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第一部
14:初対面の再会
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腕っぷしの強い冒険者であろうベイルを退け、見事大会の初戦を勝利したシノ。魔法の腕前だけではなく、接近戦の強さもこれで少しは示すことができただろうか?
もう昼を過ぎてからだいぶ時間も経つが、会場の熱気は未だ収まることを知らない。今年の大会は三十人近い参加者がいたようで、既に決勝目前といったところだ。
出場者も観客席に出入りできるため、シノはちょくちょく観客側として試合を観戦したりしている。
勝ち進んだ相手とどこかで当たることもあるし、見ておくことは大事だ。肝心の彼女は現在何をしているのかというと、
「――――――これで、御終いっ!!!」
「おわぁっ!?」
舞台の端で放った高速の足払いが大柄な男性のバランスを思いきり崩し、そのまま場外へ。
初戦の勝ちで勢いに乗ったのか、順調に大会を勝ち進んでおり、その度に観客席にいる村の皆からは歓喜の声があがっている。
これで今日は四勝目ぐらいになるだろうか? と、いうことは――――――
「勝負あり! 準決勝の勝者は、シノ・ミナカワさんに決定しました―!!!」
――――――なんと、いつのまにか決勝戦にまで駒を進めていたのである。初参加した大会でこれは大金星といえるだろう。
舞台両脇にある出場者の控え室へ戻ってくるや否や、続けて入ってきたローザはこれまでにない喜び様だ。というか、シノが勝つ度に此処へきている気がしないでもない。
「決勝戦……! ついにここまできましたね、シノさん!」
「まさかいきなり決勝までいけるとは思わなかったよ……」
「これもシノさんの実力ですよ。頑張ってくださいね!」
「ほんと、大会のことになると別人みたいだよねローザって」
「そ、それは別にいいんですっ」
ここまで瞳をキラキラさせてる彼女の姿は、さすがに見たことがなかったような気がする。
憧れがあるのがシノという個人に対してなのか、強い冒険者そのものに対してなのか。そこはよくわからないが、彼女自身が冒険者になるとか言い出さない限りは大丈夫だろう。
決勝前には少し長めの休憩があるため、今は控室で休んでいる最中だ。周りには他の出場者(敗退済み)が何人かおり、顔なじみの冒険者もいる。
「くっそぉー! 一撃で場外負けとか情けないったらねぇよ!」
「鼻の下伸ばして戦いにいくからだよ。シノさんに雄姿を見せる! なーんて」
「馬鹿! 本人の前で言うんじゃねぇよっ!」
……どうやら、負けて悔しがる理由は人それぞれのようだ。試合は結構連続して行われていたため、観客席にいる人もちらほら入れ替わる。
かくいうシノも、ローザが用意してきてくれたお弁当を食べるために客席から姿を消していた時間があったりした。
(ごめんね。多分、その試合見てないと思う……)
傍らで悔しそうにしている顔なじみの彼に、心の中で謝っておく。
伝統行事なわけだし、自分の姿を見てもらう目的で出場している人もそれなりにいそうだ。その中でも、シノの戦いぶりは観客からしてもひときわ目立っていたことだろう。
見てきた試合の中では、相手を降参させての決着がワリと多かったのだが、彼女は全ての試合を相手の場外負けで決めており、その立ち回りは観客の拍手喝采を幾度となく誘っていた。
そろそろ決勝戦が始まるのか、舞台の方からは歓声が聞こえてくる。
「まだ緊張してる? シノさん」
「さすがにもう慣れたかも」
周囲にいた知人の一人が声をかけてきたが、彼女は苦笑しつつも首を振ってみせた。ここまできてまだ緊張していたら決勝戦などやってられないだろう。
今までの試合と違って、決勝は決勝でまた違った緊張感こそあるとは思うが、何とか乗り切ってやるとしよう。
シノは大きく深呼吸をした後に控室で見守る皆を振り返って無言で頷くと、歓声渦巻く決勝の舞台へ歩いていくのだった。
◇
「――――――さぁ、今年の武道大会も遂に決勝戦となりました! この試合で、優勝と準優勝の栄冠が共に決されることとなります!」
舞台上には相変わらず威勢の良い司会者の大きな声が響いている。初戦から言葉には熱が入っていたが、決勝ともなると更にそれが増しているように思えた。
舞台中央へと進む最中、司会者が改めて双方の紹介を始めた。
「決勝戦の一人目は、ここまで全ての試合を場外負けで決し、華麗な戦いぶりを見せてくれた、クラド村のシノ・ミナカワさん!」
村の皆は当然のことだが女性の決勝進出者ということも手伝ってか、シノの名が呼ばれた途端、会場に大歓声が巻き起こる。
思えば勝つたびにこんな感じだったが、もう慣れてしまったようだ。思いっきりとまではいかないが、観客に対して両手を振ってアピールしてみせた。
「シノさーん! 頑張ってー!」
「最年長者の実力ってヤツを見せてやれー!」
既に観客側に回っている顔なじみ達からも応援の言葉が飛ぶ。これは、敗退した彼ら彼女らの分まで頑張らなければならない。
一週間前の不安そうな雰囲気はどこへいったのだろうか。その表情は幾分か晴れやかに思える。
「――――――対する二人目は、同じく全ての決着を場外負けで決め、風のように素早い試合運びを見せた旅の冒険者、ステラ・アーシェルさん!」
続けて名前が呼ばれ、決勝戦の相手が舞台へと姿を見せた。見ていない試合も中にはあったため、シノにとっては初めて名前を聞く相手だ。
そしてその姿があらわになった時、彼女の表情が文字通りあっと驚いたものへと変わった。
(あの人は、まさか……!?)
動きやすさを重視した革製の半袖上下服に、肌をあまり晒さないような黒インナー姿。髪は薄紫色のポニーテールだが、顔の上半分は着けている仮面で見えない。
だが、その姿にシノは確かな見覚えがあった。よもや見間違えなどではないだろう。
それはついこの前、仲間達と向かった魔物討伐依頼の最中に見かけた人物。
仮面で顔を隠して双剣を携えていた、あの女性冒険者だったのだから。
もう昼を過ぎてからだいぶ時間も経つが、会場の熱気は未だ収まることを知らない。今年の大会は三十人近い参加者がいたようで、既に決勝目前といったところだ。
出場者も観客席に出入りできるため、シノはちょくちょく観客側として試合を観戦したりしている。
勝ち進んだ相手とどこかで当たることもあるし、見ておくことは大事だ。肝心の彼女は現在何をしているのかというと、
「――――――これで、御終いっ!!!」
「おわぁっ!?」
舞台の端で放った高速の足払いが大柄な男性のバランスを思いきり崩し、そのまま場外へ。
初戦の勝ちで勢いに乗ったのか、順調に大会を勝ち進んでおり、その度に観客席にいる村の皆からは歓喜の声があがっている。
これで今日は四勝目ぐらいになるだろうか? と、いうことは――――――
「勝負あり! 準決勝の勝者は、シノ・ミナカワさんに決定しました―!!!」
――――――なんと、いつのまにか決勝戦にまで駒を進めていたのである。初参加した大会でこれは大金星といえるだろう。
舞台両脇にある出場者の控え室へ戻ってくるや否や、続けて入ってきたローザはこれまでにない喜び様だ。というか、シノが勝つ度に此処へきている気がしないでもない。
「決勝戦……! ついにここまできましたね、シノさん!」
「まさかいきなり決勝までいけるとは思わなかったよ……」
「これもシノさんの実力ですよ。頑張ってくださいね!」
「ほんと、大会のことになると別人みたいだよねローザって」
「そ、それは別にいいんですっ」
ここまで瞳をキラキラさせてる彼女の姿は、さすがに見たことがなかったような気がする。
憧れがあるのがシノという個人に対してなのか、強い冒険者そのものに対してなのか。そこはよくわからないが、彼女自身が冒険者になるとか言い出さない限りは大丈夫だろう。
決勝前には少し長めの休憩があるため、今は控室で休んでいる最中だ。周りには他の出場者(敗退済み)が何人かおり、顔なじみの冒険者もいる。
「くっそぉー! 一撃で場外負けとか情けないったらねぇよ!」
「鼻の下伸ばして戦いにいくからだよ。シノさんに雄姿を見せる! なーんて」
「馬鹿! 本人の前で言うんじゃねぇよっ!」
……どうやら、負けて悔しがる理由は人それぞれのようだ。試合は結構連続して行われていたため、観客席にいる人もちらほら入れ替わる。
かくいうシノも、ローザが用意してきてくれたお弁当を食べるために客席から姿を消していた時間があったりした。
(ごめんね。多分、その試合見てないと思う……)
傍らで悔しそうにしている顔なじみの彼に、心の中で謝っておく。
伝統行事なわけだし、自分の姿を見てもらう目的で出場している人もそれなりにいそうだ。その中でも、シノの戦いぶりは観客からしてもひときわ目立っていたことだろう。
見てきた試合の中では、相手を降参させての決着がワリと多かったのだが、彼女は全ての試合を相手の場外負けで決めており、その立ち回りは観客の拍手喝采を幾度となく誘っていた。
そろそろ決勝戦が始まるのか、舞台の方からは歓声が聞こえてくる。
「まだ緊張してる? シノさん」
「さすがにもう慣れたかも」
周囲にいた知人の一人が声をかけてきたが、彼女は苦笑しつつも首を振ってみせた。ここまできてまだ緊張していたら決勝戦などやってられないだろう。
今までの試合と違って、決勝は決勝でまた違った緊張感こそあるとは思うが、何とか乗り切ってやるとしよう。
シノは大きく深呼吸をした後に控室で見守る皆を振り返って無言で頷くと、歓声渦巻く決勝の舞台へ歩いていくのだった。
◇
「――――――さぁ、今年の武道大会も遂に決勝戦となりました! この試合で、優勝と準優勝の栄冠が共に決されることとなります!」
舞台上には相変わらず威勢の良い司会者の大きな声が響いている。初戦から言葉には熱が入っていたが、決勝ともなると更にそれが増しているように思えた。
舞台中央へと進む最中、司会者が改めて双方の紹介を始めた。
「決勝戦の一人目は、ここまで全ての試合を場外負けで決し、華麗な戦いぶりを見せてくれた、クラド村のシノ・ミナカワさん!」
村の皆は当然のことだが女性の決勝進出者ということも手伝ってか、シノの名が呼ばれた途端、会場に大歓声が巻き起こる。
思えば勝つたびにこんな感じだったが、もう慣れてしまったようだ。思いっきりとまではいかないが、観客に対して両手を振ってアピールしてみせた。
「シノさーん! 頑張ってー!」
「最年長者の実力ってヤツを見せてやれー!」
既に観客側に回っている顔なじみ達からも応援の言葉が飛ぶ。これは、敗退した彼ら彼女らの分まで頑張らなければならない。
一週間前の不安そうな雰囲気はどこへいったのだろうか。その表情は幾分か晴れやかに思える。
「――――――対する二人目は、同じく全ての決着を場外負けで決め、風のように素早い試合運びを見せた旅の冒険者、ステラ・アーシェルさん!」
続けて名前が呼ばれ、決勝戦の相手が舞台へと姿を見せた。見ていない試合も中にはあったため、シノにとっては初めて名前を聞く相手だ。
そしてその姿があらわになった時、彼女の表情が文字通りあっと驚いたものへと変わった。
(あの人は、まさか……!?)
動きやすさを重視した革製の半袖上下服に、肌をあまり晒さないような黒インナー姿。髪は薄紫色のポニーテールだが、顔の上半分は着けている仮面で見えない。
だが、その姿にシノは確かな見覚えがあった。よもや見間違えなどではないだろう。
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