彼らは、魔法関連の事件や事故を取り扱う魔法犯罪取締課職員だ。今はここ数年国内で起きている連続失踪事件について調べているのだ。
「定期的に起きますね、失踪事件」
「最近は人数も増えてきて一気に3人いなくなったりするんだ」
──決まって魔法魔術学校に在学・もしくは卒業した娘が。
ひとりの呟きに、周りの人間は唸り声を漏らす。
年若い女性がある日突然いなくなって、数年後にポッと帰ってくる。その期間はまちまちだが、短くても1年とかその程度の期間を空けて戻ってくる。
「行方不明になっても数年後に帰ってくるんでしょ?」
戻ってくるのは、父親が誰だかわからない子どもを抱えた女だ。本人は何が起きたのか理解しておらず、精神薄弱になり、体調を崩したきり寝たきりになる。そのまま命を落とす娘もいる。
親兄弟が太ければなんとか養ってもらえるだろうが、こうなってしまったら嫁にもらってくれる相手も見つかるはずもなく。その後の人生を送るのには厳しい状況を受け入れざるを得ない。
「何も覚えてないってのが臭いんですよねぇ。禁忌の黒呪術でもかけられたんでしょうか」
「呪いの反応が無いから薬という可能性もある」
「呪いと判別されない魔術を開発している可能性も無きに非ずだ」
彼らはあーだこーだと自分の考えを口にする。
行方不明になった娘たちの中には将来を誓いあった恋人もいたのだ。その恋人にも言わずに消えるのは少々きな臭すぎて、事件を追ってきた彼らはこの先になにかとてつもなくやばいものが関わっているのではないかと考えていた。
「行方不明になるのが市井出身の未婚の娘ねぇ……」
「貴族は腐っても貴族だ。警備もあるし、外聞もあるから、娘に何かあれば大掛かりな捜索をするだろう。……攫うのには条件が悪いとかじゃないだろうか」
娘たちの姿絵を睨みつけていた隊長が口にする。
「だから、市井の娘を攫った」
そして何者かが娘を孕ませ、用無しだと捨て去った。その際に何らかの方法で記憶を消して証拠隠滅をはかった。
……なにか目的があって、魔力持ちの娘を孕ませた。
「その全てが魔力持ちの娘たちだと言うんだからな……」
失踪した娘から産まれて成長した子どもたちを色々検査したが、魔法のたぐいは検出されなかった。
追跡調査として子どもたちのその後も調査しているが、彼らの中で共通しているのが全員魔力が宿っていないということである。
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