ワールドマテリアルズ~転生先は、自分が原作者の異世界でした。

依槻

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第二部

57:噂に導かれて

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 武具屋夫妻の厚意によって一級品の武器を手にしたシノ。その後三人は、ひとまず情報を集めるために王都の中央地区へと向かっていた。
 王都には唯一ともいえる正式な冒険者ギルドが存在し、国からの重要な依頼などは此処でしか請け負う事ができない。クラド村でいうところの森の訪れなどは、一見すると冒険者ギルドっぽく見えるのがだその実そうではないということだ。どちらかといえば一般の依頼請負所と呼んだほうがいい。

「国からの依頼も集まってるということは、ドラゴンの討伐などもあったりするんでしょうか?」

「そうだね。だから、私達の村がある地方はほんとに平和な方だと思うよ。ドラゴンなんてまずいないし」

「逆に言うと、こっちの地方は平和とはいえないってことなのだけれど」

 昔王都に来た際に一度だけドラゴン討伐の依頼を受けたことはあったのだが、まさにそのまんまのイメージだった。五十メートルはあろうかというあの巨大さは、もしクラド村周辺の地方に現れでもしたら天災級となるに違いない。
 それを我先にと請け負っている王都の冒険者達はさすがといえるだろう。

 中央地区へ向かう車両の中、相変わらずリエルは外を流れる王都の風景に見とれているようだ。基本的にどの地区からでも中央へ向かうことが出来るように鉄道が走っており、その全体図は蜘蛛の巣のような形になっている。

「何か大きな建物が見えてきました! もしかしてあれが――――――」

「グランディア王国が運営する冒険者ギルドの本部だね」

「命知らずの溜まり場ともいうけれどね」

 リエルが指差した先に見えるのは、高さ五十メートルはあろうかと思われる大きな建物。グランディア王国の冒険者達の中枢である冒険者ギルドだ。
 近辺のあらゆる情報もここに集まってくるため、リエルを探していた頃のセリアもここで情報収集をしていたのかもしれない。
 ほどなくして中央地区へたどり着いた三人は、降りてすぐの場所にある冒険者ギルドへと向かった。いざ目の当たりにすると、その大きさに圧倒されてしまう。

「よし! ひとまず情報収集のための作戦会議といこうか」

「そうですね……これだけ冒険者の方が多いと、誰にどう訊くかも重要ですし」

「シノに釣られてあっちから情報持ってきてくれたら一番手っ取り早いのに」

「私は客寄せの看板娘じゃないっ」

 建物内に入ると、軽く千人以上はいそうな冒険者達の波を進んでゆく。擦れ違う人がたまにシノ達の方をチラリと見たりはしているが、そこまで気にはしていない様子だ。
 彼ら彼女らは、まさかペリアエルフが此処にいるだなんて思いもしていないのだろうか。それはそれで騒がれない分、都合はいいのだけれど。
 空いているテーブルを見つけると三人は席に着き、今後の予定や方針などを話し合い始めた。ギルド内の喧騒渦巻く中、そのまま数分ほど話していると、


「――――――失礼。隣、座ってもいいかしら?」


 誰かに声をかけられ、ちょうど隣の席が空いていたのでシノはそれに快く応じる。他の冒険者が情報交換を持ち掛けにきてくれたのだろうか? などと思っていると、隣に座った人物を見てシノは驚愕した。


「はい、構いませんよ――――――――って、あなたは……!?」


 薄紫のポニーテールに仮面で顔を隠した女性冒険者。ステラ・アーシェルその人だったのである。会えたらいいな程度にしか思っていなかったのだが、まさか此処で会うことができるとは思わぬ偶然である。

「お久しぶりね、シノさん。また会えて嬉しいわ」

「こちらこそ! お元気そうで、安心しました」

 凛としたその雰囲気は初めて会った時と変わらず、ベテラン冒険者の風格を感じさせていた。
 ステラの登場に驚いている二人に対して紹介してみせると、納得したようにそれぞれが頷く。

「二人もの精霊と友人になっているなんて……凄いわね。私も実際に見るのはかなり久しぶりかも」

「ほとんど成り行きって感じではありましたけどね。二人とも頼りになる子達ですよ」

「私はまだ修行中の身なので、頼りになるだなんてそんな……」

 リエルは少し謙遜こそしてしまっているが、シノはそんなことはないと首を振ってみせた。いつぞやのリューンベルの件では彼女の力あってこそ無事に解決することができたのだし。

「ふふんっ、そうでしょう! 未来の大精霊様をもっと崇めるといいわ」

 セリアの方はこんな時でも滲み出る傲慢さを隠そうともしていない。やっぱり彼女の本質はこっちのようである。ステラはそんな二人を見て少しだけ笑った。

「ステラさんは、いつ王都に来たんですか?」

「ここに着いたのは昨日ね。大口の依頼が無いか探しにきたのと、あとは……ある噂を聞いたから」

「ある噂……?」

 彼女は冒険者らしく依頼を探して王都にきたようなのだが、その後に続いたある噂という言葉が気になった三人の表情に疑問が浮かぶ。

「大陸の北側に山脈地帯があるでしょう? あの辺りで、大規模な魔力の乱れが観測されたらしいのよ」

「魔力の乱れ……ですか」

「ええ。なんでも、数百年に一度ともいえる規模だったそうで、それに纏わる良くない話も流れてきているわ」

 魔力の乱れというのは魔物が変異した時などに起こるとされているが、その規模がケタ違いと聞くと嫌な感じは拭えない。そして、良くない話と聞いて三人は更に訝しげな顔になる。

「良くない話というと……?」

 更にシノが訊ねたところ、ステラは仮面の上からでもわかるほど神妙な表情になるとこう言った。



「――――――――鋼の災厄についての噂よ」



 それを聞いたリエルとセリアは首を傾げていたが、シノは何かを思い出したような表情に変わる。その名称には憶えがあったからだ。いや、知っていると言ったほうが正しいだろうか。

「確かそれって、三百年ほど前に王都とその周辺を壊滅させたっていう……」

「王都が壊滅……!?」

「災厄って称されてることからして、穏やかじゃない感じね……」

 当時は撃退にこそ成功したものの討伐までには至らなかったらしい。今も世界のどこかで眠っているといわれており、まさに災厄と呼ぶに相応しいとてつもない存在だったと伝えられている。
 ステラが聞いた噂とは、その鋼の災厄が再び眠りから覚めるのではないかという内容だった。
 当時から生きているエルフ族の年長者などであれば実際に見たという者もいるかもしれないが、残念ながらシノにはそういった知り合いがいない。

「あくまで噂の範疇を出ないのだけれどね。でももしそんなのが現れるようなことになれば、私はもちろん戦うつもりでいるわ」

 静かな口調でそう語るステラには覚悟のようなものが宿っているように思えた。同じペリアエルフでも、ずっと村の中で暮らしていた自分とは構え方が違う。

「もし再び現れたら、今度こそ討伐しないといけませんね。その時は私も力になりますよ!」

「ええそうね、頼りにしてるわ。精霊のお二人も、ね」

「は、はい! 私に出来ることなら……」

「イフリート様の名において、災厄なんて出てきても成敗してやるわよっ!」

 そう答えた二人はいつもよりちょっと頼もしげだ。一番良いのはただの噂で終わってしまうことではあるけれども、情報としては知っておくだけ損はないだろう。
 自身がこの世界の設定として考えた存在がそこまでの脅威になってしまっていることに若干の責任こそ感じてしまってはいるが、こればかりはどうしようもない。とりあえず、鋼の災厄についての話は一旦置いておくとしよう。

「そういえば、あなた達は今回どうして王都に? 単純に観光というわけでもなさそうだけれど」

「王都周辺に気になる場所があって、その探索にきたんですよ」

「探索、ね……この地方にはそれこそ気になりそうな場所はたくさんあるけれど、何か心当たりがあるのかしら?」

「精霊の祭壇というらしいですけど、どういう場所かは行ってみないと何も……」

「……かなり昔に名前だけは聞いたことがあるわね。恐らく、調査もろくにされていないと思うわ」

 主目的である祭壇調査の話をしてみるも、各地を旅し続けているステラでさえ行ったことはないらしい。
 遺跡なのだから数百年は経っているだろうし、それでも情報が無いということは歴史的価値がないと見なされているのか、調査は行われたが何も得られていないかのどちらかだろう。
 一応自分がこの世界の設定として作り出したものなのだし、場所自体に何かしらの意味があると思いたいのだが。

「まぁ、そういう場所に行ってこその冒険者だものね。案外あっちも、シノさん達が来るのを待っているかもしれないわよ」

「待っているのは手強い魔物達かもしれませんけどねー……」

「そのために私達がいるんですよ。援護は任せてください!」

「そうよ。私に勝っておきながら、何今更腰が引けたようなこと言ってんのよ」

 村周辺の地方とは違って王都方面はレベルが違う魔物が結構いたりするので少し心配になったシノだったが、二人はそうでもない様子だ。リエルはもとより修行目的でもあるし、セリアに関しては能力ゆえに魔物相手の苦戦などしない気はする。

「ふふ、その様子だと心配は無さそうね。朗報があることを願ってるわ」

 ステラはそう言って、頼もしい二人の同行者に対して小さく笑みを浮かべた。彼女はまた別の用事があるようで、別れを告げた後に席を離れる。
 シノ達の主目的とは違っていたがかなり重要といえる情報を聞くことが出来たので結果としては上々かもしれない。結構長く居座ってしまったので、三人も冒険者ギルドを後にすることにした。
 建物の外に出てみるとまだそれなりに陽は高く、王都の外へ出ていくこともできるのだが、

「あまり忙しないのもなんだか嫌だし、今日ぐらいはゆっくり王都観光といこうか!」

 シノにとっては久しぶりとなる王都のため少しぐらいは見て回りたい。道中の様子を見ても明らかなように、リエルはもっとその思いが強いはずだ。魔物と違って祭壇は逃げたりしないのだし、のんびりするのも大事だろう。

「はい! 王宮なども是非見てみたいです!」

「そもそも村の休みで出かけてきてるんだし、観光とかしないほうがおかしな話ってものよ」

 二人も王都観光に乗り気なようで、これは夜まで連れまわしたり連れまわされたりしそうだ。それはそれで楽しいのでよしとしよう。
 冒険者ギルドを出た一同はすぐさま鉄道へと乗り込むと、まずは手始めに王宮のある北地区へと向かっていくのであった。
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